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財団法人日本ユニセフ協会
 



シリア緊急募金 第65報
「女の子に教育を」 難民となった少女の切実な願い

【2013年9月30日 イラク・アルビル発】

© UNICEF UNICEF/Iraq-2013/Niles
北イラクのバハルカ避難民キャンプにて、ユニセフが支援する小学校の開校を喜ぶ子どもたち。授業は毎日、2交代制で3時間ずつ行われます。

紛争のトラウマと不確実な将来への不安が影のようにつきまとうなかで、一日中何もせずただじっと座っている日々。それがどれだけ辛いかは、実際に体験しているシリア難民の子どもたちにしかわからないかも知れません。

イラク北部のバハルカ避難民キャンプには、将来に何が期待できるのかがわからないまま、ただ時間が過ぎるのを待っているだけの子どもたちと若者があふれかえっています。

■勉強を続けたかった・・・

「まるで主婦のように、ずっとテントにいます」20歳のシルヴァは悲しそうに言います。何もすることがないまま、彼女の毎日は過ぎていきます。

彼女は、こんな人生を思い描いていたわけではありません。以前、彼女はシリアで充実した大学生活を送っていましたが、紛争によってシリアから避難せざるを得なくなりました。

彼女にとって、イラクでこれまでどおり勉学を続けられる見込みは、ほとんどありません。年間の学費は何千ドルにものぼり、彼女の手が届く額をはるかに超えているからです。

「シリアに戻って、大学を卒業したいです。私がここで学べるチャンスはないのですから」と彼女は話します。

シルヴァの妹である13歳のヘバは、バハルカ避難民キャンプでユニセフが支援する学校に通っています。
ユニセフは、アルビル地方の1年生から9年生までの5000人以上の子どもたちを対象に、学校教育を支援しています。そのうち800人以上の子どもたちが、バハルカで教育を受けています。

授業は2交代制で毎日行われています。「学校はとても暑いです」とハバは言います。学校が好きな彼女は、将来、医師になりたいと思っています。

シルヴァは仕事を見つけて家族を支えたいと思っています。しかし、何も見つからないので、このままじっとしているしかありません。

彼女たちの家族が暮らすテントは小さく、地面の上にカーペットが敷かれ、薄いマットレスが壁高く積み上げられています。

■教育を受けられない女の子たち

姉妹と話している最中に、他の女の子たちもやってきて、靴を脱いで床に座りました。年下の幼い子どもを抱かかえている女の子もいます。

16歳のキンダが学校に通えなくなってから、それほど時間はたっていません。家族がシリアからの避難を決めた数週間前まで、彼女は紛争下のシリアで勉強を続けていました。ある意味、キンダは幸運です。彼女の父親は、アルビルから3時間ほど北に行ったところにあるドホーク市で働いています。しかし、給料は十分ではない、と彼女は言います。

彼女は小さな物を懐かしく思い出します。
「故郷にいるときには、たくさんの本と音楽CDを持っていました。でもイラクに来るとき、それらを持ってくることはできませんでした」

12歳のリロズは、英語で1から20までの数字を綴った、青い練習ノートを持っています。
リロズは英語の勉強を続けたいと思っています。それは、ある一人の先生が理由です。「私は英語の先生が大好きでした。先生は、将来に希望を持つことを私に教えてくれました」

■教育がもたらす希望

将来に希望をもつことは、現時点では簡単ではありません。この幼い女の子たちにとって、今一番の疑問は「小学校を卒業したら、何が待っているの?」というものです。

シリアの人々にとって、教育は、充実した人生につながる扉の鍵です。この女の子たちが、希望ある将来へのドアを開けられず、このままドアのこちら側に留まることになるとしたら・・・

「社会の半数は女の子と女性です。私は世界中の女の子に、勉強をしなさいと伝えます。教育はあなたたちの武器です。学んだ知識を武器として用いることによって、充実した人生を自分自身で切り開くことができるのです」とシルヴァは語ります。