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財団法人日本ユニセフ協会
 



シリア緊急募金 第27報
国連視察団−シリア国内の惨状を報告

【2013年1月22日 レバノン・ベイルート発】

© UNICEF/NYHQ2013-0007

国連人道問題調整事務所(OCHA)のジョン・ギング部長と、ユニセフをはじめとする6つの国連機関の緊急支援活動統括責任者は、シリアの首都ダマスカスと周辺のホムス、タルビセ、ダルアの各地域を5日間にわたり訪問。22日、シリア隣国のレバノンの首都ベイルートで開いた記者会見で、現地の様子を報告しました。

国連視察団を代表し、ギング部長は、シリア国内の人道支援のニーズを把握するとともに、支援を拡充させるための方法を確認するために、今回の訪問が実施されたことを説明。その上で、シリア国内現地の状況の酷さに、視察団一同が衝撃を受けたと語りました。今回、国連視察団の一行は、シリア政府と対峙する反政府勢力の双方の了解の下、両者が対峙する最前線をまたぎ、20ヵ月以上にわたる戦闘で疲弊したタルビゼ市内にも入りました。

ギング部長は、シリアの人々が直面する窮状は言葉に尽しがたく、中でも、子どもたちが最も厳しい立場に立たされていると訴えます。訪問した病院には、医薬品などの物資は何も無く、基本的な社会サービスは、殆ど機能していない状況です。ギング部長は、これまでよりも大規模で、より充実した内容の人道支援が、さらに迅速に展開される必要があると強調します。

ユニセフ緊急支援オペレーション部のテッド・チャイバン部長は、国内避難民を含めたシリアの人々が直面する窮状の概要を説明。武力紛争の影響を受けている400万人の被災者の半数が子どもで、最も厳しい状況の中での生活を強いられているだけでなく、日々“暴力”を目の当たりにしているため、心理的にも苛まれていると語ります。

「既に約1〜2年もの間、学校に通えていない子どももいます。多くの社会インフラが崩壊しました。全体の25パーセントにあたる約3,900校の学校が、損傷や全半壊し、あるいは、避難所として利用されているのです。また、シリア国内の塩素工場が破壊されたため、塩素不足による切迫した状況も生まれています。浄化のための塩素が不足しているため、飲料水の多くが飲料に適さない状況です。たとえば、国内避難民が手に入れることができる安全な飲料水の量は、かつての3分の1程度の量に過ぎません」(チャイバン部長)

チャイバン部長は、ユニセフは、パートナー団体と共に、子どもの健康を脅かしかねない水の汚染を防ぐため、塩素浄化剤を追加で急送していると語ります。すでに、被災者の方々の間では、疥せんや、皮膚疾患といった多くの健康上の問題が報告されています。また、ユニセフは、シリア国内の14の行政区域で、総計160万人の子どもたちに、はしかとポリオの予防接種を実施したと報告しました。

今年4月に予定されている2回目の予防接種キャンペーンでは、さらに70万人の子どもがこの恩恵を受ける見込みです。チャイバン部長は、ユニセフは、こうした支援活動をシリア国内で展開するために、シリア政府の保健当局やシリア赤新月社のほか、40を超える地元のNGOや国際NGO、市民団体など、様々なパートナーと手を取り合って活動していると説明します。

「(筆舌に尽しがたい苦境にくじけることなく)必死に生きているシリアの方々の姿には、頭が下がるばかりです」(チャイバン部長)

「こうした状況の中でも子どもたちを守り続け、子どもの未来を築くために教育の支援を求めています。学校に通う子どもたちも、自主的に委員会を組織し、近隣の人々に様々な支援物資を配布するために命がけで取り組んでいます。こうしたシリアの人々こそ、この状況の中で人々の命を守っている‘英雄’です。我々は、このことを忘れてはなりません。多くの支援が実施されましたが、まだまだやらなければならないことは山積しています」(チャイバン部長)