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ユニセフ協会からのお知らせ

ユニセフ・イノチェンティ研究所 最新報告書発表
先進国における子どもの幸福度—危機に瀕する“前進”

【2013年4月10日 フィレンチェ/ブリュッセル/ダブリン/ニューヨーク発】

© UNICEF/SWIT2006-0002/Auf der Mauer

ユニセフのイノチェンティ研究所が本日発表した先進国の子どもの幸福度に関する最新の報告書によると、オランダと北欧4カ国(フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン)が、前回の報告書*同様、子どもの幸福度の評価ランキングで上位になり、南欧4カ国(ギリシャ、イタリア、ポルトガル、スペイン)がランキング下位に位置づけられました。
*ユニセフ・イノチェンティ研究所「レポートカード7—先進国における子どもの幸せ」2007年2月14日発行 PDF(1.6MB)

この度の報告書発表を受けて、国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部長 阿部彩氏は以下のように述べています。「ユニセフの調査は、子どもの貧困を、所得という側面だけではなく、生活必需品の有無、健康、教育、住宅、問題行動と、子どもの生活をより直接的かつ多角的に測っている点で、とても貴重なデータです。ほかの先進諸国と比較することにより、自分の国の子どもの状況がよりよく把握できると思います。日本のデータが、多くの項目で欠損となっているのは、非常に残念です」

レポートカード11は、先進国の子どもたちが置かれている状況を検証した研究報告書です。緊縮財政と社会的支出削減の賛否について激しい議論が続く中、レポートカード11は、今世紀最初の10年間(2000/2001-2010)に、先進国29カ国が子どもの幸福を目指し取り組んだ努力の成果を発表。国際比較から、先進国の子どもの貧困は避けられないものではなく、むしろ各国による施策の影響を受けやすいことがわかりました。またいくつかの国々は、最も弱い立場に置かれた子どもたちを守るために他の国々と比べて格段に良い成果を上げていることも分かりました。

(※日本は、今回の報告書で用いられた指標データが欠如していたため総合評価比較対象外となっています。)

「現在のように経済危機の状況にあっても、あるいは財政状態が良い時であっても、常にユニセフは子どもたちや若い人々を意思決定プロセスの中心におくよう政府やソーシャルパートナーに強く要請しています」 イノチェンティ研究所のゴードン・アレクサンダー代表はこう述べました。「政府は、今後導入が予定されている、あるいは既に導入された施策が、子どもたち自身及び子どもや青少年、若者のいる家庭に及ぼす影響や効果を、積極的に検証しなければなりません。子どもたちはあらゆる政治的プロセスにおいて声をあげる機会がないかその声を聞いてもらう機会もほとんどないのです」

ユニセフの研究報告書「レポートカード11」は、先進国の子どもの幸福度を5つの側面、物質的豊かさ(子どもの貧困)、健康と安全、教育、日常生活上のリスク、住居と環境から評価、比較分析します。

本研究では、一人当たりのGDP(国内総生産)と子どもの幸福度との間に強い関係性は見つかりませんでした。例えば、子どもの幸福度の総合評価の中で、スロベニアの順位はGDPの高いカナダよりも高く、同様にしてチェコはオーストリアよりも高く、ポルトガルは米国よりも高かったのです。また中欧・東欧とその他の先進諸国との格差は、縮小し始めていることが分かりました。 特定の指標において後退が見られる国もありますが、21世紀最初の10年の全体的な動向で見れば、先進国の子どもの幸福度は、様々な分野において確かな改善を示しています。有効なデータのあるすべての国で、乳児死亡率と“家庭の豊かさが低い”と答えた子どもの割合に減少がみられ、基礎教育以降の就学率は上昇しました。

しかしながら、ここ数年、国際比較を可能とするデータが得られない状態が続いたため(本レポートのデータのほとんどが2010年までに実施された調査結果に拠る)本報告書が取り扱うのは、欧州経済危機以前になされた各国政府の取り組みが反映されたものです。そのため、危機以降3年間の経済的苦難を経た現在、そして近い将来について、これまでの前進の延長線上に置いて見ることはできないとこの報告書は記しています。

一方で、多くの分野において、この報告書は子どもの幸福度について長期的な傾向を示し、子どもに対する長期投資がもたらした成果を表わしています。例えば、学習達成度、予防接種率、リスクを伴う問題行動の増加率などは、過去3年間の景気不況によって著しくその傾向が変わることはないでしょう。子どもの幸福度の一つの側面である日常生活上のリスクでは、全体にわたって良い兆候が見られます。調査の対象となった29カ国の11歳から15歳の子どものうち、週に最低1回は喫煙すると答えたのはわずか8%。最低2回は泥酔したことがあると答えたのは15%。10代で妊娠を経験していない女の子は99%に上ります。また約3分の2の子どもはいじめ被害にあわず、また争い事に巻き込まれていません。しかし、定期的に運動する子どもの割合は総じて低く、子どもが1日に最低1時間は運動すると答えた割合が25%を超えたのはアメリカとアイルランドのみでした。
レポートカード11は、子どもたち自身による生活満足度の評価を通じた子どもによる幸福度の主観的評価も取り上げています。子ども自身による評価によるランキングは、客観的評価によるものとほぼ同じ結果になっていますが、明らかな例外として、エストニア、ギリシャ、スペインの子どもたちによる主観的評価は客観的評価の順位よりも高くなり、他方ドイツ、ルクセンブルク、ポーランドの場合はより低い順位となりました。

ユニセフのゴードン・アレクサンダー代表は「私たちおとなは、子どもたち自身が自分たちの生活をどう見て、どう評価しているか、もっと知らなければなりません」と話します。「子どもたちにとっての問題は何なのか知らなければならないのです」「子どもの幸福度のためになされるあらゆる施策はもっと体系的になされる必要があります。子どもたちの声は、たとえとても幼い子どもの声であったとしても、政策決定に欠くことができないものです。このことは、本報告書においても過去の報告書においても繰り返し述べていることです。各国政府は、長期的な視野を持ち、そこに暮らす子どもたちの未来を守り、そうすることで各国の経済状態をよくできるような施策を講じなければなりません。欧州が経済危機にある今この時ほど、子どもの未来のための施策がここまで緊急に必要とされたことはないでしょう」

ユニセフ・イノチェンティ研究所『Report Card 11』特設ページ(英語)

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