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公益財団法人日本ユニセフ協会
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エボラ出血熱緊急募金 第37報
リベリアからの報告
エボラに苦しむ子どもたち
約3,700人が親を失い孤児に

【2014年10月17日 ニューヨーク発】

エボラ治療センターへの搬送を待つ人々。(シエラレオネ)
© UNICEF/NYHQ2014-1829/Bindra
エボラ治療センターへの搬送を待つ人々。(シエラレオネ)

10月17日、ユニセフ本部の危機広報チーフで5週間のリベリア滞在を終えたサラ・クロウが、ニューヨークでの記者会見で行いました。UN News Service による記事を、日本ユニセフ協会の翻訳・要約でご紹介します。

* * *

10月17日、国連はリベリアとシエラレオネで、エボラから回復して免疫を得た人たちがエボラに感染または感染の疑いがある子どものケアをできるよう、研修を受けていることを発表しました。

エボラから回復した人は、「一時ケアセンター」に身を寄せている子どもたちに愛情を持ったケアを行うことができます。

ユニセフ本部の危機広報チーフで5週間のリベリア滞在を終えたサラ・クロウは、ニューヨークで開かれた記者会見で「これまで人類が経験したことのない事態です。感染を恐れるあまり、人を思う気持ちが損なわれています」と述べました。最も感染が広がっているリベリア、シエラレオネ、ギニアでは、感染拡大を食い止めるため、懸命の活動が続いています。

クロウ危機広報チーフは発表の冒頭、自身の体温を公表し、集まった記者に消毒用ジェルを見せながら、「エボラ出血熱は生活のあらゆる面に大きな影響を及ぼし、生活そのもの、また亡くなり方までも変えてしまっています」と述べました。

孤児となる子どもたち

町でエボラの啓発活動を行うスタッフ。(シエラレオネ)
© UNICEF/NYHQ2014-1815/Bindra
町でエボラの啓発活動を行うスタッフ。(シエラレオネ)

国連は、西アフリカ地域でエボラ出血熱により、約3,700人の子どもたちが親を失って孤児となったと推計。うち600人は、親族などに引き取られたとみられます。

ユニセフは、エボラで親を亡くした子どもたちの様子も伝えました。4歳のアマドゥくんは朝4時半に目を覚まし、姉のメアリーちゃんに母親の居場所を尋ねているといいます。約2カ月前、ケネマのエボラ治療ユニットから退院してから、ほぼ毎日同じ質問を繰り返しています。

15歳のメアリーちゃんは「どう説明したらいいかわかりません。自分自身でさえほとんど理解できていない状況を、4歳の弟に説明するなんて・・・私にはできません」と語りました。

姉弟の母親は近所で具合が悪くなった女性の看病をした後、体調を崩しました。マラリアかと思っていましたが、体調は急激に悪化しました。

「救急車を呼ぶと、ケネマの公立病院に連れて行かれました。それが母を見た最後のときでした」と語るメアリーちゃん。

拒絶や偏見

防護服を着てエボラ患者の遺体を運ぶスタッフ。(リベリア)
© UNICEF/NYHQ2014-1788/Kesner
防護服を着てエボラ患者の遺体を運ぶスタッフ。(リベリア)

西アフリカでは、特にエボラから回復した子どもたちは、コミュニティや親戚から汚名の烙印を押されたり、拒絶されています。

ユニセフが最近、シエラレオネで1,400世帯を対象に行った調査では、96%の世帯が、エボラの感染の疑いがある人や感染が確認された人に対する、何らかの差別的な態度があったと報告しており、76%の世帯が、エボラに感染した人がたとえ回復したとしても、コミュニティに戻ってくるのを歓迎しないことが明らかになりました。

クロウ危機広報チーフは「一時ケアセンターにいた子どもたちは、敬遠されることが多くあります」と、木の下で暮らしていた兄弟たちを思い出して語りました。兄弟たちの育ての親が亡くなった後、子どもたちが近くで生活をしていることに不安を感じた住民たちが、兄弟を村から追い出したといいます。

一方、エボラから回復し、家族の下へ戻った人の話も紹介しました。訪問先であったアン・マリーちゃんは、そのうちのひとりです。「回復した人は、回復証明書をもらいます。エボラに感染した人にとっては、新しい出生登録証明書のようなものといえます」と語りながら、証明書を手にした家族の写真を見せました。

エボラから回復した人がケアをする側に

シエラレオネでは今週、エボラから回復した25人が会議に参加し、自身の感染経験の共有や精神面への影響への対処法の学習、感染した地域の人々への支援について話し合いました。この会議は、この会議はユニセフなどの支援を受け、シエラレオネ社会福祉・ジェンダー・子ども省が実施しました。

ユニセフ・シエラレオネ事務所代表のローランド・モナーシュは「エボラ対応にあたる両親や保健スタッフ、我々の多くが直面している大きな問題は、エボラに感染している、またはエボラの影響を受けている子どもたちの世話をする人たちを感染リスクにさらすことなく、いかに子どもたちの面倒を見るかということです。こうした問題に取り組むひとつの斬新な方法として、エボラから回復し、免疫を得た人たちが子どもたちのケアにあたることを考えています。そうすれば、こうした子どもたちが必要としている愛情やケア、関心を与えることができると考えています」と述べました。

クロウ危機広報チーフは、ウイルスの潜伏期間である21日間を過ごす隔離センターを、コミュニティが設置していることを報告。なかには、学校が活用されているケースもあります。

経験したことのない状況

リベリアでは、エボラ感染を受けて学校が休校となっており、ユニセフとパートナー団体は、学業が中断されている子どもたちのために、ラジオを使った緊急学習の試験的な運用を開始します。

またユニセフは、水と衛生分野の支援活動も実施。これまでに、デンマーク・コペンハーゲンの物資供給センターから、記録的な量の消毒用塩素を空輸しています。感染国の政府ならびに人道支援機関は、今後6カ月のエボラ対策のために9億8,780万米ドルの資金を国際社会に要請してり、ユニセフはこのうち、2億米ドルの資金の提供を呼びかけています。

「エボラ出血熱に屈するわけにはいきません」と、人道支援にあたる団体を励ましながら、クロウ危機広報チーフが述べました。

一方で、国際社会は完全に「これまでに経験したことのない状況」にあるとし、十分対処できていないことを指摘しました。

世界保健機関(WHO)の10月17日の発表によると、ギニア、リベリア、シエラレオネ3カ国でのエボラ出血熱の感染者は、疑い例を含めて9,191人に上り、うち、4,546人が死亡しています。

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