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財団法人日本ユニセフ協会
 



シリア緊急募金 第37報
「家に帰りたい」・・・13歳の男の子の切実な願い

【2013年3月15日 ヨルダン発】

© UNICEF Jordan/2013
ユニセフは、ザータリ難民キャンプに避難を余儀なくされた全ての難民のために、衛生キットを配布。このキットには、石けん、シャンプー、タオル、櫛、トイレットペーパー、歯ブラシなどが含まれている。

7ヵ月前、ヨルダンのザータリ難民キャンプは、ミート・バシール君(13歳)の‘家’になってしまいました。

今から7ヵ月前、バシール君の一家は、シリア南部ダラアの家からヨルダンに逃れてきました。しかし、戦闘が激しさを増しはじめたその日から今日まで、13歳のバジール君が故郷を思わなかった日は一日もありません。

「ダラアの何もかもが恋しいんだ。ザータリ難民キャンプで生活できていることは、神に感謝しているよ。でも、故郷のシリアはもっと良かった。他に何もいらない。ただ、家に帰りたいんだ」バシール君は、こう話します。

学校=希望を与える場所

バシール君一家は、ヨルダン北部の荒涼とした砂漠地帯に設置されたこのキャンプに、最初に辿り着いたグループの一員です。現在、推定10万人のシリア難民が、このキャンプで避難生活を送っています。当初はテントでの生活を強いられていましたが、その後、キャンプへの到着順にプレハブの居住区が提供されるようになりました。このプレハブの僅か一部屋が、避難を強いられた人々の‘家’なのです。この小さな“家”で、これまで続いた厳しい冬の寒さを凌ぎ、これからやってくる夏の焼け付くような暑さに耐えなければならないのです。

そんな中、昨年10月のキャンプ内の学校の開校は、バシール君をはじめ多くの子どもたちが待ち望んでいたものでした。バシール君が学校に通えなかった期間も、わずか2ヵ月に留まったことになります。

© UNICEF Jordan/2013
ザータリ難民キャンプの子どもたち。ユニセフは、新たに避難してくる人々のために、国際社会に、追加の資金援助を求めている。

「学校は好きだよ。色々勉強することができるから。英語の授業が好き。勉強は、ここでも続けられているよ」「シリアに戻ったら、勉強を続けるんだ。将来、成功するためにね。医者になりたいんだ」バシール君は、興奮気味にこう話しました。

バシール君はじめ、ザータリ難民キャンプでユニセフの支援で運営されている学校に登録されている子どもは、現在5,400人。学校は、教育を提供する場所であると同時に、ストレスにさらされている子どもたちに、ある程度日常の感覚を取り戻させてくれる場所でもあります。

ヨルダンに避難を余儀なくされたシリア難民の数は、増加し続けています。その数は、2月だけで、1日平均約2,200人に達したと推定されています。この状況に対応するため、教育施設の更なる設置が急務となっており、来週には、2つ目の学校が開校。新たに5,000人の子どもたちが通う予定です。さらに、3つ目の建設も進められていますが、早急に追加の資金が集まらなければ、開校は厳しい状況です。

青少年センターが実施する活動

「学校がないから、子どもたちはキャンプの至る所で、暇を持て余しているのさ」と、バシール君。

バシール君は、勉強していない時には、難民キャンプに数箇所設置された青少年センターに通っています。センターでは、子どもと若者が、サッカーやお絵かきといった様々な活動に活発に参加しています。午後になると、バシール君はたいてい各地を巡回して回っている「コンピューター・キャラバン」で、PCの使い方を熱心に学んでいます。

勉強のことになると、バシール君は哲学的です。「教育は光、無知は暗闇だよ」(バシール君)

求められる支援

家族の中で忙しくしているのは、バシール君だけではありません。父親のナベールさんは、ファラフェル(ひよこ豆を使用した料理)を、キャンプ内の大きな通り沿いで売る商売を軌道に乗せています。毎日何千人もの人々が行き来しているため、シリアで良く見られる青空市場の規模が拡大しているのです。こうして得たナベールさんの収入は、家族を養うだけでなく、祖国に戻ったときの貯えにもなっています。

難民の増加が続いているため、ユニセフは、パートナー団体と共に、清潔な飲料水の提供や教育、保健、子どもの保護といった分野で、大きな課題に直面しています。

ヨルダンの支援活動のために必要な資金のうち、確保できているのは、その20パーセント未満に留まっています。『ロスト・ジェネレーション(失われた世代)』になってしまう危険から、バシール君をはじめとするシリアの子どもたちを守るためのユニセフの活動は、大幅な資金不足により、さらに困難な状況に陥っています。

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