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財団法人日本ユニセフ協会



パキスタン緊急募金 第26報
南部に拡大する洪水被害

【2010年8月10日 パキスタン発】

© UNICEF Pakistan/2010/Raabya
家畜や家財を守るために、洪水に襲われた村に残った夫や義理の弟の安否を気遣うジェハンさん(右)

パキスタン北西部が洪水に襲われてから数週間。その被害は、今、国の南部にも拡大しています。モンスーンによる集中豪雨がパキスタンの広い地域で降り続く中、緊急支援活動は、南部のシンド州にまで拡大して行われています。

国連の推計によると、この洪水の被災者は、600万人の子どもたちを含む約1400万人にのぼっています。現在までに、相当数の被災者に人道支援が届きはじめていますが、さらに数百万人もの人々が、避難所、食糧、保健ケアを緊急に求めている状況です。今後数日間のうちに、この洪水は、特にシンド州で更に悪化するものと懸念されています。

疲れきった被災者たち

シンド州の大都市のひとつスックル市の総合高等学校の校舎は、今、洪水被災者の避難所になっています。ここでの生活を余儀なくされている人々の一様に疲れきった無表情な様子は、この被害の深刻さを物語っています。

シカルプル地区ウナル・ゴス村のノオル・ジェハンさんは、生後1歳3ヵ月の息子さんを抱いたまま、他の多くの村人と同様、途方にくれています。洪水被害で受けたショックをひきずり、疲労困憊したジェハンさんは、先祖代々住み続けてきた村を避難してきた時のことを思い出していました。

「義理の弟が急いで家にやってきて、『夕方には村の川が氾濫するから、すぐに家から避難するように』と知らせに来た時、私は、丁度やぎの世話をしていたんです。」「わずかな所持品を持って、ロバに乗ってスックルに避難したのですが、本当に混乱していました。だから、その時のことを良く思い出すことができません。」ジェハンさんはこう話します。

避難を余儀なくされた人々
© UNICEF Pakistan/2010/Raabya
支援物資の到着を待つ、南部のシンド州に逃れた被災者たち。その多くは、洪水で全ての所持品を失った。

ジェハンさんは、夫と義理の弟のことをとても心配しています。

「夫と弟は、私たちの唯一の収入源であるヤギと牛を守るため、家に留まりました。」ジェハンさんは目に涙をためてこう話します。「私たちにとって、苦しい旅でした。目的地は分かりませんでしたし、家に残った夫と弟のことが心配でなりませんでした。丸一日と一晩かけて、ここに辿り着きました。でも、これからどうしたら良いのか、全くわかりません。」

避難キャンプには、ウナル・ゴスから避難してきた25世帯の家族が暮らしていますが、この他にも、約500人の人々が、この避難所での生活を余儀なくされています。そして、今後、さらに多くの人々が避難してくるものと見られています。

スックル市当局は、この学校の校舎内に仮設の医療施設を設置。現在、ユニセフの支援で、予防接種活動の準備が行われています。15歳未満の子どもたちに、はしかの予防接種と感染症に対する免疫力を高めるためのビタミンA補給剤が投与される予定です。

不安定な状況

スッカル市を流れるインダス川には、北部の洪水が流れ込んできています。雨が降り続き、水位が上昇しているため、スッカル周辺地域に厳戒態勢が布かれています。

スッカルの低い土地に暮らしていた数万人もの人々が、避難を余儀なくされました。政府が設置した避難所の存在に気がついていないのか、あるいは、辿り着くことができないのか、多くの人々が、飲料水や食糧、トイレ、衛生要員といった、生きるために必要な基本的な物を持たないまま、基礎用品のない中、屋根も無い場所での生活を余儀なくされています。

こうした状況の中では、子どもたちは、水を媒介とする疾患に罹ったり、他の危険に晒される可能性が高く、特に非常に厳しい立場に立たされています。

川の水位が、もし危険なレベルに達した場合、地元当局は、市街地を守るために、スックルにある用水路やダムを破壊することも検討しています。しかし、もしこの決断が下されれば、一方で、サングラル、サリパト、アリ・ワハン行政地区の多くの村々は、浸水するものとみられます。