|
パキスタン緊急募金 第50報
|
© UNICEF Pakistan/2010/Shandana |
サルマちゃん(右)とミスバー・ウッディンちゃん。カイバル・パクトゥンクワ州北西部のバンド・コライ村にあった、洪水で破壊された家族と一緒に暮らしていた土壁の家があった場所で。 |
悲しいことに、全てを失うことは、子どもたちやその家族にとって初めてのことではありません。わずか1年半前にも、隣接するワジリスタン南部で勃発した武力紛争の影響で、先祖代々住み続けてきたこの村からの避難を余儀なくされたのです。デラ・イスマリ・カーンで農業を営んでいる裕福な親戚が、ミスバー・ウッディンちゃん一家を保護してくれました。
「夫は、昨年の武力紛争で亡くなりました。子どもたちを守るために自宅から避難しなければなりませんでした。」「そして今、私たちは洪水で大きなショックを受けています。この2年間に経験した苦しみを乗り越えられた人は、誰もいないはずです。」サルマちゃんとミスバー・ウッディンちゃんの母親のルキヤ・ビビさんは、涙を流しながらこう訴えました。
「またお母さんや妹と一緒に安心して暮らせるように、もう一度家を建てたい。」「もう一度勉強したいな。」ミスバー・ウッディンちゃんはこう話します。しかし、今のところ、この二つの夢が実現する見込みはたっていません。
© UNICEF Pakistan/2010/Shandana |
カイバル・パクトゥンクワ州のバンド・コライ村にあるユニセフが支援している「子どもに優しいセンター」で遊ぶサルマちゃんと子どもたちと、心理カウンセラーのサッジド・グルさん。 |
ミスバー・ウッディンちゃんとサルマちゃんは、洪水で避難を余儀なくされてから、学校に通っていません。一番近くの学校でさえ、今二人が暮らしている親戚の家から歩いて約1時間もかかるのです。昨年、ユニセフは、ワジリスタン南部から避難を余儀なくされた子どもが安心して学んだり遊んだりできるよう、この地域に「子どもに優しいセンター」を設置しました。
このセンターも、洪水で深刻な被害を受けてしまいましたが、「コミュニティの人々は、このセンターの活動が一日も早く再開できるよう、洪水の水が引き始めると直ぐ『子どもに優しい空間』用の部屋を確保してくれました。」 この地域で、ユニセフのパートナーとして活動する地元NGOのサノバル・グルさんは話します。
このNGOは、ワジリスタン南部からこの場所に辿り着いた約500世帯に、様々な支援を提供しています。「この村では、子どもたちを保護するためコミュニティの監視ネットワークが、洪水が起こる以前に確立していました。このネットワークが、洪水に見舞われて急いで避難を強いられた際も、子どもたちが家族と離散することを防いでくれました。」「被災者、特に子どもと女性が生活を立て直せるよう支援しています。」(グルさん)
児童心理カウンセラーのグルさんは、「子どもに優しい空間」で、武力紛争や洪水が、最も弱い立場の男の子と女の子に与えた影響を目の当たりにしています。
「こうした子どもたちは、二重のトラウマに苦しんでいます。私たちの支援が必要です。」「武力紛争で父親を失ったサルマちゃんやその家族は、今、洪水の深刻な影響を受けています。この辛い経験を乗り越えるために、心理的な支援と、安心して勉強したり遊んだりできる環境を緊急に整える必要があります。」
ユニセフは、パートナー団体とともに、パキスタン北西部の紛争地域と洪水被災地で、重要な課題の一つとなっている子どもの保護分野で活動しています。この非常に重要な活動の一環として、バンド・コライ村をはじめとする被災地の数百箇所に「子どもに優しい空間」を設置。幼い子どもたちが、再び日常の感覚を取り戻せるよう活動を続けています。
「ここから学校までは遠過ぎるけど、妹も僕も、このセンターに来るのが大好きだよ」と、ミスバー・ウッディンちゃんは話します。「辛いことは忘れて、友だちと一緒に勉強したり遊んだりするんだ。」