公益財団法人日本ユニセフ協会
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アフリカ干ばつ緊急募金 第40報
子どもたちの命を支える命綱

【2012年1月27日 ニジェール発】

© UNICEF/2011/Niger/Coen
ニジェールのマガリア地区で、娘(生後10ヵ月)を抱きながら、集めた野草で家族の食事の準備をするアリマ・イサカさん。

収穫期の終わりを迎えたニジェール。ハリマ・イサカさんは、畑の隅で、生後10ヵ月の娘を膝に乗せて座り、天日干しした雑穀を牛車に積み込んでいる夫の姿を眺めています。今年もまた、大した収穫は期待できそうにありません。

「今年は大変な不作でした。この量では、3ヵ月ともたないでしょう。」「雨がほとんど降らなくなって、今年で3年。以前は、雨に恵まれていたんです。でも今は、家族を満足に食べさせられない状態が3年も続いています。」
ニジェール国内のほぼ全ての地域と同様、サハラ砂漠に隣接するこの乾燥地域は、もともと日照りや水不足の悩みがつきない所ではありましたが、この数年、状況はさらに悪化しています。そして今、ニジェールでは、食糧不足のために、国全体で、数百万人もの人々が、命すら左右しかねない深刻な栄養不良問題に直面しています。

このニジェールの状況は、サヘル地域の8ヵ国を襲っている干ばつや農作物の不作、食糧価格の高騰などの「食糧危機問題」の一面を表しています。ニジェールで600万人、また、マリやモーリタリア、チャドでも、それぞれ数百万にのぼる人々が、この食糧危機の影響を受けています。ブルキナファソ、セネガル、カメルーン北部、ナイジェリアの農村部も、同様の危機にさらされ、緊急事態宣言を発令した政府も少なくありません。

求められる支援

夫が牛を使って貴重な作物を倉庫に運ぶ間、イサカさんは、畑にひざまずいて、“ふるい”を手に、地面の落穂を拾っていました。

「できるだけたくさんの落穂を拾うために頑張っています。」とイサカさんは語ります。2人の子どもたちを食べさせなければなりません。しかし、次の収穫まで、少なくともあと6ヵ月はあります。食糧に関わるあらゆることが問題です。「ボールに2杯位の落穂を集めることができました。これで、家族みんなの1食分にはなるでしょう。」そう言って、イサカさんは作業を終えました。

こうした問題に直面するイサカさん一家には、間もなく、ユニセフが米国国際開発庁(USAID)や欧州委員会人道援助局(ECHO)、ニジェール政府をはじめとする多くのパートナー団体と共同で行っている緊急支援活動の一環として、現金給付型の支援が提供される予定です。

この支援は、ニジェールでも最も厳しい状況にあるマガリア地区の住民が食糧を調達できるよう、月々現金を支給するプログラムです。

お母さん方への支援

© UNICEF/2011/Niger/Coen
ニジェールのガワウナワ村で実施されている現金支給プログラムを通して、女性は、2万CFAフラン(約40米ドル)を支給されます。このお金は、最も弱い立場の家族が食糧を買うために支給されています。

生後6ヵ月-2歳未満の子どもを持つお母さん方には、すでに、毎月、栄養が強化された食糧が提供されています。しかしながら、子どもたちを養うのにこれだけでは十分ではありませんでした。
「この配給プログラムを通じて、子どもを守るために毎月食糧を配布したとしても、その食糧は、子どもたちのみならず家族全員で食べられてしまっていることに気がついたのです。」「ですから、ニジェール政府は、子どもたちへの食糧が他の家族に食べられないようにするためにも、(家族の他のメンバーが必要とする食糧を得られるように)現金支給プロジェクトの実施が必要だと考えたのです。」ニジェール保健省のハミド・ディオウッロ地域担当部長はこう話しました。

この現金支給プログラムは、2011年9月、マガリア地域の最も弱い立場の2万世帯以上を対象にスタートしました。全ての母親は、3ヶ月間、月に2万CFA(セーファーフラン;約40米ドル)を受け取ります。最も貧しく最も厳しい立場の人々に手を差し延べるべく、ユニセフのパートナー団体が、コミュニティのリーダーと密接に連携しながら現金支給の管理・運営を行っています。

「お母さん方は、子どもたちを育て、養うために苦心し続けています。」「ユニセフは、こうした女性たちの支援を強化したいと考えています。」ユニセフ現地事務所のヘレネ・コウヤテ専門官はこう話しました。

命綱

現金支給が行われた次の日、イサカさんは、すこし落ち着いた様子でした。 「このお金を受け取る前は、家族や子どもたちを食べさせるために、藪の中に出かけて行かなくてはなりませんでした。」「運がよければ、わずかな雑穀のスープの中に野草を入れて食べることができました。でも、ひどい空腹のまま眠りにつかなければならないことに変りませんでしたが。」昼食の準備をしながらイサカさんはこう話しました。

ユニセフは、2012年、ニジェールの他の地域でもこのプログラムを拡大できるよう、国際社会に支援を求めています。こうした支援は、イサカさん一家のような人々に恩恵を与えるだけでなく、食糧危機に対する政府の能力も強化するのです。

「このプロジェクトの実現に関わった全てのパートナーは、どこでも、この経験を生かすことができます。」(ディオウッロ地域担当部長)

しかしながら、慢性的な栄養不良は、食糧不足だけが問題なのではありません。貧しい食事習慣や安全な飲料水が十分に手に入らないこと、また保健サービスも十分でないことも要因となっています。これは、「食の権利に関する国連特別報告者」のオリビエ・デシューター氏も指摘していることです。長期的な成果を上げるためには、慢性的な栄養不良だけでなく、貧困や不公平を引き起こしている原因に対処しなければなりません。同時に、現金支給プログラムは、イサカさん一家をはじめとする最も支援の必要な人々に手を差し延べているのです。「このプロジェクトは、私たちの命綱なのです。」(イサカさん)