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財団法人日本ユニセフ協会



パキスタン緊急募金 第25報
支援を待つ女性と子どもたち

【2010年8月6日 パキスタン・ペシャワル発】

© UNICEF Pakistan/2010/Jameel
パキスタン北西部のペシャワル郊外に位置するジャラ・ベラ村にある洪水で崩壊した家の横に立つアラバ・ビビさん(70歳)。

「4日間、木の上で過ごしました。」パキスタン北西部カイバル・パクトゥンクワ州郊外のジャラ・ベラ村に暮らすアラバ・ビビさん(70歳)はこう話しました。

国連の推計によると、この洪水の被害は、カイバル・パクトゥンクワ州をはじめとする広範囲にわたる地域に及び、被災者は約400万人にのぼっています。また、6日には、パキスタン政府の救援機関が、被災者数について、さらに高い数値を発表。これまでに、少なくとも1200万人が被災したと発表しました。

「ユニセフは、パキスタンの洪水の影響を受けた数百万人の人々のために、人道支援活動の強化を図っています。」ユニセフ・パキスタン事務所のマーティン・モグワンジャ代表はこう話します。「被災した人々の多くは、病気や現在の厳しい状況に最も弱い立場である子どもたちです。こうした子どもたちは、安全な飲料水や医薬品、食糧、避難できる場所を緊急に必要としています。」

全てが流されてしまった・・・

一週間前、高さ3メートル近い洪水が押し寄せた際、ジャラ・ベラの女性と子どもたちは、真夜中に高台への避難を余儀なくされました。アラバ・ビビさんは、走ることができなかったので、村の男性たちは、木の高いところに麻でベッドのようなものを作り、ビビさんを座らせました。

「私の家は無くなってしまいました。何も残っていません」と、ビビさんは話します。「私の足を見てください。血が出ています。履くものもないんです。服も汚れきっています。」

泥壁でできた家は倒壊し、所持品は瓦礫の中に埋もれてしまったと、ビビさんは、涙を流しながら話してくれました。

ケアと保護
© UNICEF/NYHQ2010-1565/Zaidi
パキスタン北西部カイバル・パクトゥンクワ州で、洪水の水が引いた泥道を通りながら、水を運ぶ女の子。

ジャラ・ベラとその周辺の村々にある家屋の80パーセント近くは、同様の被害を受けています。人々は、激しい暑さと強い湿気に耐えながら、道端に設置された避難テントでの生活を強いられています。

イスラマバード近隣の村から避難してきたアジマルさん(17歳)は、「午前3時に洪水の水が押し寄せてきんです。」と、その時のことを振り返って話します。「命からがら逃げることしかできませんでした。」

家が流されたアジマルさんは、今、6人の幼い弟・妹たちと避難テントで生活しています。アジマルさんの両親は村に戻り、再び家族で生活できるように準備しています。

ビビさんやアジマルさんの話は、女性と子どもたちが、パキスタンの洪水被害のような状況が発生すると、その初期の段階で、最も大きな影響を受けるという事実を示すものです。現在、洪水被災地にいる数万人の女性と子どもたちが、特別なケアと保護を必要としています。

コミュニティへの影響
© UNICEF/NYHQ2010-1564/Zaidi
パキスタン北西部カイバル・パクトゥンクワ州で、残った所持品を運ぶ台車に乗っている女の子。モンスーンで引き起こされた今回の洪水によって、この女の子の家は倒壊しました。

過去80年間で最悪と言われる洪水に見舞われ浸水したジャラ・ベラを含む村々で、ゆっくりと水が引き始めています。洪水により、カイバル・パクトゥンクワ州だけで、16万棟の家屋が全半壊しました。

高台から自分の家が壊滅している様子を目にした村人たちは、苦痛な表情を浮かべ、この被害の状況を物語っていました。

「この道沿いの全ての村が、同じような状況です。何も残っていません。」かつて、地元の役人だったイフティクハル・アフマドさんはこう話します。「作物、家畜、家を失いました。食糧の供給はありません。全ての水源が被害を受け、汚染されています。子どもたちは、皮膚疾患や胃の疾患に苦しんでいます。」

「とにかく、テントが必要です。」アフマドさんは、疲れきった口調でこのように付け加えました。「飲料水や医療支援も必要です。絶望的な状況です。子どもたちを守るために、私たちを助けてください。」

最優先の課題
© UNICEF Pakistan/2010/Jameel
パキスタン北西部にあるジャラ・ベラ村にあるユニセフが支援した給水車。被災地への水の供給と、水を媒介とする疾患を防いでいます。

被災者の病気の流行、特に、幼い子どもたちの命を奪う危険性のある下痢性疾患の流行を避けるために、洪水によって水源が破壊された地域に暮らす人々への飲料水の提供が、非常に重要です。ジャラ・ベラと周辺の村々で、ユニセフは、地元NGOと協力して、飲料水と家庭用衛生キットを配布しています。

女性が世帯主となっている家庭や子どものいる家庭を最優先に、飲料水の提供やその他の救援活動を展開しています。

また、ユニセフは、政府による給水設備の修繕作業も支援しています。現在までに、カイバル・パクトゥンクワ州の約70万の人々が、修繕された91箇所の井戸や給水車によって飲料水へのアクセスを取り戻しました。浄水器、石けん、バケツ、水を運ぶための貯水容器も洪水の影響を受けた人々に配布されています。

また同時に、ユニセフは、パートナーと共に、水を媒介とする病気を予防するため、保健と衛生についてのメッセージを伝えるべく、口頭での呼びかけ、ラジオ、新聞、リーフレット、冊子、バナーを利用した活動、イスラム教寺院での演説と、6つの方法で広報活動を展開しています。

パキスタン北西部で洪水の影響を受けた人々の緊急のニーズに応えるべく、飲料水、衛生施設(トイレ)、公衆衛生、その他の支援を行うため、ユニセフは、当面必要な資金(今年10月までの活動に必要な資金)として、国際社会に対し、47,344,820ドル(40億円あまり)の支援を求めています。