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パキスタン緊急募金 第37報
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© UNICEF/2010/McBride |
移動保健診療所で血圧を測るナスレーン・ハスヘリ医師。 |
「今日診察した多くの患者が、脱水症状や急性の水様下痢、呼吸器感染症、皮膚病などに苦しんでおり、特に子どもたちの間には、疥癬(カイセン)も見られました。」ハスヘリ医師はこのように話しました。また、下痢に苦しむ人々の数が、子どもたちも含めて増加していることを特に懸念していると指摘しました。
「飲料水、衛生習慣、衛生施設(トイレ)の質が、コミュニティに蔓延している病気の状況と密接に関連しています。」「下痢のような疾患に対して、迅速かつ適切に対処することができなければ、子どもたちの健康状態はさらに悪化することになり、時には命を落とすことにもつながりかねません。」(ハスヘリ医師)
洪水により、水が停滞して淀んでいるところもあるため、今後数週間、数ヵ月のうちに、マラリアが蔓延する恐れもあると付け加えました。
今朝早く、ハスヘリ医師の移動保健診療所は、騒々しい道路上に設置されている避難キャンプにやってきました。厳しい暑さの中、ハエが、子どもたちの傷口に群がっています。
最近この避難キャンプに歩いて辿り着いた11世帯(約30人)の女性や子ども、お年寄りたちが、辛抱強く医師の診察を待っています。皮膚病に感染している子どもの数は、医療的な訓練を受けていなくとも判別できます。顔や胸には湿疹ができ、細い腕全体に、かさぶたを引っ掻いた跡が残っているのです。
こうした状況の中、今日は、ハスヘリ医師と保健チームにとって幸いなことに、移動診療所のために強烈な日差しを遮る布が取り付けられました。
© UNICEF/2010/McBride |
アブダルくん(仮名)は、パキスタンを襲った洪水被害後、深刻な病気に苦しむ数百万人の子たちのひとり。 |
この壊滅的な洪水の影響で、小さな避難キャンプでの生活を余儀なくされている多くの家族が、自宅、作物、家畜を含む生活の糧全てを失いました。こうした被災者の受けた心理的な影響は、今後も長く続くだろうと、ハスヘリ医師は警告します。
ヤング・アブダルくん(仮名)は、ぐったりと座って、治療の順番を待っていました。顔と腕中にできた傷は、血が出るまで引っ掻いたために熱を帯びているようでした。アブダルくんの母親は、医師がきてくれたことに感謝していると話しました。アブダルくんは、やっと適切な治療を受け、薬を処方してもらえるのです。
現在、ハスヘリ医師たちのような移動保健チームが、サッカル郊外の200以上の臨時避難キャンプを巡回しています。この保健チームは、子どもたちとその家族の治療と、新たな病気の発生を防ぐための教育になくてはならないものとなっています。現在、被災者たちは、暑さと、不衛生な環境、安全な飲料水の不足により、病気の流行という2次災害に見舞われ始めているのです。
「こうした移動保健チームの活躍によって、急性の水様下痢、急性呼吸器感染症、マラリア、目や皮膚の病気といった様々な病気に苦しむ数千人の人々に、迅速で効果的な治療を行うことが可能となっています。」サッカルを拠点に活動しているユニセフの保健担当であるモハメド・マズハル・アラム医師はこのように話しました。
しかしながら、移動診療所だけでは、人々のニーズに応えることは到底できず、今後に向けた安定した解決策を講じることができない状況です。「大きな避難キャンプの敷地内に、強固なネットワークを持つ、もっと大きな備え付けの診療所を設置することが必要不可欠です。そうすれば、避難キャンプにいる患者に、必要に応じて、保健施設での治療を勧めることができます。」
さらに、アラム医師は、パキスタンの避難キャンプには、妊産婦の保健サービスが不足していることを特に懸念していると付け加えました。
「避難キャンプには、多くの妊婦、授乳中の女性、子どもたちがいます。経験豊かな助産師のいないこうした環境の中で出産している女性たちがいることも聞いています。」「十分な保健サービスを受けることができないという危機に直面している子どもと女性たちが、さらなる危険に脅かされないために、サービスを拡大する必要があるのです。」