公益財団法人日本ユニセフ協会
HOME > 世界の子どもたち > 緊急支援情報 > アフリカ干ばつ緊急募金


アフリカ干ばつ緊急募金 第62報
ユニセフ事務局次長ニジェールを視察 迅速な行動を訴える

【2012年4月13日 ニジェール発】

© UNICEF Niger/2012/Djibo
ユニセフのヨカ・ブラント事務局次長に成功事例を話すニジェール・コルイア村の女性たち。完全母乳育児や改善された衛生設備(トイレ)といった慣習を通して栄養不良から子どもたちを守った。

ニジェールを訪問しているユニセフのヨカ・ブラント事務局次長は、サヘル全域で重度の急性栄養不良により命の危険にさらされている100万人以上の子どもたちを守るため、さらなる緊急支援を訴えました。ニジェールは、今年、重度の急性栄養不良により治療が必要な5歳未満児の数が、39万4,000人にも上ると推定されています。

「2010年の危機の経験を生かし、この状況に対応するべく、より入念な準備を行っています。既に確立している栄養治療センターの強固なネットワークが機能し、救命活動に繋がっています。現在、こうした支援を拡大するために、更なる資金と追加の支援物資、そして現場の対応能力の強化が求められています」

「ニジェールでは、既に5歳未満児の2人にひとりが栄養不良に苦しんでいます。この状態で、たとえわずかでもさらなる試練が降りかかれば、大惨事を招く可能性があります。‘lean’の時期と呼ばれる、収穫高が減り、各家庭の食糧備蓄が底を付く時期の到来が、今年は例年より早く、人々の状況はさらに逼迫しています。この不安定な状況によって、さらに多くの子どもたちが重度の急性栄養不良に陥ることが懸念されているのです。また、すでに衰弱しているこうした子どもたちは、コレラやマラリア、下痢性疾患の脅威にもさらされています」

ユニセフは、パートナーと共に、保健センターや栄養治療センターへの支援と、救命支援物資の輸送を強化することによって、益々増大しているニーズに対応するべく活動を続けています。こうした活動には、すぐに口にできる栄養治療食や医薬品、その他の必須支援物資の備蓄と配布、保健センターの能力強化・運営の監視も含まれています。

ニジェールで活動している人道支援団体は合同アピールを発表。ニジェールで命を守る支援活動に必要な資金として、2億2,900万米ドルの資金を求めています。ユニセフは、パートナーと共に、国際社会に対し、この危機の影響を受けている子どもと女性たちの命を守るため、あらゆる手段を講じて取り組みを強化するよう訴えています。

危機の中の希望

© UNICEF Niger/2012/Djibo
重度の急性栄養不良や合併症に苦シム5歳未満児の治療を行っている二ジェールのマラディ地域病院で娘のザヒラちゃんを抱いて座るハリマさん。ザヒラちゃんは治療を受け、回復に向かっている。

ブラント事務局次長は、干ばつや不作、食糧価格の高騰、政情不安といった様々な問題に直面しているニジェールを視察。ニジェールは、総人口の35パーセント近くにあたる500万人以上が食糧危機に苦しむことになると懸念されています。

ブラント事務局長は、ニジェール東部のマラディ地域病院で、重度の急性栄養不良で治療を受けているザヒラちゃん(2歳)に出会いました。

「娘は衰弱していて、食べるのを止めてしまったんです。身体にも変化が起き始めていました」サヒラちゃんの母親のハリマさんは、こう話しました。ハリマさんはサヒラちゃんのほかの4人の子どもたちを近所の人に預け、サヒラちゃんを病院に連れてきていました。

この7日間、ザヒラちゃんは集中治療を受け続け、すぐに口にできる栄養治療食を処方されました。現在、ザヒラちゃんは回復に向かっています。「娘が回復しているのでとても嬉しいです」「ザヒラの容態は深刻で、とても心配していました。みなさんの治療とケアのおかげで、ザヒラは回復しています。娘は生き延びることができました」

負のサイクルを断ち切る

© UNICEF Niger/2012/Djibo
ユニセフが支援しているニジェールにある治療用の給食センターで、定期健診を受け、体重を量られている子ども。

この危機の影響を受けているニジェールや同様に苦しむその他の国々のコミュニティは、わずか2年前におこった前回の危機から、まだ完全に立ち直っていません。人々は、家畜を売ったり、借金をしたり、毎日の食事の量や質を落としながら食糧危機に対処しているのです。

負のサイクルを断ち切り、将来の災害等に備える回復力を強化するため、ユニセフは、パートナーと共に、二ジェールの栄養不良を防ぎ、また根本の問題を解決するための長期的な支援を行っています。こうしたプログラムには、保健、水と衛生、教育、社会的な保護プログラム、また、効果的な子どものケアを促進するための予防対策などを包括的に強化するための政府やコミュニティへのサポートも含まれています。

「効果的な家庭のケアを取り入れていくために、コミュニティや各家庭の後押しをしています」「コライア村に暮らすお母さん方は、母乳育児や定期予防接種の実施、また手洗いや適切な衛生習慣を身につけ始めてから栄養不良に苦しむ子どもがいなくなったと誇らしげに話してくれました」

更なる困難

ニジェールの食糧危機と栄養危機への対応は、様々な困難に直面しています。サヘル地域の政情不安は、栄養危機を悪化させ、アクセスをより難しくしています。マリ北部の武力紛争によって避難を余儀なくされた約3万人もの避難民が、安全な場所を求めてニジェールに避難を強いられているのです。こうした人々への人道支援活動も必要な上に、ニジェールの最も栄養危機の影響を受けている人々の負担にもなっています。

ユニセフは、ニジェール政府、他国連機関、その他の人道支援組織と協力して、避難を余儀なくされた人々の緊急のニーズに対応するべく活動しています。

「受けいれているニジェールのコミュニティの方々の‘ソリダリティ(連帯)’に感銘を受けています。避難民たちを快く迎え、わずかな水や食糧を分け合っているのです」マリとニジェールの国境からおよそ100キロの位置にあるディラベリー臨時避難民キャンプを視察したブラント事務局次長は、このように述べました。

また、家を負われた人々のニーズに対応し、同じような緊急事態を防ぐための備えを強化しながら、この危機に対応しているニジェール政府の責任感とリーダーシップを称賛しました。

「人々は、生きるため、そして子どもたちのためにできることを全て行っています」と、ブラント事務局長。「子どもたちに治療を受けさせるために何日間もの長旅をして保健センターにやってきたお母さん方に会いました。彼女たちは決してあきらめていません。こうした人々は、今こそわたしたちの支援を求めています」