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パキスタン緊急募金 第40報
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© UNICEF/2010/McBride |
コミュニティの保健スタッフが用意した経口補水塩(ORS)を飲む、下痢で苦しんでいる赤ちゃん(シンド州のアグハ・アリ・ジャトイ村で)。 |
過去7年間、アグハ・アリ・ジャトイ村とその周辺にある他の3つの村で、コミュニティの保健員として働いてきたカルスム・ジャトイさんは、LHWチームの中心的な人物です。ジャトイさんは、人々に下痢性疾患に陥った際の対処法や、家庭での衛生習慣を伝え、子どもたちに、ポリオ、はしかをはじめとする様々な予防接種やビタミンB剤を提供しています。
15日に一回は、村々を巡回して回っているジャトイさんらLHWの女性たちは、シンド州で良く知られた存在です。
ジャトイさんは、物静かで控えめな女性です。下痢による脱水症を緩和する経口補水塩(ORS)の作り方の実演の最後、この青空教室に参加していた母親が急性の水様下痢に苦しむ子どもに実際にORSを与えてみました。すると、その子は、とても喉が渇いていたのでしょうか、ORSをごくごくと飲み干しました。青空教室の参加者からは、拍手が沸き起こりました。
ジャトイさんは、4人の子どもを育てる中で、保健と公衆衛生についてたくさんのことを学びました。「私の子どもたちの中で、洪水によって病気に罹った子は一人もいませんでした。」ジャトイさんはこう話します。「子どもたちに清潔な飲料水を与え、いつも手を洗わせていましたから。それに、子どもたちの体を洗ったり、衣服も洗っていました。」
© UNICEF/2010/McBride |
経口補水塩(ORS)の作り方を実演するコミュニティの保健スタッフ(LHW)、カルスム・ジャトイさん(右から2番目)。 |
洪水発生の警戒警報が発令された時、ジャトイさんは、地元の村で青空教室を開いていました。ジャトイさんと村の人々は、すぐに身の回りの物を集めて高台へ避難。それから4週間もの間、路上でのキャンプ生活を余儀なくされました。ジャトイさんたちは、洪水の水が急激に上昇し、これまで日常を過ごしてきた場所が流されていくところを、高台から脅えながら見つめていました。
洪水の発生から3週間後、人々は村に戻り始め、復興・再建活動に向けて動きだしました。ジャトイさんと、LHWチームのメンバーは、深刻な洪水被害に見舞われ、特に子どもたちの病気の流行や下痢性疾患が最も懸念されている地域で、子どもたち向けの青空教室を開き始めました。
ユニセフは、シンド州でLHWプログラムが始まった当初から、この活動を支援し、血圧計や体温計などの医療器材の他、経口補水塩(ORS)や亜鉛補給剤などの薬品も提供しています。
また、LHWの研修や、彼女たちが遠隔地でも活動できるように、保健教育や広報・啓発用の教材なども提供しています。
ジャトイさんには、2ヵ月間給与が支払われていません。それでも、彼女は仕事を続けています。洪水が起こる以前から、ジャトイさんは、定期予防接種で使われるワクチンの種類を増やしたり、性と生殖問題に関する助言を含めた保健教育・啓発活動を始めていました。アグハ・アリ・ジャトイ村には、10人の妊婦と、約28人の授乳期の女性がいます。こうした青空教室は、地元の女性にとって、必要不可欠なものになりつつあります。
ジャトイさんは、LHWの青空教室が始まった当初、多くの女性は、性と生殖に関する話をすることを躊躇していたと話します。
「でも、もう今は、彼女たちは私のことを良く知っているので、(私も)より率直な話もするようにしています。」「女性たちは、前は怖くて聞けなかったことも、今ではたくさん尋ねてくるんですよ。」
洪水に見舞われた困難な状況で、ジャトイさんと保健チームは、コミュニティにとって、なくてはならない存在です。パキスタンで発生した洪水の影響を受けた数百万人の子どもたちを、命を脅かす病気から守るために、ジャトイさんたちが行っている活動は必要不可欠なのです。