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財団法人日本ユニセフ協会




レバノン南部:紛争で心に傷を負った子どもたちの精神的サポート

 【2007年2月13日、レバノン南部、アル・カイム発】

© UNICEF
Lebanon/2007/Debbas

レバノン南部、ビントジュベイルに初めてできたユースセンターで卓球をして遊ぶ男の子

レバノン南部の活気があり、整然とした町アル・カイムの瓦礫の中で、午後の日差しを浴びながら子どもたちが笑って遊んでいます。子どもたちはここ数ヶ月で経験した苦しみを忘れてしまったかのようです。

「夏に戦争が起こった時、私の家族は、最初はここにとどまった方がよいと考えました。」15歳のメヤトは言います。「でも、戦争がどんどん悪化していって、私たちも国境にとても近いところに住んでいたので、お父さんは何もかも残して北のジュベイルまで行くことを決めました。」

メヤトは、6ヶ月前に終わったイスラエルとヒズボラの戦争で避難民となった推定50万人のうちの一人です。避難を余儀なくされた多くの若者は、何十年もの間紛争の影響を受けている土地で育ち、普通の子どもたちが過ごすような子ども時代をほとんど体験していません。

一番最近に起こった戦争は終わったものの、困難は今も続いています。2006年8月の停戦後、メヤトの家族など数千人のレバノン人が故郷に戻りましたが、彼らの家は破壊されていました。

長年苦しんできた子どもたち

©UNICEF Lebanon/2007/Debbas

ユニセフが支援するビントジュベイルのユースセンターでは、12〜18歳の子どもたちがゲームをしたり、インターネットを使ったり、音楽を聴くことができます。

「子どもたちはもう大丈夫かのように見えます。」3人の子を持つ父親で、アル・カイムに住むモハメド・ダウィは言います。「でも、心の奥では、苦しんでいるのです。とても若いのに、平静で、親と同じようにテレビに見入ってニュースを見ています。子どもたちにとって、何も事件がなく一日が過ぎるのは驚きです。」

「治安が悪いだけでなく、レバノン南部には、貧困が根ざし、楽しみのための安全な場所がないため、子どもたちが子どもらしく幼少期を過ごすことがとても難しいのです。」

「子どもたちはもっともっと子どもらしく生きていいはずです。私が若い頃と同じような状況で若い世代が成長しなければいけないのはとても悲しいです。子どもたちのためにも、もっと状況が良くなればいいのにと願っています。」

大きな課題に直面しながらも、ユニセフはパートナーと共に、子どもや若者が精神的な困難を乗り越えるための支援を続けています。まずは日常を取り戻すことが不可欠です。戦争が終わってまだ2ヵ月後の2006年10月に全ての子どもたちが学校に戻ることができるようにするため、ユニセフは重要な役割を果たしました。

ユニセフは、NGOとも緊密に協力しながら、子どもたちに安全な遊び場を提供するための活動を行っています。ユニセフは、子どもたちのための様々な創造的な活動や遊びを指導することができる600人のコーディネーターの研修を支援しました。

初めてのユースセンター

©UNICEF Lebanon/2007/Debbas

ビントジュベイルにできた新しいユースセンターに最初に訪れた12歳のゼイナブ

最近、ユニセフは「フープスクラブ」という若者向けのレクリエーションプログラムとパートナーを組み、レバノン南部の子どもたちに、バスケットボールやフットボール、ハンドボールなどのスポーツをする機会を提供しています。ここ2ヶ月だけで、約1万人の子どもたちとその母親がティールにあるフープスクラブの施設を訪れました。

紛争でもっとも大きな被害を受けた地域の一つであるビントジュベイルには、少し前に、初めてのユースセンターができました。ユニセフの支援を受けたこのセンターでは、12歳〜18歳までの若者がゲームで遊んだり、インターネットを使ったり、音楽を聴いたりすることができます。

センターで楽しい時間を過ごすだけでなく、子どもたちはここで友達を作り、不安や怒りなどの感情を話すことができます。 12歳のゼイナブはビントジュベイルのユースセンターに訪れた最初の子どもで、そのことは掲示板に彼女の写真とともに掲載されました。戦争で彼女は家族とともに避難生活を送り、家も破壊されました。ゼイナブは、気持ちを安らげるためにできるだけこのセンターに来ようと思っています。

「ここでは、自分のことを表現して、自由な時間をすごすことができるんです。」