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公益財団法人日本ユニセフ協会
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エボラ出血熱緊急募金 第19報
エボラ出血熱・シエラレオネ:
111名の子どもが家族と離れ離れに
ケネマとカイラフンの調査結果から

【2014年8月24日 シエラレオネ発】

ポスターを見せながらカイラフンの町でエボラの症状や予防法を伝える様子。(シエラレオネ)
© UNICEF/NYHQ2014-1376/Douglas
ポスターを見せながらカイラフンの町でエボラの症状や予防法を伝える様子。

西アフリカでの感染拡大が止まらないエボラ出血熱。これまでに感染が確認された人は3,052人、うち1,546人が死亡しました。

感染が確認されている4カ国のひとつ、シエラレオネではこれまでに1,026人の感染が確認され、422人が死亡しています。現地では、エボラ出血熱への恐怖から、誤った情報や誤解が広まり、親や家族をエボラ出血熱で失った子どもたちが捨てられたり、社会から孤立しているといった状況が起きています。

ユニセフは、7月下旬、最も感染が広がっている東部のケネマとカイラフンでエボラ流行による子どもとコミュニティに関する調査を実施、このたび、暫定調査結果が明らかになりました。

(暫定調査結果原文:“A report on a Rapid Assessment (RA) of the Impact of the Ebola Outbreak on Children and their communities in the two most affected districts)

現状と喫緊の課題

  1. 誤った知識や情報という障壁
    継続的に啓発活動が続けられているにも関わらず、人々のエボラに関する情報と知識が不足している。90%程度の高い致死率や“出血がエボラの症状である”という、初期に広まった不正確なエボラに関する情報により、拒絶意識が高まっている。そのようなコミュニティ内に広がっている誤った認識や行動を是正するため、現行の啓発活動やコミュニケーション戦略を変える必要がある。
  2. 111人の子どもが家族と離れ離れに
    両親あるいは保護者が死亡し、コミュニティにも見捨てられ、家族と離れ離れになっている子どもたちが増加している。このような子どもたちを支援するための食糧や住居、服、毛布などが不足。8月2日時点で、111人の子どもが家族と離れ離れに(ケネマ29人、カイラフン82人)。
  3. 活動資金・人員が不足
    離れ離れになった子どもを家族と再会させるため、家族の追跡・捜索を行っている支援団体において、活動資金や人員が不足。子どもの保護分野(特に家族の追跡・捜索活動の面)において、地方自治体や省庁はリーダーシップを十分にとれていない。
  4. 子どもの一時保護施設が必要
    ケネマとカイラフン両地域における、一時的な保護施設の設立に向け、人員の配置やインフラの整備が必要。
  5. 支援団体でも不足する知識
    ケネマとカイラフン両地域で、子どもの保護分野において活動する支援団体の間で、エボラ出血熱に関する知識が不足。コミュニティ内でのエボラに対する認識を高め、子どもたちが直面している状況に適切に対応するためには、最前線で活動するこれらの団体のスタッフに対し、エボラに関する正しい情報の普及や心のケアに関する研修が必要。
  6. 支援強化が必要
    緊急事態により効果的に対処するため、子どもの保護に関する既存の支援方法の強化が必要。

中長期的に必要とされる支援

  1. 緊急事態下での対応能力を向上させるため、地域レベルでの家族の追跡・捜索ネットワークの強化。
  2. 地域を基盤とした子どもの保護に関する既存の支援方法の強化。
  3. 特に農繁期に影響を受けた地域において、農家への食糧支援、作物の種や農具などの提供。

調査から明らかになったこと

エボラの症状や予防法が描かれたポスターを見せて啓発活動を行うスタッフ。(シエラレオネ)
© UNICEF/NYHQ2014-1375/Douglas
エボラの症状や予防法が描かれたポスターを見せて啓発活動を行うスタッフ。

