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財団法人日本ユニセフ協会



パキスタン緊急募金 第44報
妊産婦と出産へのサポート

【2010年10月19日 パキスタン発】

8月、パキスタン南部シンド州ベロシェへールの町を洪水が襲いました。その時、ハリーマ・ガフォールさん(20歳)は数週間後に出産を控えていました。家は洪水の水に急激に襲われ、ハリーマさんは家族と共に避難することを余儀なくされました。

「洪水の水が溢れてきて家を出なければいけなかった時、私は妊娠中で、痛みもあって、そのまま道に倒れて死んでしまうのではないかとさえ思いました。」と、ハリーマさん。
そんな状況の中、ハリーマさんと夫は、やっとの思いで地域の大きな町タッタ行きのバスに乗ることができました。到着すると、町の地主が町の中心にある空き地を避難所として用意してくれました。

10月現在、パキスタン中の洪水の水位の低下が見られ、人々はそれぞれの家に戻っています。一部破壊された家もあれば、全壊した家もあります。たくさんの人が何週間にわたり、急いで建てられた避難民キャンプでの生活を余儀なくされ、中には何ヶ月もの間避難生活を強いられていた人もいました。生活再建への長い道のりは始まったばかりで、必要なものがまだまだたくさんあります。

移動式の保健チーム
© UNICEF/Pakistan/2010/ZAK
パキスタン南部シンド州のタッタで妊産婦の検診を行う女性ヘルスワーカーのアスマ・ファロークさん

このような状況で、特に妊娠中の女性が危険な立場に置かれています。

パキスタン政府はユニセフの支援を受け、「妊産婦、新生児及び子どもの保健プログラム」(MNCH)を通して出産前および出産時の基礎的なサービスを母親に提供し、出産後の母親と新生児のケアも行っています。ここタッタの町では、このMNCHセンターが3ヶ所設置されていて、洪水で住む場所を追われ、周辺の避難キャンプで暮らしている人に基礎的な保健サービスを提供しています。

しかし、残念なことに、多くの女性がこの保健サービスの存在を知らず、また、これらの保健センターへ通うことができない状態にあります。そこで、より多くの人にサービスを届けるため、また、妊婦さん全員に必要なケアが届くように、ユニセフは移動式の保健チームを支援しています。

チームには医師1人、女性のヘルスワーカーと地域の助産婦がいます。彼らは妊娠中、もしくは出産して間もない女性と赤ちゃんを探し出し、妊娠中と出産直後に必要なケアを行います。必要な時には、一番近い病院へ照会します。時には、病院までの距離が遠いことや、照会する時間が十分にない時もあります。

テントでの出産

ハリーマさんと出会ったのも、三つの内の一つの保健チームが避難民キャンプを巡回していた時でした。リハーナ・ラフィーク・メモン医師が率いるチームは、ハリーマさんの妊産婦検査をした時、ハリーマさんに子どもが生まれそうになったらすぐにチームに声を掛けるよう言いました。

子どもが生まれそうになった日、ハリーマさんはチームを呼びました。その時、ハリーマさんはすでに出産間近でした。ハリーマさんはすぐさまテントに運ばれ、30分後、ロープで作られた簡易ベッドの上で女の子を出産しました。赤ちゃんはハリーマさんの母親と同じ名前をとって、ラリーと名づけました。

洪水の水が引いた今、避難先から家に戻る人々が増えています。そのため、被災者が分散してしまい、ケアを必要とする人々に基本的なサービスを届けることがより一層難しくなっていきます。そこで、パキスタン政府やユニセフ、それから人道支援団体は互いに連携して、パキスタン全土における早期復興への取り組みを急速に拡げています。

その一方で、ユニセフは、洪水が起きる前よりも多くの人々に、保健や栄養、衛生、教育といったサービスを届けられるようにするための支援構築にも取り組んでいます。ユニセフはパキスタンにおける女性や子どもたちの保健や生活を改善するため、今もそして今後も、長期的かつ持続可能な支援を続けています。