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公益財団法人日本ユニセフ協会
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エボラ出血熱緊急募金 第76報
ギニア
保健施設がない村へ移動診療
エボラ感染を早期発見するために

【2015年6月12日 フォレカリア(ギニア)発】

ギニアでは、人里離れた地域で暮らす人々に基本的な保健ケアを提供するための緊急保健キャンペーンが行われています。このキャンペーンを通して、医師たちは隠れたエボラの症例を発見することができるだけでなく、外部の人たちへの警戒心が強いコミュニティとよりよい絆を構築することができています。

* * *

緊急保健キャンペーン

モウサファンガミャー村で仮設の診療所を設置するニャンバラモウ医師(左)とソウ医師(右)。
© UNICEF Guinea/2015/Gutcher
モウサファンガミャー村で仮設の診療所を設置するニャンバラモウ医師(左)とソウ医師(右)。

ギニアのフォレカリアで行われている2度目の緊急保健キャンペーンも21日目を迎えました。朝8時、国内のエボラ出血熱への対応の調整を担うイシドール・トクパ・ニャンバラモウ医師が、治療ケアに必要不可欠な医療物資をたくさん積んだトラックに乗り込み、フォレカリアでも最も人里離れた村のひとつである、モウサファンガミャー村へと出発しました。

これまでの3週間、ニャンバラモウ医師は11の移動保健チームと共に活動し、保健施設がない村で生活する人々のために、ユニセフの支援によって提供される無料の診察と治療を行ってきました。

支援を必要とするすべての住民に診断や治療を行うことで、まだ発見されていないエボラの症例の早期発見も期待されています。

「エボラの感染症状が見られる人がいないか、確認を行っています。もしかしたら、いくつかの感染症状を示す住民がいるかもしれません。そのような場合は、すぐに治療ケアを始めます」と、ニャンバラモウ医師が語ります。

エボラに感染している疑いのある患者を見つけた場合、ニャンバラモウ医師は住民にエボラについて説明し、治療の進め方を話し合います。感染の疑いがある患者は保健センターに搬送され、検査を受けます。検査の結果エボラに感染していることが判明した場合、治療ケアを行うため、エボラ治療センターに搬送されます。そして、患者と接触した人たちはエボラ・ウイルスの潜伏期間である21日間、追跡調査を受けることになります。検査の結果が陽性の場合は、そのまま自宅に戻ることができます。

「移動診察を始めた頃は、私たちのことを怖がる村がたくさんありました。住民は、医療を受けることで病気に感染すると信じていたのです。『病気の人がいないのに、なんでやって来たんだ?』と尋ねられました」(ニャンバラモウ医師)

感染流行地

「移動診察を始めた頃は、私たちのことを怖がる村がたくさんありました」と語るニャンバラモウ医師。
© UNICEF Guinea/2015/Gutcher
「移動診察を始めた頃は、私たちのことを怖がる村がたくさんありました」と語るニャンバラモウ医師。

モウサファンガミャー村はフォレカリアの中心地域からたった25キロしか離れていません。しかし、道路状態が悪く、4輪駆動車で1時間半ほどかかります。これまで、この村からエボラの症例は出ていません。しかし、5月末の週に確認された新たなエボラ患者の13人中7人がフォレカリア出身でした。そのため、現在フォレカリアはエボラの流行地域としてみなされ、周辺地域やこの村は、エボラの症状を示す人がいないか、注意深く見守られています。

村へ向かう途中、ニャンバラモウ医師がWHO(世界保健機関)の疫学者であるアマドウ・ラマラナ・ソウ医師と合流しました。移動診察を行う医師は、人里離れた村を訪れるときは特に、ペアを組んで活動を行っているのです。

村に到着して初めて訪れたのは、農業を営む60歳のランサナ・ソウモーさんの自宅でした。ランサナさんは2週間前にナタで足を深く切りつけてしまったといいます。

ニャンバラモウ医師とソウ医師は、この男性は少なくとも1カ月前には傷を負っていたのではないかと語ります。エボラ啓発キャンペーンの際にコミュニティ監視委員のメンバーがランサナさんと出会ったとき、ランサナさんの脚からは既に膿が出ており、敗血症になりかかっていました。コミュニティ監視委員はニャンバラモウ医師に連絡をし、事情を聞いたニャンバラモウ医師は、傷を負ったランサナさんが村からフォレカリアの病院に行くことは難しいと判断し、自宅でできる限りの治療を行うことを決意しました。麻酔なしでの治療は明らかに痛みが伴うものでしたが、ランサナさんは無事治療を終え、抗生物質と痛み止めを受け取りました。

「治療を行い、傷はだいぶよくなりました。もし支援がなければ、命を失っていたことでしょう」と、ニャンバラモウ医師が話しました。

ふたりは次のコミュニティへと移動せねばならず、治療後の経過観察にランサナさんの元に戻ることはおそらくできません。しかし、ランサナさんの姉のアミー・ソウモーさんは、弟が少なくとも治療ケアを受けられたことに深く安心していました。

「医療チームがここまで来て治療をしてくれて、本当にうれしいです」とアミーさんが語ります。

信頼を築く

フォレカリアや周辺地域では、エボラの症状を示す人がいないか、注意深く観察が行われている。
© UNICEF Guinea/2015/Snow
フォレカリアや周辺地域では、エボラの症状を示す人がいないか、注意深く観察が行われている。

ランサナさんの治療を終え、ふたりは仮設診療所の設置に取り掛かりました。この診療所では、体調不良を感じている人は誰でも立ち寄り、無料の診察を受けることができます。マラリアや腹痛、貧血など、よくみられる病気の治療を行えるよう、痛み止めや抗マラリア薬、抗生物質、虫下し剤、鉄分のサプリメントなども備えています。

「当初、最も大きな課題は住民たちの抵抗でした。人里離れた地域で暮らす人たちは、外部からやって来る人たちに対して大きな抵抗を感じていました。ただ、恐れていたのです。しかし啓発活動を通して、私たちは住民を病気に陥れようとしているのではなく、治療ケアをするために訪れているのだと理解してもらえるようになりました。ひとり、ふたりと私たちの元を訪れる姿を見て、もっと多くの人たちが無料の診察にやって来ました」

15人ほど診察や治療を行ってエボラへの感染の疑いがある人がいないことを確認すると、ふたりは医療キットを片付け始めました。すると、村の近くに簡易の診療所を設置できないか、学校を作ってもらえないかと、立ち去ろうとするふたりに住民が尋ねました。

ニャンバラモウ医師はフォレカリアの担当官に直接話を持ちかけることを住民たちに勧めました。

40年近く前に初めて確認されたエボラ・ウイルス。今回の西アフリカでの流行は、過去最長期間にわたり、最も甚大な被害をもたらしています。モウサファンガミャー村の状況は、エボラの流行がようやく終わりを迎えようとしている一方、ギニアの保健システムを復興・強化し、誰もが基本的な保健ケアにアクセスすることができるようにするためには、依然としてなすべきことが多く残っていることを物語っています。

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