|
アフリカ干ばつ緊急募金 第75報
|
© UNICEF Mauritania/2012 |
ハビビちゃん(2歳)は、マリから避難を余儀なくされました。左は、重度の急性栄養不良と診断された2012年2月の様子。右は、モーリタニアで2ヵ月治療を受け回復したハビビちゃんの様子。 |
今年2月、ハビビちゃん(2歳)は、重度の急性栄養不良と診断され、命にかかわる非常に危険な状況でした。
ハビビちゃん一家は、マリ北部で続く武力紛争により隣国モーリタニアへの避難を余儀なくされ、ファッサラの避難民キャンプで生活していました。そこで、ユニセフ・モーリタニア事務所のアハメド・オウルド・アイダ医師の治療を受けていました。
豊富なビタミンを含むペースト状の栄養治療食をはじめとする治療用食品を使った治療を受けはじめてから2ヵ月以上が経った今、ハビビちゃんは、別人のように劇的に回復し、すっかり元気を取り戻しました。
祖母のナンニ・オウエル・ファギさんは、ハビビちゃんが元気で幸せにしていることに一安心し、ハビビちゃんが受けている支援に感謝しています。
ハビビちゃんの回復のために、多くの人々と組織や団体が、それぞれの役割を果たしました。ハビビちゃんは、この地方保健局局長が直接監督するムベラの中央保健センターで治療を受けました。ここで、栄養治療支援に関わっているボランティアスタッフの多くも、近くのキャンプで避難生活を送る人々です。ユニセフは、治療活動を指揮する医師の派遣の他、治療用食品の提供、保健スタッフの研修も実施しています。
子どもたちが栄養不良になる原因は様々です。少ない量の食事や、食事に使われる食品の種類の少なさ、そして下痢性疾患や感染症を増加させる不衛生な環境といった要因で引き起こされているのです。こうした要因は、ハビビちゃん家族が陥ったような危機的状況の中でさらに悪化するのです。
ハビビちゃん一家は、暮らしていたマリの村が襲われ、避難生活を送るようになりました。モーリタニアに辿り着くまで、凍えるほど寒い夜にも耐えてきました。旅の途中、ハビビちゃんは、咳をし始めました。すぐに呼吸器感染症を患い、重度の下痢を引き起こし始めました。栄養不良の一因となる疾患の悪循環のはじまりです。栄養不良が悪化すると、免疫システムも低下。ハビビちゃんは、さらに危険な状態に陥りました。
そして、栄養不良状態の避難民の子どもたちの回復にとって、あらゆる状況が、より困難になっています。非常に大きなストレスにさらされ、厳しい生活状況に直面し、将来も不確かです。いつ家に帰れるのか、たとえ帰ることができたとしても、そこに何があるのか(残されているのか)もわかりません。家族の他のメンバーと離れ離れになっている人々もいます。離れ離れになってしまった親やきょうだいや親戚が、今どこにいるのかも、生きているかどうかさえ分からないのです。子どもたちにも、おとなにも、心理社会的な支援を必要としている人々が少なくありません。こうしたストレスにさらされているために、ときおり、栄養不良の子どもたちを診療所に連れて行かなかったり、治療プログラムを途中で止めてしまう親もいます。
こうした複雑な状況が、ハビビちゃんを完全に回復させることをさらにずっと難しくしているのです。
ユニセフは、パートナーと共に、現在モーリタニアで避難生活を送っているマリからの避難民に対し、統合的な支援を提供しています。
ユニセフの研修を受けた保健センターで活動するボランティアの方々は、栄養不良の疑いのある子どもたちを捜し、家族と話したり、子どもたちの治療を続けるよう促したりと、毎日、避難民キャンプの家庭を訪問しています。
ユニセフは、また、仮設学校用テントをこれまでに10基設置。既に、約3,000人の初等教育年齢の子どもたちがこのテントの学校で教育を受けています。ユニセフでは、日常の感覚を取り戻し、生活のリズムを整え、子どもたちに安全な環境を提供するこうした仮設学校を、さらに4基設置する準備を進めています。
また、水と衛生分野での支援活動によって、安全な飲料水とトイレへのアクセスが改善され、病気の発症率も減ってきています。
しかしながら、マリから避難を余儀なくされ、現在モーリタニアに暮らしている避難民は6万5,000人を超えています。ユニセフは、ハビビちゃんのような支援を緊急に必要としている子どもたちのために、支援を拡大しなければなりません。