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シリア緊急募金 第38報
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アルカイムのシリア国境で |
アルカイムの難民キャンプに設置された“子どもに優しい空間”(CFS)では、難民の方々自身がボランティアのファシリテーターとして、子どもたちと一緒に楽しく遊んでいます。ボランティアの方々が、子どもたちが描いた絵を見せてくれました。CFSの活動が始まった頃に描かれた絵は、戦車や爆弾、銃など、紛争に関連したものや、黒など暗い色を主に使ったものが多く見られます。CFSに通い始めて約3ヵ月。多くの子どもたちは、今、花や木など、自然の風景を中心に、華やかな色を使った絵を描き始めています。子どもたちの態度も変ってきたとボランティアの方々は語っていました。始めは、荒々しく、なかなか馴染めなかった子どもたちでしたが、今では、CFSにいつもやってきて、いろいろな活動に参加することができるようなったそうです。
「子どもに優しい空間」の活動が始まった頃、子どもたちが描くものは、戦争の光景ばかりだった | CFSに通い始めて3ヵ月。今、子どもたちは、自然の風景や自分の好きなものの絵を描くようになった |
同じ頃、ドミズも訪問しました。寒さのピークを過ぎた時期でしたが、夜は5度を下回る、まだまだ寒い時期でした。難民キャンプでは、ユニセフはイラク政府と協力してCFSを設置し、子どもの保護のためのシステム作りをサポートしています。3月に入ってから難民の数が極端に増え、1日に800人もの方々が新たにキャンプに到着されています。キャンプの収容能力が限界を超えてしまっているため、資金的に余裕のある人や、親戚や知り合いがいる人の中には、ドホーク市内や、クルド人自治区の他の場所に避難先を求められる方々もいらっしゃいます。
ドミズ難民キャンプ | キャンプに設置された「子どもに優しい空間」で (写真中央が野田さん) |
イラクでも、国連安全保障理事会決議第1612号で義務付けられている「武力紛争と子どもに関する監視報告メカニズム」の設置が、ようやく正式に認められました。ユニセフは、パートナー団体と協力し、ドミズとアルカイムのふたつの難民キャンプで「シリアの武力紛争下における子どもに対する暴力・虐待」に関する情報収集を行い、国連安全保障理事会に報告しています。子どもたちは、悲惨な状況を語ってくれています。
ハッサンくん(12歳・仮名)は、シリアの首都ダマスカスから避難してきました。昨年12月、ハッサンはいつものように学校で授業を受けていました。すると突然、武装した軍人が学校に侵入し銃を乱射し始めたので、ハッサンくんの先生は、子どもたちを安全な場所へ避難させ、銃の乱射をやめるよう訴えました。するとその軍人たちは、先生の髪をわしづかみにし、中庭まで引きずりだし、子どもたちの目の前で銃殺したのです。ハッサンくんは、今でもこの光景が脳裏から離れず、怖い思いをしていると語ります。
こうした子どもたちをはじめとするシリアの方々への支援は、今、危機的な状況に直面しています。資金不足から、日々増加し続ける難民のニーズに応えることができていません。ドミズ難民キャンプのCFSは、現在、たった一箇所だけ。悲惨な経験を経てきた子どもたちに「心のケア」を提供するとても重要な役割を担った活動ですが、現在対応している500人で精一杯の状態です。
ハッサンくんのように、悲惨な状況を目撃し、心理的なダメージを受けている子どもたちは他にもたくさんいます。CFSを増やし、より多くの子どもたちに、そうしたダメージを和らげたり、必要に応じてより専門的なケアにつなげるシステムを構築することが必要です。トラウマの治療には、多くの時間が必要です。丁寧に一人ひとりをケアできる環境を確保することが必要なのです。最近は、家計を助けるために不適切な環境の中で働かざるを得ない子どもたちの存在や、買春、家庭内暴力、性的虐待などの報告も増えてきています。こうした問題に晒された子どもたちに適切に対応できる態勢を作ること、そして、これらの暴力や虐待を未然に防ぐための活動を強化して行く必要があります。
写真クレジット全て:(C)UNICEF Iraq/2013/Noda