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公益財団法人日本ユニセフ協会
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エボラ出血熱緊急募金 第62報
シエラレオネ:
エボラ回復者たちの受け入れ
コミュニティの認識や行動に変化

【2015年2月23日 フリータウン(シエラレオネ)発】

赤い服を着たグレースちゃん(2歳)を抱くエアブさん(18歳)と家族。
© UNICEF Sierra Leone/2015/Davies
赤い服を着たグレースちゃん(2歳)を抱くエアブさん(18歳)と家族。

18歳のエアブ・カロコウさんが喜びに満ちた笑顔で娘のグレースさんを抱き、優しくなでています。まだ若い母親のエアブさんと2歳のグレースちゃんはともにエボラ出血熱に感染し、生死の境をさまよいながらも、回復を遂げる幸運に恵まれました。

ふたりは回復者同士がそれぞれの経験を分かち合い、偏見や差別に関して話し合う、ボンバリ地区のグループの一員となりました。このグループには400人以上の回復者たちが参加しており、ボンバリ地区のマケニでは、ユニセフの支援を受け、社会福祉・ジェンダー・子ども課が回復者会議を開催しました。エアブさんにとっては他の回復者たちと会い、回復後の生活再建の力を得る、よい機会となりました。

生活の再建

シエラレオネではエボラで3,000人以上が命を失った一方、回復者も3,000人近くに上っています。エボラの回復者たちは、エボラ・ウイルスとの闘いの後、コミュニティに戻って生活を再建するにあたり、差別や偏見といったさらなる困難に直面します。

幸いなことに、エアブさんとグレースちゃんは退院後も差別に遭うことなく、親せきだけでなく、マケニ近郊にある小さなコミュニティ皆に、暖かく迎え入れられました。

「エアブがグレースと一緒に帰ってきた姿を見て、とても驚きました。コミュニティ全員がお祝いの歌とダンスで迎え入れました」と、エアブさんの父親のアリマミー・カロコウさんが大喜びで話しました。

48人が暮らす集合住宅には、午後に放送されるエボラに関するメッセージを住民全員が聞くことができるようにラジオが設置されている、とアリマミーさんが話します。

「毎日くり返し流れるラジオや啓発活動で家々を訪れるスタッフから、回復者はコミュニティに危害を与える存在ではないこと、そして暖かく迎え入れる必要があることを教わりました」(アリマミーさん)

認識や行動の変化

ユニセフは政府と共にシエラレオネのエボラ対応の一環である社会啓発活動を率いています。ラジオは、コミュニティに啓発メッセージを届ける最も効果的な手段のひとつです。メッセージは62のラジオ局で放送されており、戸別訪問で更に住民の認識の強化を図ります。

「エボラの感染拡大が始まったころは特に、回復者はコミュニティから拒絶されていました。しかし、回復者をコミュニティに受け入れるように促す啓発活動を続けたことで、今ではそのようなことは滅多に起こらなくなりました。特に農村部では、一戸一戸訪問し、回復者に理解や思いやりを示す重要性を伝えています」とボランティアで啓発活動を行うイブラヒム・ビビさんが語ります。

ユニセフの支援で昨年12月に実施された、1,000人を対象とした第三機関によるKAP調査(知識・態度・行動に関する調査)では、回復者に対する偏見や差別的な態度が急減していることが明らかになっています。2014年7月に実施された第1回目の調査では、75%が回復者をコミュニティに歓迎しないと答えていましたが、12月ではその数値はわずか8%にまで減少しました。

住民による受け入れ

コミュニティのエボラに関する知識の高まりと回復者への前向きな姿勢は、エボラの感染拡大阻止にも大きな効果をもたらしています。

アリマミーさんや隣人は、エアブさんとグレースちゃんの高熱や嘔吐に気が付き、エボラの緊急ホットライン117に電話をかけました。以前は、家族やコミュニティがエボラの症状を周りに隠そうとしたことが、感染拡大の一因となっていました。

「集合住宅で暮らす48人のうち、感染したのは妻と娘、孫のたった3人です。残念ながら妻は亡くなってしまいました。しかし、ラジオや啓発活動のメッセージに従った結果、ほかに感染した人はいませんでした」(アリマミーさん)

エボラ・ウイルスに感染していないかを確かめるため、集合住宅の全員が21日間の経過観察を行いました。

「エボラの感染者をこの地域でこれ以上出さないという自信はあるものの、依然として不安もあります」(アリマミーさん)

「家族やコミュニティが迎え入れてくれて、とても嬉しいです」と、洗濯物を洗いに家族と向かうエアブさんが、自宅に戻ることのできた喜びを語りました。

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