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公益財団法人日本ユニセフ協会
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エボラ出血熱緊急募金 第80報
シエラレオネ
エボラ隔離センターの閉鎖
希望と不安が入り混じる住民たち

【2015年8月14日 ラヤ・グボラ(シエラレオネ)発】

エボラ出血熱による隔離措置が解かれた村の住民たちの間に、安堵と喜びが広まっています。しかし同時に、住民たちはこの先の生活への不安も感じています。

* * *

成果を収めたコミュニティ主導の取り組み

6歳の息子、アリくんと再会を果たしたカディアトゥさん。夫と赤ちゃんをエボラで失った。
© UNICEF Sierra Leone/2015/Kassaye
6歳の息子、アリくんと再会を果たしたカディアトゥさん。夫と赤ちゃんをエボラで失った。

2015年7月31日、シエラレオネのカンバ地区で、住民たちがキャンプ・ホープの閉鎖を祝っていました。シエラレオネ全土でエボラの終息が宣言されるには至っていないため、いくぶんか控えめのお祝いです。しかし、この死に至る病に感染する危険に晒されていた村の住民にとって、隔離施設の閉鎖は大きな意味を持ちます。

キャンプ・ホープは、エボラ患者や感染の疑いのある人々を隔離するため、シエラレオネ政府がユニセフやWHOなどのパートナー団体の協力を得て設置した仮設のテント施設です。この地域で最後にエボラの症例が報告されてから、21日(エボラウイルスの潜伏期間)が経過しました。

閉鎖に際し、長老や村長、宗教リーダーや伝統的リーダーたちの立ち会いのもと、ラヤ・グボラ村の住民たちやキャンプ・ホープに身を寄せていたエボラの回復者たちが集まり、この地域で再びエボラの感染者を出さないようにするために力を合わせることを誓いました。

キャンプ・ホープは、珍しい成功例のひとつに数えられます。村の住民全員が自主的に自宅を出た後に村を水没させ、村に立ち入ることができないようにしたのです。住民たちはその間、近くの乾燥した土地に設置されたテントで生活を送りました。また、住民たちはエボラ対応チームと共に協力し、エボラ患者と接触した人全員の特定や隔離にも積極的に参加しました。引き続きエボラ監視システムを効果的に維持しておくことは、今後シエラレオネからエボラを根絶させるために非常に重要となります。

「コミュニティ主導の活動を成功させたということに、大きな意味があるのです。コミュニティ全体がエボラの根絶に向けて力を合わせ、村長や住民たち、大きな影響力のある女性代表者たちがエボラの根絶に向けたプロセスに参加していました。これはまさに、持続的な対応システムの構築のために、今後も参考にしていくべきモデルとなるものです」と、カンビア地区で支援を行うユニセフ現場コーディネーターのデルフィーヌ・レテリエが語ります。

最後のふたり

エボラに感染して亡くなった住民を悼み、家族のもとに集まる村の人々。
© UNICEF Sierra Leone/2015/Kassaye
エボラに感染して亡くなった住民を悼み、家族のもとに集まる村の人々。

キャンプ・ホープの閉鎖は多く人に喜びをもたらしました。この施設に最後まで残っていたカディアトゥ・バングラさんは、隔離用のテープが外されると、6歳の息子のアリ・セサイくんを抱き上げ、ぎゅっと抱きしめました。カディアトゥさんの夫がエボラによって命を失ったことを始まりに村全体が隔離されてから初めて、息子に会うことができたのです。カディアトゥさんは赤ちゃんと義理の妹も、エボラで失っています。そして、カディアトゥさんと夫の兄弟が、この施設を出る最後のふたりとなりました。

「今日やっと施設から出ることができ、安心しました。私は健康を取り戻すことができましたし、息子も元気です。そして、また息子に会うこともできました。今日はとても幸せな日です。夫と赤ちゃんをエボラで失いましたが、お祈りをしてもらい、私もいくぶんか心の安らぎを取り戻しました。自宅に帰って、家族と一緒に過ごしたいと思います」

2015年8月10日時点で合計8,697人がエボラに感染し、3,585人が命を失ったシエラレオネ。エボラによって破壊された人々の生活の再建が喫緊の課題となっています。

夫を失ったカディアトゥさんにとって、悲しみを乗り越えること以上に、生活の再建には困難も伴うことでしょう。

「ここを出たら、どうやって生計を立てていったらいいのか分かりません。トウモロコシやキャッサバ、落花生や米を育てていましたが、夫がいない今、農業を続けることはできません。生活再建のための支援を受けることができれば、小さな店を始めたいと思います。そうしたら、生活のためのお金を稼ぐことができますから」(カディアトゥさん)

長きにわたる隔離から解かれたエボラ回復者たちには、生活再建に必要なマットレスや服、毛布、調理器具などが入った支援物資が渡されます。

復興、そして開発へ

エボラの根絶を最優先事項に掲げるなか、シエラレオネ政府はエボラ対応によって中断されていた国家の開発政策である「繁栄のためのアジェンダ」を再開させるための準備も進めています。政府によって定められた4つの優先分野のうち、すべての子どもが再び学校に戻れるようにすること、基本的な保健サービスへのアクセスの再構築、子どもの保護の3分野で、ユニセフは支援を行います。

2015年5月、シエラレオネ政府はユニセフや世界銀行の協力のもと、子どもやエボラ回復者、困難な生活を送る人々など、極めて貧しい家庭への定期的な現金給付を行う社会セーフティネットプログラムを立ち上げました。この支援により、困難な状況に置かれる人々が食べ物を購入し、子どもたちを学校に通わせ、家畜などの財産を維持し、小さなビジネスを始めることを手助けすることができるようになります。

ユニセフはシエラレオネでのエボラ危機への対応のため、1億7,800万米ドルの資金を国際社会に訴えています。7月22日時点で1億2,170万米ドルの支援に留まっており、5,630万米ドルの資金が依然として不足しています。

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