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日本ユニセフ協会からのお知らせ

「世界のポリオ根絶と子どもの権利」
ユニセフ事務局長首席アドバイザーによる報告
予防可能なポリオ、最大の壁はアクセス

© 日本ユニセフ協会/2014

ポリオの発症件数は1988年以降99%以上減少しており、根絶まであと一歩のところまできています。しかし、今年はじめにシリアやイラクなどで感染が広まったことをうけ、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」との宣言をWHO(世界保健機関)が発表するなど、国際的な感染拡大への懸念も高まっています。

こうした中、2014年6月4日、ユニセフ本部のピーター・クローリー事務局長首席アドバイザー(ポリオ担当)が来日し、外務省、国際協力機構、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、駐日ナイジェリア大使館の方々と共に、ポリオ根絶に向けた活動や今後の課題について報告しました。

ポリオ常在国は3カ国に

ポリオワクチンの投与を受ける女の子(アフガニスタン)
© UNICEF/AFGA2012-00004/Aziz Froutan
予防接種キャンペーンでポリオワクチンの投与を受ける女の子(アフガニスタン)

長年にわたる国際レベルでの取り組みの結果、世界はポリオ発症数の大幅な減少に成功しています。1988年に125カ国、約35万件報告されていた症例も、2013年には416件にまで減少し、常在国に数えられているのはアフガニスタン、ナイジェリア、パキスタンの3カ国のみとなりました。常在国でもポリオの感染が報告される地域は確実に狭まっており、根絶への道を着実に進んでいると、クローリー首席アドバイザーが語ります。

しかし、昨年シリアで確認されたポリオウイルスはパキスタンから持ち込まれた可能性が極めて高いことを例に挙げ、「ポリオがこの3カ国で残る限り、世界の他の国の子どもたちにとっても感染の危険が続くことになる」と、クローリー首席アドバイザーは強調し、更なる支援の強化を訴えます。また、現在ポリオが根絶しているものの高いリスクに晒されている国々は、特に保健システムが脆弱で定期予防接種が十分ではありません。再発を防ぐためにも、これらの国の保健システムを強化するための継続した支援の必要性があると訴えました。

ユニセフ、予防接種と啓発活動を実施

ユニセフ本部のピーター・クローリー事務局長首席アドバイザー(ポリオ担当)
© 日本ユニセフ協会/2014
ユニセフ本部のピーター・クローリー事務局長首席アドバイザー(ポリオ担当)

ポリオは発症すると手足に麻痺が生じる危険性があり、感染者の多くは貧しく、不衛生な環境で生活を送る幼い子どもたちです。治療方法は確立されていないものの、ワクチンの投与で予防が可能な病気です。そのため、ユニセフは世界中のあらゆる地域に住む子どもたちに一人残らず予防接種をすべく、支援を行っています。2013年、ユニセフは常在国であるアフガニスタン、ナイジェリア、パキスタンでポリオ根絶プログラムを実施し、シリアでは220万人もの子どもたちに予防接種を行いました。

また、効果的にそして確実に予防接種を実施するため、啓発活動にも力を入れています。ポリオや予防接種の重要性について認識を高め、ポリオワクチンに対して抵抗感のある住民に対して長年の活動で築き上げたネットワークや地域で影響力のある宗教リーダーなどの協力を得ながら啓発活動を続けています。

情報収集と信頼を築き乗り越える、根絶への最大の壁

しかし、ポリオの根絶に向けた活動には課題も残ります。支援活動の最大の壁は「アクセス」だと、クローリー首席アドバイザーが語ります。紛争や情勢不安から、子どもたちに支援を届けることができない地域が依然として残っているのです。例えば2013年にソマリアやシリアでは、紛争によって定期予防接種を受けることができなかった子どもたちがポリオに感染しています。

しかし、この課題は乗り越えられない壁ではなく、ユニセフはパートナー団体と協力し、これまでも情勢が不安定な場所でも予防接種を行い、成功を収めているとクローリー首席アドバイザーが続けます。クローリー首席アドバイザーによると、その地域の現状や壁となっている特定の問題などの情報を集めて緻密な計画を策定すると共に、「信頼」が重要です。ワクチンに対する信頼、ワクチンを届ける人、プログラム、そしてその地域の子どもたちのために行っている活動だという信頼を築きあげることが欠かせないと語ります。

世界中が団結すれば、大きなことも成し遂げられる

予防接種を受けたしるしを指につける、ボランティアスタッフ(パキスタン)
© UNICEF/NYHQ2011-2585/Asad Zaidi
ポリオの予防接種を受けたしるしを指につける、戸別訪問を行うボランティアスタッフ(パキスタン)

約30年前、ユニセフは各国政府や世界の保健分野のリーダーとともに、ポリオ撲滅を目指す民間パートナーシップ「世界ポリオ根絶計画」を立ち上げ、2018年までにポリオのない世界を実現するため、活動を進めてきました。2018年までにポリオの根絶は可能なのかという質問に対し、クローリー首席アドバイザーは「根絶は可能だ」とかつて多くのポリオの感染が報告されていたにも関わらず、根絶を達成したインドを例に出して力強く述べました。

「当時専門家にインドのポリオの根絶は可能かと尋ねたら、多くはその人口や課題の多さから、『不可能だ』と答えていました。しかし今年のはじめ、インドはポリオの根絶を達成しました」と語るクローリー首席アドバイザーは、重要なのは、政府や国連機関、パートナー団体が強い意志を持ち、取り組みに力を注ぎ続けることだと訴えました。

ポリオは予防可能な病であり、予防接種でポリオで苦しむ子どもたちを減らすことができます。ユニセフは今後も国際社会と協力し、ポリオ根絶に向けて支援を続けていきます。

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