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ソマリア干ばつ緊急募金 第27報
「恵みの雨」がもたらした新たな悲劇

【2011年10月14日 ソマリア・モガディシュ発】

© Radio Ergo 2011/Abdulle
ソマリアの首都モガディシュ郊外の国内避難民キャンプのテント。「恵みの雨」がもたらした洪水は、この周辺にも押し寄せた。

雨季を迎えたソマリア。2年にもわたって干ばつが続いていた地域もある国南部・中部の地域に、待望の雨が降り、地域の人々は、大きく胸をなでおろしています。

しかしながら、この恵みの雨は、同時に、モガディシュや周辺地域の一部の国内避難民キャンプに、壊滅的な影響も与えています。数十万人ものソマリアの人々が避難生活をおくっているキャンプのテントは、ビニールや木の枝、段ボールなどで作られたもので、雨には耐えられません。このため、何千人もの人々が、避難できる場所もなく、雨の中に取り残されたままになっています。

水を媒介にした感染症の危険

寒さによる低体温症の危険に加え、この雨で、マラリアやコレラ、急性水様性下痢症といった水を媒介とする病気の危険性が高まっています。既に飢えや栄養不良で疲弊している多くのソマリアの人々は、さらに深刻な危険にさらされています。多くの人々が、再び死に直面しているのです。

モガディシュのホダン地区にあるソオナ・ケイと呼ばれる場所に設置されたキャンプでは、多くのテントが完全に流出。子どもたち数人が、風邪で命を落としました。

ひどく落ち込んだ様子の男性がいました。つい先日、7人いた子どもの中で唯一生き残っていた最後の一人を埋葬したばかりだったのです。ソオナ・ケイキャンプに辿り着いてから、僅か40日の間に、7人の子どもたちを次々に亡くしました。

「最後の2人の子どもたちも、先立った5人の子どもたちと同様、寒さと飢えで亡くなりました」と、この父親は静かに語ってくれました。

免疫力を弱める栄養不良

© Radio Ergo 2011/Abdulle
モガディシュの国内避難民キャンプでの暮らしを余儀なくされているソマリアの人々は、待ちわびた雨にもかかわらず、その雨によって、再び避難を強いられた。

ワルディングレイ地区のハマル・ビレをはじめとする他の多くのキャンプも、同様に壊滅的な影響を受けています。多くの人々が、暖を取る衣類や毛布も無い中、寒さと飢えに苦しんでいます。

ワルディングレイキャンプ代表のサーラ・ハジ・サイッドさんは、支援を強く求めました。「ハマル・ビレでは、600人の難民が苦しんでいます。」「全ての人々への支援を強く求めます。」

モガディシュとその周辺の難民キャンプの子どもたちを中心とする人々の間に蔓延する、高い栄養不良率。この雨の影響で、状況はさらに悪化しています。(国連の)ソマリア食料安全保障・栄養分析チーム(FSNAU)によると、中度および重度の栄養不良の子どもたちを合わせた数である全急性栄養不良(GAM)のレベルが、ソマリア南部では、世界保健機関(WHO)が「人道支援が必要な危険域」として定める15パーセントをはるかに凌ぐ、36.4パーセントに達しています。また、重度の栄養不良(SAM)の割合も、15.8パーセントに達しています。栄養不良は、人々の免疫力を低下させ、特に子どもたちを寒さに弱く、雨や洪水がもたらす様々な疾患に罹りやすくさせるのです。

支援の拡大

この雨により、推定250万人のソマリアの人々が、マラリアに感染する危険が高まっています。特に栄養不良状態にある幼い子どもたちと避難民の間のマラリアの流行を防ぐため、ユニセフは、世界保健機関(WHO)をはじめとするパートナー団体とともに、世界エイズ・結核・マラリア対策基金と英国国際開発省からの資金援助を受けて、今後予想されるマラリアの流行を食い止めるための対策を展開しています。

首都モガディシュの避難民キャンプでは、4万5,000世帯を対象に、1回目の各世帯を対象にした殺虫剤の噴霧を実施する予定です。これが実施されれば、向こう3-4ヵ月間マラリアの感染を防ぐことができます。来年の3月と4月には、2回目の噴霧が行われる予定です。この活動と並行し、マラリア予防のための広報キャンペーンも展開。予防法の啓発を進めるとともに、マラリアに感染した場合に相談できる医療機関(支援団体)などの情報も伝えています。

これに加え、アルテミシニン調合薬などの抗マラリア薬(ACT)56万錠や、簡易診断テスト用の試薬等100万回分を、今後、地元の保健センターをはじめとする医療施設に提供する予定です。