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財団法人日本ユニセフ協会
 



シリア緊急募金 第24報
避難先の学校で教育を受け続けるために

【2013年01月08日 レバノン発】

© UNICEF Lebanon/2012/Juez
レバノンのシドンで、ユニセフが配付した学用品を受け取るシリアとレバノンの子どもたち。シリア難民の方々は、レバノンでも貧しい地域のコミュニティの中で暮らしているため、非常に厳しい立場に置かれているこの地域のレバノン人の子どもたちにも、シリア難民の子どもたちと同様の緊急支援を提供しています。

アブドラ君(6歳)は、将来の夢を聞かれると、微笑みながら‘子ども’になって、できる限りこの瞬間を楽しみたいと答えました。「愛のある人生を送りたい。そして、もっと大事なことは、誰かに愛され、大切に思っている人々に囲まれていたいってこと」

アブドラ君は、衛生環境の悪化から、祖国シリアからの避難を余儀なくされたと話します。少なくとも、この家族の決断は、彼の望んでいたことのひとつでした。

「シリアの家は、ねずみで溢れかえっていたんだ。だから、お父さんは、ねずみを駆除できるようになるまで、僕たちをレバノンに避難させることにしたんだ」

アブドラ君にとって、戦闘が激しさを増すシリアの状況は、思い出したくないものなのです。

激しさを増す戦闘を逃れて

出口の見えない戦闘が続くシリアからレバノンに避難を余儀なくされた難民の数は、公式に登録された人だけでも16万3,000人以上。実際の数は、さらに多いものとみられています。しかし、安全上の理由などから、多くの人々が難民登録をしていません。

先週だけでも、約6,600人のシリア難民が、国連高等弁務官事務所により、難民として登録されました。

「学校は、最も大事なところ」

© UNICEF Lebanon/2012/Juez
レバノンのベッカー高原にあるバールベック学校に通うシリア難民とレバノンの子ども。ユニセフのパートナー団体である地元NGO「サワ」が、子どもたちが学用品を購入できるように引換券を提供しました。

アブドラ君の家族も、先週、シリアのホムスからレバノン南部のシドンに避難しました。アブドラ君の両親は、この紛争で子どもたちが心理的に悪影響を受けないよう最善を尽くしています。しかし、狭い空間で暮らしている子どもたちは、両親が話していることをふと耳にしてしまったりして、シリア国内の状況が極度に悪化していることを知ってしまったのです。

アブドラ君は、シドンにあるアル・アヘド・アル・ファディド小学校に通っています。この学校の校長先生によると、子どもたちの約40パーセントは、シリア難民の子どもたちです。

いつもにこやかで、勉強熱心なアブドラ君は、先生やクラスメートにとても人気があります。一人で勉強に集中するだけでなく、教室では、他の子どもたちにも本気で勉強に取り組むよう促しています。「学校は最も大事なところだよ。良い人生を送りたいなら、勉強しなくちゃね」アブドラ君はこう話します。

学校の授業は、アブドラ君が解さないフランス語で行われます。でも、アブドラくんは、「フランス語も勉強できるなんて!」と、とても喜んでいる様子です。

一方で、この言葉の壁を歓迎していない子どもたちもいます。マルワンちゃん(10歳)は、シドンにあるダルブ・エス・シム学校に通っています。「正直に言うと、フランス語は難しすぎるわ。神様は、私に英語とアラビア語を授けてくださいました。フランス語は本当に苦手なの。だから、フランス語を使う学校に登録されて、とても困っているの」

子どもたちに教育を

© UNICEF Lebanon/2012/Juez
英語やフランス語が使われるレバノンの授業は、多くのシリアの子どもたちにとって優しいものではありません。

アブドラ君とマルワンちゃんだけでなく、ユニセフは、現地で活動するパートナー団体と共に、多くのシリア難民の子どもたちを支援しています。11月初旬から、ユニセフは、緊急の教育支援活動を強化。シリア難民の子どもたちと、難民を自宅に受け入れている地元の家庭の子どもたちに、学用品を提供しています。避難を強いられたシリアの人々は、レバノンの貧しい地域の中に身を寄せています。このため、こうした緊急支援は、非常に厳しい立場にあるこれらのコミュニティーにも届けられているのです。

ユニセフが、これまでに学費や学校かばん、制服の提供を通じて入学を支援した子どもたちは、1万3,000人に上ります。

ユニセフのもう一つの最優先事項は、受け入れる学校の“能力”の拡充を支援することです。ユニセフは、現在、シリアの子どもたちを受け入れている約110の学校で、学校職員や教員、校長、保護者を対象に、子どもが積極的に学べる教育手法や、子どもを肯定的に評価しながら躾る手法、仲間はずれを生まない教育手法などに関する研修を実施しています。

補習クラス

タレク君一家は、3週間前、レバノン北東部ベッカー高原のバールベックに辿り着きました。ほとんど何も持たず国境を越えてきたタレク君一家は、基本的なニーズも満たされていない状況です。

ノートもペンも持っていなかったので、学校に通い始めた当初は大変だったとタレク君は話します。す。こうした状況を受け、ユニセフのパートナー団体の一つのNGO「サワ」は、子どもたちが学用品をそろえられるように、引換券を配布しました。

サワが運営するセンターでは、シリア難民の子どもたちがレバノンのカリキュラムに順応できるように、フランス語と英語の補習クラスが開かれています。また、コミュニティーセンターとしても機能しているこのセンターでは、異なった文化的背景を持つレバノンとシリア難民の子どもたちが一緒に遊ぶ機会をつくったり、必要に応じて心理社会的なケアの提供も行うなど、現在、この地域で非常に必要とされているサービスを提供しています。

サワを設立したザキ・リファイさんは、補習クラスは、シリア難民の子どもたちがレバノンの学校になじめるようになるための基礎と考えています。リファイさんは、子どもを学校に入学させるだけでなく、学校に通わせ続けることにも力を注ぐべきだと話します。補習クラスがなかったら、子どもたちが学校に通うことを辞めてしまう可能性がさらに高くなるのです。

※本文に登場する子どもたちは、全て仮名です。