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財団法人日本ユニセフ協会



パキスタン緊急募金 第52報
ポリオ感染も拡大−未だに必要な「緊急支援」

【2010年12月7日 イスラマバード/ジュネーブ発】

© UNICEF Pakistan/2010/Zak
ユニセフの支援で運営されるスワート州の病院に設置された栄養不良治療センターで治療を受ける、ルクサール・サイド・アリ・カーンちゃん(7ヶ月)。

建国史上最悪といわれる大洪水に見舞われてから4ヵ月以上が経過したパキスタンに、厳しい冬が迫っています。ユニセフは、既に多くの子どもたちが急性呼吸器感染症や栄養不良に苦しんでいる現状がさらに悪化すると、警鐘を鳴らしています。

また、ポリオ感染も急速に拡大しています。2009年は89件だった症例数が、今年は既に126件。パキスタンは、(国際的な目標である)ポリオ根絶に向けて大きな前進を遂げてきただけに、非常に懸念される状況です。パキスタンは、ポリオ感染が未だに残っている世界4ヵ国のひとつです。パキスタン北部の政情不安を抱える地域は、依然としてポリオ予防策の普及率が低く、また、今回の洪水によって、避難を余儀なくされた人々が密集して生活していることや、不衛生な衛生環境によって、その状況はさらに悪化。子どもたちは、増大した脅威に晒されています。

© UNICEF/2010/Pakistan/Dsouza
8月、シンド州の避難キャンプを訪れたユニセフ・南アジア事務所のダニエル・トゥール代表。

ユニセフ・南アジア地域事務所のダニエル・トゥール代表は、次のように話しています。「緊急支援が必要な状態は、まだまだ当分続きます。被災地の状況によって全く異なる対応が必要です。支援活動は、最も支援を必要としている子どもと女性の変化するニーズに合わせて、迅速に対応しなければなりません。」「ほとんどの人々は、自分の家があった地域に帰還し始めていますが、多くの人々は、自宅も、畑も、食糧も、お金も、全て失った状態で帰還しています。雪が降り始めた北部では、冬用の衣服や厳しい冬に備えるための支援物資を配布しています。一方、南部では、洪水の水がなかなか引かず、いまだに100万人以上の人々が避難生活を余儀なくされています。間近に迫っている厳しい冬が、パキスタンの子どもを死に至らしめる最大要因となっている、呼吸器感染症と栄養不良の数を急増させるのではないかと懸念されています。」

モンスーンによるこの大洪水で、国土の5分の1が浸水し、2,030万人が被災しました。約1万棟の学校と農村部の保健センターも全半壊。上下水道や橋、道路などの主要な社会インフラも、崩壊あるいは大きな損傷を受けました。

ユニセフは、洪水発生直後から、毎日280万人という前例のないほど多くの人々に清潔な飲料水を提供。150万人以上の人々のための衛生施設を設置しました。ユニセフは、世界保健機関(WHO)やパキスタン政府と協力して、900万人以上の子どもたちを対象に、はしかとポリオの予防接種も実施しています。30万人近くの妊婦や赤ちゃんを持つ母親と栄養不良の子どもたちにも、栄養補給剤を配布しました。また、10万6,500人の子どもたちが仮設教室での勉強を再開。その他にも、被災後(に社会秩序の崩壊などから発生が予想される)、虐待や放置、搾取などの脅威から女性と子どもたちを守るため、10万4,400人が利用できる「子どもに優しい空間」を設置しています。

ユニセフは、冬に備えて、子ども用の防寒着や毛布を配布し始めています。しかしながら、数百万世帯の人々、その中でも特に寒さが厳しい北部に暮らす人々には、今後数ヵ月間生き延びるための飲料水や医薬品、栄養補助食品の支援が、まだ必要な状況です。

ユニセフは、こうした子どもたちの命を守るための緊急人道支援活動や再建・復興支援活動を続けるために必要な資金として、総額8,210万ドルの支援を国際社会に求めています。また、子どもたちの間に増え続けている栄養不良やポリオの流行を食い止めるために、さらなる資金も早急に確保されなければなりません。

「大きな規模の支援が必要とされている状況が、まだ続いています。パキスタンの洪水被害の影響は、今後数年間は続くと見込まれています。でも、今できることをすればするほど、子どもたちとその家族はより早く立ち直ることができるのです。ですから、更なる支援活動を展開するために、今、緊急に資金が必要とされているのです。」(トゥール代表)