パキスタン北西部…人を寄せ付けない厳しい山岳地帯。ヒマラヤ連峰の一角を成す山々がそびえ立ち、地震被災の支援に向かう人々の前に立ちはだかっています。この山岳地帯の何千もの村に住む被災者たち。彼らのもとには、未だ支援が届けられず、地震でケガをした子どもたちも治療を受けられずにいます。支援の妨げとなっている数々の障害を早急に取り除かなければ、1万人以上の子どもたちの命が失われる可能性があります。
10月8日の地震発生以来、少なくとも5万人の命が奪われ、300万人が家を失いました。コペンハーゲンやドバイ、あるいは近隣諸国にあるユニセフの倉庫から、たくさんの支援物資がパキスタンへと輸送されています。しかし、ユニセフと協働で活動をしてくれるパートナーが現地にいなかったり、道路の寸断、険しい山道、悪天候などの悪条件が重なったりして、ヒマラヤ近くの山々に分け入ることはなかなかできません。
数週間後には、激しい雪をもたらす厳しい季節がやってきます。ユニセフや、そのほかの支援機関は、寒さと余震の中で苦しむ何百万もの生存者に支援の手を伸べるべく、時間との闘いの中、努力を続けています。家を失った人たちがあまりに多く、また、被災地へのアクセスが難しいために、シェルター(防水シートやテント)を被災者に届けるのは並大抵のことではありません。
支援物資は以前より早く届くようになってきてはいるものの、より敏速な支援を実現させるには、資金不足の壁が立ちはだかっています。現在のところユニセフには、世界に要請した資金援助額の5分の2しか集まっていないのです。
パキスタン軍の協力で支援に拍車
それでも、パキスタン軍のトラックとヘリコプターの大量投入によって、支援物資は徐々に被災者のもとに届きつつあります。ヘリコプターを使えば、ヒマラヤのふもとにある小さな村にも支援物資を送ることができます。支援物資には、高カロリー・ビスケット、石鹸、毛布、テント、水を汲むための容器などが含まれています。これらの支援物資のおかげで、子どもたちは命をとりとめることができるのです。
マンセラにいるユニセフの緊急支援担当官のルーク・ショバーンはこう言います。「現地への支援規模を拡大しています。より多くの場所により多くのスタッフを、そしてより多くの支援物資を届けようとしているのです。これにより、成果は大分出ていると思います。それでも、ニーズはまだまだ満たしておりません。もっとがんばらなければなりません」
しかし、支援を必要としている人たちに物資を届けるだけがユニセフの使命ではありません。ケガ人を治療しなければなりませんし、ユニセフの支援活動に協力してもらう現場のパートナーも探さねばなりません。疫病を防ぐために水や衛生の問題にも対処しなければなりませんし、危機に陥ったパキスタン政府の保健制度そのものを支援する必要もあります。また、この地震によって1万校以上の学校が崩壊したと考えられており、子どもの保護や教育にも対処しなければならないのです。
時間との闘い
ユニセフは、パキスタンの緊急支援用の倉庫に備蓄してあった毛布、高カロリー・ビスケット、医薬品、シェルター用機材などの支援物資を送り出しました。また、疫病を防ぐための「水と衛生」のキットも送り出し、400万人の子どもたちに、はしか、破傷風、ポリオの予防接種ができるよう、パキスタン政府の予防接種チームのサポートをしています。そのほかの物資も順次、海外から到着しています。ムザファラバードの浄水場は、すでに修理を終え、キャンプでは簡易トイレも設置されています。
いまや支援は、時間との闘いになっています。初降雪がまもなくやってきます。期限は数週間後…。あたり一面を雪が覆い始めると、支援物資を運ぶ道路は通行不可能となってしまうのです。