公益財団法人日本ユニセフ協会
HOME > 世界の子どもたち > 緊急支援情報 > アフリカ干ばつ緊急募金


アフリカ干ばつ緊急募金 第70報
マリ:負のサイクルを断ち切るために

【2012年5月22日 マリ発】

© UNICEF Mali/2012/Coen
マリのモプティでユニセフの支援を受けて運営されている医療施設に祖母に連れて来られたビントウ・トラオレちゃん(1歳6ヵ月)。下痢性疾患で、重度の急性栄養不良と診断された。

彼女を見ても、みなさんはそう思わないかもしれませんが、ビントウ・トラオレちゃんは、今、1歳6ヵ月です。同じ年頃の子どもたちに比べてとても小さいビントウちゃん。彼女は、順調に成長するために必要な十分な栄養を摂ることができなかったのです。

ビントウちゃんは、生きるために闘かっています。この国を襲っている深刻な食糧不足は、ビントウちゃんだけでなく、同じような環境に置かれている多くの子どもたちを苦しめています。ビントウちゃんの母親は、ビントウちゃんと祖母のトラオレさんを残して、首都バマコに移り住みました。

長引く干ばつで、アフリカのサヘル地域は破滅的な打撃を受けています。農作物の不作に加え、この地域で‘飢えの季節’と呼ばれる、平年でも各家庭の食糧備蓄が底を付く季節に入っています。食べ物は市場で手に入れることも可能ですが、トラオレさんはじめ、とても貧しい人々には、高価過ぎてとても手が届かないのです。

限界を遥かに超えた状態

© UNICEF Mali/2012/Coen
マリ・モプティの医療施設ベッドに座るビントウちゃん。彼女は、重度の栄養不良から回復しつつあります。隣は祖母。

トラオレさんがマリのモプティ病院にビントウちゃんを連れて行った時、ビントウちゃんは非常に衰弱していて、頭を上げることさえできませんでした。

「ここに来たとき、ビントウは真っすぐ腰掛けることさえできませんでした」「咳が止まらず、下痢が続いていました」(トラオレさん)

物を口にすることもできず衰弱しきったビントウちゃんは、命の危険もある重度の栄養不良と診断されました。ビントウちゃんは、すぐにユニセフが提供している治療用ミルクを、1日に8回処方されました。

こうした状況にあるのは、ビントウちゃん一人だけではありません。マリ全土で、何千人もの子どもたちが、彼女と同じように厳しい立場に立たされています。そもそも収穫が非常に少なかった食物の蓄えは、すぐに底を付きました。ビントウちゃんは、武力紛争が続いているため無秩序状態になっている地域と接しているモプティ近郊で暮らしていました。この地域からは、既に、何十万人もの人々が住む場所を追われています。また、食糧価格も急激な上昇を続けていて、今の状況は、貧しい人々が耐えられる限界を遥かに超えていることは一目瞭然です。

ユニセフは、今年1年で、マリの国民のうち350万人以上が、食糧支援を必要になる状態に陥ると推測しています。その半数は子どもたちです。また、その子どもたちのうち、17万5,000人から22万人の5歳未満の子どもたちが、重度の急性栄養不良の危険にさらされるものと見られています。マリの5歳未満児の急性栄養不良率は10パーセントに達し、国連の定める警戒レベルを上回っています。

最も弱い立場の子どもたちへの支援

こうした危機的な状況の中で、特に厳しい立場に置かれているのは子どもたちです。子どもたちは、おとなよりも食糧不足の影響を受けやすく、すぐに栄養不良に陥ってしまいます。そして、栄養不良の子どもたちは、他の病気にも非常に罹患しやすくなります。そうして病気になった子どもたちは、さらに衰弱し、生命力が奪われてしまうのです。多くの子どもたちが、こうした、悲劇をもたらす負のスパイラルに巻き込まれているのです。

ユニセフは、こうした負のスパイラルを断ち切る切るために、地域の保健員への研修などの保健省の活動を支援しています。こうした保健員の一人が、ベイコ・トラオレさんです(前述のトラオレさんの家族ではありません)。

トラオレさんは、地域の子どもたちの栄養状態を確認するため、日々、村から村へ飛び回っています。栄養不良の兆候の見分け方を親に教え、早目の処置が子どもたちの命を救うと伝えて回っています。

「人々と保健センターを繋ぐのが、私たちの役目です。」「多くの人々は、栄養不良問題に直面しても、多額の費用が掛かると思い込んで、子どもたちを保健センターに連れて行きません。ですから、私が説明して回っているのです。」(トラオレさん)

ビントウちゃんは、今、回復に向かっています。

「ビントウが初めてここに来たときは、座ることも、頭を真っすぐに立てていることもできませんでした」「でも今は、ビントウはちゃんと座って、頭を真っすぐにして食べることができています。神様のお陰です」 ビントウちゃんのおばあさんは、こう話しました。