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財団法人日本ユニセフ協会



パキスタン緊急募金 第45報
被害発生から3ヵ月。3つの脅威に晒される被災者たち

【2010年11月2日 パキスタン発】

© UNICEF/Pakistan/2010/ Shuja
シンド州ダドゥの洪水の水の中で遊ぶ子どもたち。パキスタンでは、日増しに水を媒介とする疾患の危険性が高まっています。

パキスタンの洪水被害の発生から3ヵ月。シンド州南部ダドゥ地区は、特に甚大な影響を受けた地域です。人口130万人の半数近くが住む場所を追われ、この地域のほとんど全ての人々が被災しました。こうした洪水の影響を受けた人々に、切実に求められている支援物資と医療援助を支援するべく、現在も、懸命な支援活動が続けられています。

この地区の約6万5,000人が、避難所もない小さな村に取り残されています。その大部分が、女性と子どもたちで占められています。孤立した地域へのアクセスは、ボートかヘリコプターに限られています。また、水を媒介とする病気の危険性が日増しに高まっていますが、こうした地域に支援を届けることは、益々困難な状況となっています。

ユニセフが支援している医療チームは、パキスタン軍のボートとホバークラフトでこの孤立しているコミュニティに上陸。緊急の保健支援と、高カロリービスケットや殺虫剤処理された蚊帳などの支援物資を届けました。こうした懸命の支援活動にもかかわらず、豪雨が止み、洪水の水が引いてから数ヵ月経過した現在も、緊急支援が必要な状況が続いています。

孤立した地域の人々へ支援
© UNICEF Pakistan/2010/ Shuja
シンド州ダドゥにある洪水で孤立した地域のひとつ、ジャマル・カーン・レグハリ村。

シンド州マイン・ナラ渓谷北西部に位置するジャマル・カーン・レグハリ村も、壊滅的な被害に見舞われた地域の一つ。いまだに浸水している場所もあります。以前は、約200世帯の家族がこの村に暮らしていましたが、現在は、わずか40世帯。村の人々は、なすすべもなく何らかの支援が届くことを待っている状況です。ユニセフの保健支援担当官、カマル・アスグハル医師は、この地域が置かれた事態の緊急性を次のように説明します。

「ダドゥ郊外の2つの地域に暮らす5万人の人々が、浸水地域に取り残されましたが、パキスタン軍がボートとホバークラフトでアクセスを確保してくれるまでは、誰にも医療支援を提供することはできませんでした。」「緊急の支援ニーズの調査が行われた後、パキスタンの保健当局とパキスタン軍との協力を得て、保健分野での緊急支援計画が立てられたのです。」

現在、医療支援チームは、毎日、軍のボートでこの地域に向かい、緊急保健サービスや妊産婦と新生児の保健ケア、予防接種と保健知識の普及活動を行っています。「ここ10日間で、孤立した地域に取り残された2万5,000人に支援を行いました。今後20日間の間に、さらに2万5,000人に手を差し伸べるべく支援活動を実施する予定です。」(アスグハル医師)

「全てを失いました」
© UNICEF Pakistan/2010/ Shuja
緊急医療支援を行うため、パキスタン軍のボートでジャマル・カーン・レグハリ村へ向かうユニセフの支援している医療チーム。

アジャナ・ファロオクさん(40歳)は、彼女の自宅が洪水に襲われ、全てが様変わりした日の夜のことを話してくれました。

「全ては、あの日の夜起こったの。私たちは、なすすべもなく洪水の水に飲み込まれて、家の全ての物が水に沈みました」と、ファロオクさんは話します。「夫は、私と4人の子どもたちを残して亡くなりました。私は、瓦礫の中に留まっていました。他に行く場所もないし、お金もありません。」

悲しそうな表情のファロオクさんは、次のようにも語ってくれました。「食べるものは、わずかに残った小麦しかありません。この小麦に水をたくさん混ぜて、子どもたちに食べさせています。これからどうしたらいいのか分かりません。子どもたちに何もしてあげられません。間もなく『イード』(イスラム教の祝日)もやってきます。でも、子どもたちに着せてあげられる服も靴もありません。」

被災者が直面する三つの脅威

陸路での支援がいまだに困難な状況の中で、冬が間近に迫っています。すぐに支援が提供できなければ、ダドゥの女性と子どもたちの健康上のリスクは非常に高まるものと懸念されています。

子どもたちは、自然災害や紛争などの緊急事態において最も弱い立場に立たされます。サフィア・ハロオンさん(12歳)は、泣きそうになりながら、悲劇的な体験を話してくれました。「突然、とても速く、多分一時間くらいの間に水が入ってきたの。とても怖かった。私の家族は、ここに留まっていました。牛がいるから・・。家には少し麦があって、それを食べる日もあるし、何も食べない日もあります。前は学校に通っていたけど、道がなくなっちゃったから今はどこにも行けません。」

国連は、パキスタンの洪水被害に対する資金が不足し、支援活動が思うように進んでいないことに警鐘を鳴らすと共に、冬が近づいていることを懸念しています。洪水の被災者たちは、気温が低くなる今、栄養不良、水を媒介とする疾患、肺炎といった呼吸器感染症の三つの脅威に直面しています。11月中旬に予定されているパキスタン軍の撤退後、支援が届けられていない人々への支援は、地元当局と人道支援団体にとって、益々大きな課題となる見込みです。