パキスタン地震 第19報
冬を生き延びるための”新緊急保健キット”
【2005年12月2日 ムザファラバード発】
何千人もの地震被災者がテント暮らしを余儀なくされているパキスタン北部では、厳しい冬が始まっています。ユニセフは、緊急用保健資材の提供などを通じて、凍えるような寒さや病気という脅威と闘う保健・医療関係者を支援しています。
“新緊急保健キット”には、1万人に3カ月間保健サービスを提供するのに必要なあらゆる医薬品や医療資機材が含まれています。これまでのところ60パックがパキスタン実行支配下カシミールで配布されました。ユニセフの保健部門プロジェクト・オフィサーのタムール・ムエネディン氏は、「この緊急キットによって、目前に迫った冬がもたらす健康への被害から60万人−その半数は子ども−の人を守るのに必要な十分な医薬品や医療資材を手に入れることができました」と話します。
このキットは、今回のような大地震後の緊急事態の中で人々の生命線となる支援物資です。パキスタン地震の被災地では、保健施設のほとんどすべてが倒壊しました。特に今の時期は雨が多く、まもなく雪が降り積もります。きちんとした保健ケアをすぐ近くで受けられるということが、人々の命を救うのです。
基礎保健ユニットで、一日100〜150人の被災者をケア
ムザファラバードに設置された避難民キャンプのひとつスリパークキャンプには、”基礎保健ユニット(BHU)”と呼ばれる施設が設置されています。切り立った渓谷の障壁を背景に、ジェラム川の河川敷に広がるスリパークキャンプには、285家族−約1500人が暮らしています。ユニセフが支援するBHUでは、16人のスタッフが日に100人から150人の被災者のケアにあたっています。
ここでもっとも多い病気は、急性の呼吸器系疾患、胃腸炎、そして皮膚病です。保健員のシード・ザキル氏は言います。「ここで我々が直面しているような大災害では、全ての需要に応えることは難しいですが、このユニセフのキットの中にある抗生物質や咳止めシロップなどには大変助けられています。キャンプで暮らす人々の健康状態は、改善しつつあります」
しかし、冬の厳しい環境が、特に感染症にかかりやすい幼い子どもたちに健康悪化をもたらすことが懸念されています。すでに肺炎の症例が増えているとの報告もあります。スリパークキャンプでは、15歳未満の子どもすべて(合計760人)がビタミンAの補給とはしかの予防接種を受けました。どちらも、子どもたちが病気と闘う上で必要不可欠です。
妊産婦の栄養不良と貧血
BHUの女性の保健員は、キャンプにいる27人の妊婦のケアを担っています。この地域は、地震以前からパキスタンの中でもっとも妊産婦の健康・栄養状態が悪く、死亡率が高い地域なのです。
ナジマは20歳、いま第1子を身ごもっていますが貧血症と診断されています。キャンプに住んでいる妊娠中の女性はほとんどが貧血症で、栄養も足りていません。ナジマは、手にしている茶色のボトルを見つめながら言いました。「私は山間の辺鄙なところに住んでいたので、これまで健康診断なんて受けたことがありませんでした。最初に保健員さんが私のテントに来た時も支援物資を求めて忙しくしていて会うことができませんでした。でも近所の人がここに来るように言ってくれたので今日来てみました。それで、ビタミン剤をもらうことができました。」
避難民キャンプだけでなく被災した町や村々に残っている人々にも届けるために、さらに緊急保健キット80セットがオーダーされています。破壊された保健システムが再建されていく中で、被災現場では緊急保健キットの役割はまだ重要です。
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