津波からかろうじて生き延びた後、ソンクロッドはバティックの絵を描くことに慰めを見出しました。バティック絵画とは芸術療法の一種で、彼は布のキャンバスに鮮やかな色を散らすとき、悪夢のような思い出が消え去っていくように感じるのです。
「津波の後、僕は家を無くしてしまったことと、両親が仕事を失ってしまったのを見ることで、気持ちがふさいでいました。」と14歳の恥ずかしがりやの少年ソンクロッドは言います。「バティックの絵に、僕は励まされて、落ち着くことができて、集中力が上がったんです。」
ユニセフとタイ教育省の非公式教育部は、ピピ島の70世帯が住んでいるノンコック仮設住宅の子どもたちの心をケアするために、バティック絵画を導入しました。
バティックセンターはコミュニティの小さなビジネスに成長し、子どもたちが収入を得て両親を経済的に助けることにつながりました。センターで作成された絵は、100〜1,000バーツ(約290〜2,900円)の値段で売られています。
ソンクロッドは天性の才能を持ち、センターの最も有望な画家の一人として活躍しています。彼は、お父さんが新たな仕事を探している間、自分がお金を稼いで家族の手助けが出来ることを喜んでいます。そのお金で彼は学校にも行くことが出来るようになりました。津波の前にはそんな余裕はありませんでした。
「友だちがいる学校に戻って、美術の時間に絵の描き方を学べるのは最高だよ。僕の美術の先生は僕の絵が上達するように、いつもヒントや新しいテクニックをおしえてくれるんだ。」と彼は言います。
将来について聞かれると、いつも穏やかなソンクロッドが熱心に説明してくれました。「バティック絵画を続けたいんだ。絵を描くのは本当に楽しいから。それでいつか、クラビにバティックの店を開くんだ。」
今のところ、ソンクロッドは学校へ通うこととバティックの絵を描くことを楽しんでいます。津波の後、彼の人生に舞い降りた二つのチャンスを。
被災地からの声
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