シエラレオネの東部で発生しているエボラ出血熱は、社会経済活動に大きな影響を及ぼし、子どもたちに直接的・間接的な影響をもたらしている。

  1. 家族を失った、もしくは離れ離れになった子どもたち
    • 主に両親や保護者がエボラにより死亡し、コミュニティに見捨てられたことで保護者と離れ離れになった子どもたちが増加
    • 社会による子どもの養育放棄が頻発。カイラフンのソーシャルワーカーは、「地域の人たちは家のドアを閉め、エボラで両親を失った3人の子どもたちの面倒をみることはありませんでした。助けを求め、人道支援団体を訪れるまで、数日間食べ物が何もない状態で過ごしていました」と語った。
    • エボラにより両親や保護者と離れ離れになっている子どもたちは、さまざまな問題に直面。ケアや支援、食糧、住居、衣服の不足や、差別、偏見、学校の退学、大切な人を失ったことによるトラウマなど。
  2. 子どもの保護
    • 子どもを保護するためのさまざまな支援が実施されているが、今後も下記のような懸念が残ると考えられている
      • 家族と離れ離れになる
      • 虐待や搾取、児童労働
      • 偏見や差別
      • 児童婚や性的虐待、10代での妊娠
      • 食糧や住居、衣料品などの基本的なニーズの欠如
    • 子どもの保護のために必要な支援
      • 家族の追跡・捜索活動の強化
      • エボラに感染している子どもたちに対するコミュニティの認識の変化をもたらすための啓発活動
      • 家族と離れ離れになった子どもたちへの学用品や学費の援助など、教育の支援、子どもを支援するための地域の団体の訓練と支援
      • 保護者を失った子どもへ食糧や服、毛布、衣料品などの配布
  3. 児童労働
    • 子どもたちの労働活動に関する質問のなかで、68%(25人中17人)が子どもの労働環境に変化があり、家族の生活を支えるために搾取的な仕事や危険な仕事に就くようになったと答えた。
    • 子どもたちの労働環境が変化したと回答したすべての人が、児童労働により、退学、健康被害、精神的な影響、発育不全、10代での妊娠などの影響が出る可能性もあると回答。
  4. 家庭環境
    • 25人中17人は子どもたちがエボラ感染者の看病を行っていると回答。5人は、かつては看病をしていたが、エボラに対する認識が高まり、現在は行っていないと回答。3人はそのような事例は確認していないと回答。
  5. 精神面への影響
    • エボラの感染が確認されているコミュニティでは、友人や家族、地域の住民などとの人間関係が希薄化している。エボラは主に人との接触によって感染するという事実が、コミュニティの社会的一体性を低下させていると思われる。
    • 地域全体で子どもの面倒を見るなど、かつて行われていた伝統的な良い習慣も失われつつあり、エボラで両親や保護者を失った子どもたちは、コミュニティにも見捨てられることがある。子どもの社会福祉委員や母親クラブなど、地域で子どもを保護する仕組みが機能しておらず、子どもを暴力や搾取、虐待から守るための保護的な環境のために極めて重要な機能が低下。
    • 両親は子どもを他の人たちと接触させるのをためらっており、友達と遊ぶことができず、子どもたちの間で孤立が高まっている。大切な人の死を目撃したり耳にしたりすることで、極度の恐怖を感じている子どもたちも多い。
    • ケネマとカイラフン両地域で、心のケアを実施できるスタッフの数と能力が不足。
  6. 経済的な影響
    • エボラの感染が確認されている地域では、食糧調達が困難になっている。調査が行われたコミュニティの90%は農家で、主にキャッサバや主食の米、ココアやコーヒーなどを栽培。1年の大半、特に雨季には自給自足の生活ができなくなる可能性も。
    • エボラの感染拡大により、全ての経済活動は停止され、感染拡大を防止するため、公共の市場や公共的な集会の実施を制限。地域や国当局がエボラウイルスに感染した人の移動を最小限にするため、検問を設置し、移動制限などの対応策を講じた。
    • 移動制限や公共市場の制限により、食料品が不足、食糧価格が上昇。その結果、食糧調達がより困難に。
    • 以前から農村部の経済状況は貧しいものだったが、エボラの感染拡大により経済活動が停止していることで、さらに主食などの食糧調達が難しくなっている。
    • 特に感染拡大が最も深刻な地域で、農業活動が妨げられている。シエラレオネの農業シーズンの真っただ中である5月と6月に感染が拡大。これにより、これらのほとんどの地域で中・長期的に深刻な食糧不足に直面する危険性がある。
  7. 保健
    • 医療従事者の死亡相次ぐ
      保健ケア施設で人員が不足。1つ目の原因は、一次対応にあたる地域の診療所の医療従事者間で感染が拡大し、高い確率で死者が出ていること。8月11日現在、エボラへの感染が確認された医療従事者は50人、うち26人が死亡。2つ目の原因は、死亡した同僚と同じ運命に直面するのではないかという恐怖から、職場を離れる医療従事者がいること。
    • 情報や医療品不足も一因
      医療従事者での高い致死率の背景には、エボラに対応するための適切な技術や情報の不足、感染を防ぐ医療用手袋などの医療用品不足などがある。
    • 保健施設を避ける住民
      住民はエボラ出血熱と診断されることを恐れ、エボラ以外の日常的な治療ですら、保健ケア施設へ行くのを避けている。
    • 医療従事者への誤解
      医療従事者が住民を殺害し、儀式に人間の身体を使用していると信じている人もおり、保健ケア施設に対する誤解や誤情報から保健施設などへの不信が生じている。
    • 誤解に基づく妨害行動
      カイラフンでは保健施設への放火や攻撃があり、ケネマでは政府が運営する病院へ若者たちが投石を行った。
  8. 教育
    • 子どもたちへの感染拡大を阻止するため、教育当局はカイラフンの全ての学校を休校にすることを発表。カイラフンでは3学期の終わりを前にして授業が中止に。休校が始まる以前から、感染を恐れ、子どもたちを学校に通わせない親もいた。休校により、初等教育と中等教育を受ける推定2,000人の子どもへ影響が出る。
    • ケネマでは、通常休みの期間に行われている試験準備のための授業が中止。
  9. * * *

    ユニセフ・シエラレオネ事務所Facebookページからのご紹介です。 エボラ出血熱から回復した2歳のイシャタちゃん。しかし、残念ながら、両親はエボラ出血熱で亡くなりました。エボラ緊急オペレーションセンターでの1枚(8月27日投稿)。イシャタちゃんに声をかけているのは、ユニセフ・シエラレオネ事務所代表のローランド・モナーシュ。

    エボラ緊急オペレーションセンターでイシャタちゃんに声をかけるユニセフ・シエラレオネ事務所代表のローランド・モナーシュ。
    © UNICEF Sierra Leone/2014
    エボラ緊急オペレーションセンターでイシャタちゃんに声をかけるユニセフ・シエラレオネ事務所代表のローランド・モナーシュ。
    イシャタちゃんとジャミナタさん。
    © UNICEF Sierra Leone/2014
    イシャタちゃんとジャミナタさん。

    その数日後、イシャタちゃんに新しい家族が見つかりました。イシャタちゃんが治療を受けていたセンターでボランティアとして働くジャミナタさんが、イシャタちゃんを二人の娘と一緒に育てることを決意、母親となりました。「エボラ出血熱から回復したほど強いイシャタです。大きくなったら、お医者さんになってほしいです」と、満面の笑顔で語るジャミナタさん。イシャタちゃんのこれからの健やかな成長を願わずにいられません(8月31日投稿)。

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