《バクダッド/ジュネーブ 2003年3月11日》
イラクを巡る戦争の脅威が高まる中、ユニセフはイラク全土の40万人の栄養不良の子どもが紛争のさなかにあっても生存できるチャンスを拡大するため、特別な健康補助食品を提供しています。
イラク保健省と緊密に連携しながら、ユニセフはイラク国内に1000メートルトン以上の高たんぱくビスケットを運び入れました。これは、起こりうる紛争に向けて、イラクの子どもたちの命を守る栄養とワクチンを届けるユニセフのキャンペーンの一環で、ビスケットは、政府により全国の保健センターへ届けられつつあります。
「私たちはまだこの危機に対して平和的な解決が図られることを望んでいます」キャロル・ベラミー ユニセフ事務局長はこのように話します。「しかし、イラクの子どもたちが非常に危険にさらされていることも事実です。彼らの健康、栄養、安全な水へのアクセスなどは現在でさえ非常に脆弱であり、もし戦争が始まればさらに危うい状況となるでしょう。今のうちにこのような支援活動を行うことにより、これから数週間、数ヶ月の間、子どもたちの命を救うことができるようにと願っているのです」
ユニセフは、5歳未満児の命を奪う主要原因である深刻な栄養不良から子どもたちを守るために、すでに155トンの栄養強化ミルクを届けました。ミルクは、イラク保健省の運営する全国63ヶ所の栄養改善センターに届けられつつあります。深刻な栄養不良状態にある子どもたち1万人以上が、これらのミルクによってすぐに恩恵を受けることができるでしょう。
ユニセフは、2年ぶりにイラク国内に高たんぱくビスケットと栄養強化ミルクを運び入れました。これらは、1ヶ月間支援を続けるに十分な量です。ユニセフはまた、イラクに隣接する国の倉庫に栄養関連の支援物資をすでに運び込み、栄養不良が深刻化した際には、即座に対応することができるようにしています。
イラクは世界でも5歳未満児死亡率の高い国のひとつです。8人にひとりは、5歳の誕生日を迎える前に命を失っています。近年、その割合は改善されつつありますが、栄養不良の割合は依然高く、4人にひとりの5歳未満児、合計でおよそ100万人以上、を脅かしています。
また、イラクの人口2450万人の半分は子どもたちです。
1991年の教訓
ユニセフは、イラクの栄養不良児の割合が1991年の湾岸戦争以来、劇的に増加していると指摘してきました。これには、インフラ施設の破壊や、使える資材などが乏しいこと、経済制裁が続き、多くの家庭の購買力が下がりタンバク質の摂取量(食肉)が減ったこと、などの理由があげられます。そして、これは、イラクの女性の60%が貧血症に陥っている原因でもあり、そのことが低体重児出生にもつながっています。
「現在、イラクの4分の1の出生児は低体重です。そして同程度の割合の5歳未満児が栄養不良です」と、ユニセフ・イラク代表のカレル・ドゥ・ルーイは話します。「大変深刻な事態です。戦争は、人びとを避難民や難民とし、食糧や水の供給を妨げ、病気の発生を招きます。こうしたことが重なって、すでに生存の危機にさらされている子どもたちには大きな打撃となるのです」
1991年以来、ユニセフは保健省を支援して、小児病院に栄養改善センターを設立してきました。それらの機関では、研修や特別な栄養補助物資などが提供されています。こうした努力は、2800ヶ所のコミュニティ子どもケアユニットの開発へと広がり、子どもたちの栄養不良の兆候を早く見つけ、特別のケアが受けられるようにしてきました。学校を基盤にしたこれらのユニットによって、5歳未満児のおよそ70%に支援が届くようになりました。
栄養不良児は、飢えのために命を失うということは多くありません。「このような状況下で子どもたちが弱った時には、悪い水によって引き起こされる下痢が子どもの命を奪います」とドゥ・ルーイ代表は警告します。「何万人もの子どもたちが、保健や栄養状態がさらに悪化する極度の危険にさらされているのです」
「いったん起これば、戦争はもっとも子どもたちを傷つけます」とベラミー事務局長は言います。「子どもたちは、身体的にも精神的にも、もっとも危険にさらされているのです。私たちが戦争について何を考えようとも、このことだけは認識しなければなりません。それは、アフガニスタンやスーダン、コロンビアなど、武力紛争が起こっている何十カ国ものほかの国々で言われるのとなんら変わらぬ真実です。真の課題は、戦時にあって子どもたちを守るために私たちが何をするか、ということです」
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