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アフリカ干ばつ緊急募金 第42報
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© UNICEF Niger 2012/Tidey |
チューブを通して、栄養補給用のミルクをもらうバシラちゃん(4歳)。 |
4歳になるバシラちゃんは、病院のベッドに静かに横たわっています。重度の栄養不良を治療するため、鼻にはチューブが通され、栄養補給用ミルクがその中を流れています。バシラちゃんがマラリアにかかり、こん睡状態に陥ったとき、国境沿いの街マラディのはずれにある栄養治療センターにこの子を連れてきたのは母親でした。12日前のことです。
今、バシラちゃんはこん睡状態を脱し、食事は摂れないものの、徐々に元気を取り戻しつつあります。医師と、保健関係者を手助けする地元のNGOであるFORSANIの保健員は、彼女が元気になると期待しています。
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鼻から栄養を摂っている娘のために、チューブを持つ母親。チューブの中は栄養補給用のミルク。 |
バシラちゃんは、これから、ニジェールの子どもたちが遭遇するであろう事態を予見させるケースとなっています。アフリカの西部・中央部を占めるサヘル地域の広い範囲を襲っている、干ばつ、収穫不足、食料の高騰は、推計100万人の子どもたちを重度の栄養不良の危機に陥れています。そして、国連の専門家によると、この事態は今後数カ月の間に悪化すると言われています。
ニジェールは、2005年と2010年にも同様の危機を経験してきました。今期の収穫は、全国的に、1世帯が必要とする年間ニーズの14%しか満たすことができません。全人口の35%を占める少なくとも540万人(うち半数以上が子ども)が、食料不足に直面すると予想されているのです。ニジェールは以前から慢性の栄養不良に苦しめられ、今後、干ばつ、収穫不足のせいで食料不足が起きた場合は、人口の多くが、重度の急性栄養不良に陥る危険性があります。
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9カ月になる妹の面倒をみるタヒナさん(9歳)。ユニセフは、栄養不良に苦しむ子どもたちのために、栄養補助食品を提供している。 |
この状況は、栄養不良と関係がある様々な健康障害を受けやすい子どもたち——特に5歳未満の子どもたち——にとっては憂慮すべき事態です。ユニセフ、ならびにニジェールで人道支援を行っているパートナー機関は、今後、39万3,000人の子どもたちが重度の急性栄養不良で治療を受けなければならない事態になるだろうと推定しています。また、栄養不良により、下痢性疾患、皮膚疾患、呼吸器疾患のような日和見疾患にかかる可能性も大きいと見込んでいます。
作物の収穫が少なかったこと、また、それにより食糧への需要が高まったことで、食料の値段も高騰しています。このため、さらに何千もの家族が危機に陥っています。100キロのミレ(雑穀)は、一般市場価格の2倍に跳ね上がり、豆の値段も60%以上高騰しています。マラディ市場で取引をしている人たちによると、その価格は、2010年6月(その年の食糧危機のピーク)時点の価格並みとなっており、この傾向を見ていると、事態はさらに悪化する見込みです。総人口の59.5%が貧困ライン以下の生活をしているニジェール。家族で必要としている量さえ収穫できなかった世帯では、不足分の食料を買うことさえできないでいます。家畜がいても、事態は決して良くありません。なぜならば、家畜用のエサも1000万トン不足しており、価格は高騰し続けそうだからです。
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アンザが入った器。ほかに食べるものがないので、本来は家畜用の食べ物であるこのアンザを人々は口にしている。 |
食料となるものを栽培することも、買うこともできない・・・そのような状態は、ニジェールのティラベリ県にあるワマ村にとって、大変な事態です。家族は、ドゥラやアンザと呼ばれる、地元の野草を食べて生きながらえている状態です。夫がなく、3人の子持ちである30歳になるバルキッサ・ヘルーラさんは次のように証言します。「年の初めからドゥラを食べなければならないなんて、初めてのことだわ。子どもたちはほかの物が欲しいとおねだりするけれど、ほかにあげるものがないんです。こんなに深刻な事態になったのは2005年にも、2010年にもなかったわ」と。ユニセフのサニ・サヤディ栄養担当官も、同様のことを口にしました。「人々がドゥラやアンザといった草を食べ始めたときには、かなり切迫した状況だと言っていいでしょう。食料確保の面では非常に悪い徴候だといえます」
昨年の8月という早い時期から、ニジェール政府と人道支援関係者たちは、2012年に食料危機と栄養危機が来ること、そして2月〜3月には飢餓が始まるだろうと予測していました。すでにその危機は到来しており、最悪の事態を避けるには、人道支援関係者たちは、今こそ立ち上がって対処し、人命を繋ぎ止めるため、危機的な状況にある地域の人々により多くの物資とサービスを提供すべきです。
これは大きな挑戦であり、残された時間はほとんどありません。しかし、可能なはずです。
2010年の危機の後、ニジェール政府は、ユニセフとそのほかの人道支援機関の協力のもと、国の保健ケア制度の強化を優先して図り、今回のような栄養不良の増加といった困難な課題にも、以前よりうまく対処できるようになりました。食料危機の可能性が高まってはいるものの、現場にいる医師、看護師、政府と人道支援関係者たちは、今回の危機が災害に拡大する前に、これを食い止めることができると信じています。しかし、それは、必要な財源と物資が確保されて、という条件のもとなのです。
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重度の急性栄養不良で入院しているタシゥーちゃん(2歳)。ユニセフが支援する栄養補給センターで治療を受けている。 |
ユニセフは、重度の急性栄養不良を治療するための栄養補給センターを拡充し、全国50の病院にいる、重度の栄養不良に苦しむ子どもたちを治療するための物資や機器の約95%を提供しています。ユニセフは、また、日和見疾患の拡大を防ぐために、衛生的な水や衛生施設(トイレ)を利用できるようにし、移住してきた女性や子どもへの支援を行い、基礎的な衛生・保健・栄養に関する慣習を母子が実行できるよう、コミュニティを中心とした事業を支援しています。
ユニセフは、栄養不良の危機にさらされているニジェールの子どもたちのニーズに応え続けるために、2,570万米ドルの支援を必要としています。ユニセフとパートナー機関は、何十万もの子どもたちの命を脅かしているこの危機的な事態に対処するために、国際社会が、より一層の努力をし、必要なあらゆる手段をとるよう求めています。まだ手遅れにはなっていませんが、今、まさに行動を起こす必要があります。