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公益財団法人日本ユニセフ協会
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シリア緊急募金 第165報
ヨルダン
家族のために働くシリア難民の子どもたち
教育が唯一の希望

【2015年7月15日ザータリ(ヨルダン)発】

ヨルダンで暮らすシリア難民の子どもたちが自由に立ち寄り、支援を受けることができる「ドロップ・イン・センター」では、勉強よりも働くことを選択せざるを得なかった子どもたちや教育の機会を失った子どもたちのため、教育や心理社会的支援を実施しています。

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家族のために働く子どもたち

シリアから2年前に避難してきたアハメドくん(13歳)。働いて家族を支えている。
© UNICEF Jordan/2015/Kubwalo
シリアから2年前に避難してきたアハメドくん(13歳)。働いて家族を支えている。

明るい黄色のユニフォームを着たアハメドくんが、ザータリ難民キャンプのドロップ・イン・センターの外にあるサッカー場で、私たちを満面の笑みで出迎えてくれました。アハメドくんがゴールを決め、チームメンバーが歓喜に沸いています。

13歳のアハメドくんはここ3年間、公式の学校に通えていません。シリアのダラにある自宅で暮らしていた頃、学校を中退せざるを得ませんでした。紛争が起こり、家の外に出るのがあまりにも危険だったからです。2年前、アハメドくんはザータリ難民キャンプに避難してきました。しかしこの地でも、「もう一度学校に通いたい」という願いは叶わないのだと、身に染みて感じるのです。

「家族を支えるため、兄と僕はたばこを売る仕事に就きました。僕たちに選択の余地はありませんでした」と、アハメドくんが話します。

アハメドくんの父親はシリアで生活を続けており、アハメドくんとお兄さんのふたりが、年老いた母親とふたりの妹の生活を支えるという責任を負っているのです。ふたりは1日12時間ほど働いています。

最近アハメドくんは午後の仕事を6時間に抑え、難民キャンプにあるドロップ・イン・センターで時間を過ごすようになりました。アハメドくんはビジネスの勉強のために時間を使いたいと考えているのです。まだどのような商売をするかは決めていないと話す一方、お金を稼ぐために役に立ち、実用的なことを学ぶことが大切だと感じています。

ユニセフはパートナー団体と協力し、ザータリ難民キャンプにある3カ所のドロップ・イン・センターを支援しています。このセンターでは、読み書きや計算、ビジネスなどを学んだり、遊んだりして楽しい時間を過ごすことができます。毎日約80人の子どもたちがこのセンターに足を運んでおり、その多くが働いている子どもたちです。

「ここにいると、幸せです。楽しい時間を過ごすことができますし、学ぶことがたくさんありますから。今習っている算数は、仕事でも役に立っています」と、アハメドくんが話します。

人生に希望をもたらす教育

ザータリ難民キャンプの中にあるドロップ・イン・センターで算数の問題を解くアハメドくん。
© UNICEF Jordan/2015/Kubwalo
ザータリ難民キャンプの中にあるドロップ・イン・センターで算数の問題を解くアハメドくん。

ユニセフは弱い立場に置かれているヨルダンの難民キャンプやホストコミュニティで暮らす子どもたちが学ぶ機会を失うことがないよう、特に力を入れて支援を行っています。このセンターでは、子どもたちの心を癒し、子どもたちや家族がよりよい人生を築いていくために必要不可欠なスキルや教育を提供することを目指し、支援が行われています。

アブ・フセインさん(45歳)は、妻と3人の子どもたちと一緒に、ヨルダンの首都、アンマンの郊外で暮らしています。「仕事がなく、ここでの生活は大変です。あらゆる所からお金を借りなくてはいけません」とアブさんが話します。

「でも、子どもたちが今も生きているというだけで嬉しいです。今私たちが望むのは、子どもたちが学校に再び通えるようになることだけです。将来よりよい生活を送るために、子どもたちの能力を伸ばし、希望を与え、シリアの再建を手助けすることができるのは、教育だけです」(アブさん)

欧州委員会の支援を受け、ユニセフとヨルダン教育省は、難民キャンプで5つの学校を運営しています。また、難民を受け入れているホストコミュニティの98の公立学校では二部制の授業を実施しています。それでもなお、ヨルダンで暮らす9万人以上の子どもたちが、教育を受けられずにいます。

最も弱い立場の子どもたちに支援を

食べ物を手に入れることにも苦労しているシリア難民にとって、子どもたちを学校に通わせることは、優先順位がとても低いものです。法律上は働くことを禁じられているシリア難民たちは、貯金も底をつき、子どもを退学させたり、学校に登録させないなど、苦渋の選択を強いられています。その結果、児童労働や児童婚も増加しています。

ユニセフやパートナー団体が実施した調査によると、ザータリ難民キャンプで暮らす7歳〜17歳のシリア難民の子どもの約13%が、何らかの児童労働に関わっています。また、2014年のユニセフによる児童婚の調査では、ヨルダンで暮らすシリア人の、届け出のあった婚姻のうち、3分の1に子どもたちが関わっていることが明らかになりました。

「ユニセフは『マカニ・アプローチ』といった革新的な手法を用いて、9万人の子どもたちが学校や代替的な学びの場にできる限り早く戻ることができるよう、力を入れています。子どもたちは教育の機会を得てからこそ、自身の持つ最大限の力を生かし、国や地域の平和や繁栄に積極的な役割を担うことができるのです」と、ユニセフ・ヨルダン事務所代表のロバート・ジェンキンスが語ります。

ユニセフがパートナーの市民団体と協力して行っているこのマカニ・アプローチは、代替的な教育や心理社会的支援、技術訓練などの人生に役に立つスキルを、すべて1カ所で受けることができるようにする支援です。この支援は、カナダや欧州連合、ドイツ、韓国、オランダ、英国による資金提供で行われており、最も脆弱な立場にある子どもたちのため、200以上の既存のコミュニティ・センターやヨルダン中のアウトリーチ活動のネットワークを利用して支援が実施されています。

*名前は仮名です。

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