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アフリカ干ばつ緊急募金 第55報
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© UNICEF Mauritania/2012/Fassala |
ムベラ避難キャンプで、3歳のハビビくんと祖母・ファギさんに挨拶するユニセフ・モーリタニア事務所のルシア・エルミ所長 (モーリタニア) |
ナンニ・ウエレドゥ・ファギさんと3歳の孫のハビビくんにとって、故郷マリのレレから隣国のモーリタニアの国境近くの町ファサラまでの道のりは、長く険しいものでした。やっとの思いでモーリタニアに到着したときには、ハビビくんは下痢と重度の栄養不良のせいで衰弱しきっていました。
しかし、ファギさん一家は、マリ北部での紛争によって避難を余儀なくされた家族のほんの一部にすぎません。マリ北部での銃撃戦が激化し、地元の人々はみな避難せざるを得なくなったのです。この避難民たちの危機は、サヘル地域で広がりを見せている栄養危機と重なり、二重苦となっています。特に、マリからの避難民が押し寄せるモーリタニア南部の状況は、厳しいものです。
この二重苦は、マリとモーリタニア両国からの人々の流出に拍車を駆けました。マリの人々は北部での紛争から逃れるため、一方、モーリタニアの人々は、弱った家畜の餌を求めて、南部からマリへと移動するのです。
© UNICEF Mauritania/2012/Fassala |
飲料水の配付が行われているファサラ避難キャンプ(モーリタニア) |
ファギさん一家がファサラに到着する直前、モーリタニア政府は、国連の協力を得て、マリからの避難民のための避難キャンプを設置しました。ハビビくんが治療を受けることができたのも、このおかげです。
「ある日の夕暮れ、村が襲撃された時、大勢の人々と一緒に古いトラックに乗り込んで逃げました。そして、寒さと恐怖に震えながら恐ろしい一夜を過ごしたのです。」とファギさんは語ります。「その12時間後、私たちはファサラの難民登録センターの前にできた行列に並んでいました。ひどい咳と下痢のために、ハビビはすでに弱りきっていました。」
ユニセフは、モーリタニア政府や国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)をはじめとするパートナー団体協力して、水や衛生、栄養といった分野での支援活動を直ぐに始めました。
ハビビくんには栄養補助食品が提供され、その回復状態は、(専門スタッフによって)厳重に監視されました。貧血と極度のストレスに悩まされていた祖母のファギさんも、カウンセリングを受けました。
「適切で早急な処置がなかったら、ハビビくんは亡くなっていたかもしれません。」こう話すのは、ユニセフの栄養専門家アーメッド・ウルドゥ・シダーメッド・アイダ医師です。「初めてハビビくんに会った時、彼は非常に深刻な状態でした。しかし、集中的な治療とケアのおかげで、彼は順調に回復し始めています。」
© UNICEF Mauritania/2012/Fassala |
ファサラ避難キャンプに設置された貯水タンクで遊ぶ子ども(モーリタニア) |
数週間にわたり、何千人もの避難民が国境を越えてモーリタニアに流入してきたため、新しくムベラにも避難キャンプが設置されました。ハビビくんと祖母・ファギさんはじめ、40,000人あまりの人々が、ファサラからムベラの新しいキャンプに移動しました。
ユニセフは、水と衛生、保健、栄養、広報・啓発といった分野にまたがり、包括的かつ統合された支援を展開しています。しかし、首都ヌアクショットから避難キャンプまで支援物資を運ぶには、3日もかかります。ほとんどの場合、道路が整備されていない1,500kmの砂漠地帯を越えなければならないため、(物資の輸送は)厳しく、時間のかかる作業なのです。
モーリタニア国内には、この多角的な危機に立ち向かうだけの準備が備わっていません。難民だけでなく、こうした難民を受け入れているコミュニティ自体が受けている干ばつと食糧不足問題にも対処しなければならず、非常に困難な状況にあります。
この現状に対して、ユニセフは、パートナー団体と共に、協調して支援を展開すること、さらなる悪化を防ぐこと、将来起こり得る危機に備えて現地の人々の復興力を高めるべく活動しています。
「ハビビくんは、ユニセフの人道支援活動の成果を現した象徴的な存在です。私たちの活力となっているのは、命を守る使命感です。」 避難キャンプの視察に訪れたユニセフ・モーリタニア事務所のルシア・エルミ所長は、こう話しました。
ユニセフは、これらふたつの危機に対する支援を強化していますが、そのためにはさらなる資金と協力体制が必要です。追加の資金さえあれば、ユニセフは、パートナー団体と協力して、避難キャンプに暮らす何千人もの子どもたちが援助を受け、こうした難民を受け入れる自国の人々も日常生活に必要不可欠なサービスを享受し、そして、より良い未来に希望を持てるようになるのです。