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財団法人日本ユニセフ協会
 



シリア緊急募金 第34報
ユニセフ広報官—ホムスの子どもの現状を報告

【2013年2月26日 シリア発】

© UNICEF/Syria/2013/Morooka
学校の校庭で遊ぶ子どもたち

武力紛争の影響を受けたホムスの子どもと母親のもとを訪れ、ユニセフとパートナー団体の活動を視察したユニセフのイマン・モロオカ広報官が、現場の様子を伝えてくれました。

武力紛争による破壊と荒廃の現状を確認するのに、何も遠くまで足を延ばす必要はありません。「ドン」という、とどろくような砲撃音は、ここでは毎日の日課のような出来事なのです。ホムスの広い範囲で、何十万人もの人々が安全な場所を求め、自宅からの避難を余儀なくされました。

ホムスの比較的落ち着いている地域に設置されている避難所は、生活を失った悲しみに溢れていました。そこには、所持品も尊厳のある生活も失った家族がいました。多くの家族が、避難している公共の建物や学校の一部屋を、他の家族と共有して利用しなければなりません。それぞれの家族の生活スペースは、毛布や衣類をぶら下げて区切ってあるだけのことが多く、またお湯やシャワーといった基本的なサービスも整っていない状況です。

© UNICEF/Syria/2013/Morooka
ホムスの公立の学校でユニセフが支援したノートを手にする女の子

しかし同時に、コミュニティの回復する力と強さを垣間見ることができました。避難所の廊下や中庭で、子どもたちは遊び、笑いあっています。子どもたちは楽しそうに、満足しているように見えました。しかし、この子たちと話してみると、故郷がとても恋しく、所在の分からない友達に会いたいと、その心中を話してくれました。

ある女の子は、置き去りにしてしまった小さな亀のことが一番心配だと話しました。12歳の男の子は、こんな屈辱的な生活を我慢する必要のなかった自分の家が恋しいと話しました。

ユニセフが支援している慈善団体の施設で、2人の子どもを持つウム・アハメドさん(仮名)と出会いました。この団体は、主に紛争によって稼ぎ手を失った家族を支援するため、週に2日、医療品、非食料品(調理器具、 飲料水袋等)、衣類といった物資の支援と、財政的な支援を行っています。ユニセフは、この団体を通して、避難を余儀なくされた人々に家族用衛生キットと毛布を提供しました。

ウム・アハメドさんは、激しい紛争が大規模な破壊と避難を引き起こしている地域の近くに暮らしています。夫と長男は共に命を落としました。ウム・アハメドさんは、避難生活を送っていましたが、最近、4人の子どもたちを連れて自宅に戻りました。

地元NGOから支援されている毎月約7,800リラ(約80米ドル)の資金と配布される支援物資が彼女の唯一の生活の糧。

ウム・アハメドさん一家は、激しい損壊を受けた自宅の一間で暮らしています。損傷が激しいため、雨が降ると、雨漏りしてしまいます。

© UNICEF/Syria/2013/Morooka
アラビア語の授業の様子

「生活はとても厳しいです。全てが高値になっていますから。例えば、パンはとても高い上に、助成金を受けている(安価になった)パンを手に入れるためには、長い列に並ばなければなりません。野菜、牛乳、卵、砂糖、燃料なんて、高価でとても買うことができません」

「私たちはいつも家にいます」と、ウム・アハメドさんはさらに続けます。「子どもたちは、学校に通う以外は、外に出ません。戦闘がはじまったら、いつでもすぐに子どもたちを家に連れて帰れるようにしています。子どもたちは、いつもびくびくしているんです」

また別の女性は、16歳の息子が学校に行っているときは、いつも息子の安否が気がかりだと話しました。「息子が誘拐されたり、‘チェックポイント’で連行されたりしたらどうしようかと恐ろしいのです。でも、息子は学校に行くのをとても楽しみにしていますので、彼が家から出るのを許しています。私も、息子には高等教育を受けてほしいと思っています」

家族が直面している課題について、ウム・アハメドさんは、こう付け加えました。「子どもたちが夜間や金曜日に病気になっても、診てくれるところはひとつもありません。私たちが暮らしているところでは、安心していられないのです。略奪やその他の犯罪も増加しています。夜になると、ドアを木で閉めきっています。知らない男たちが入ってくるのが怖いですから」

非常に多くの家族が、過去を奪われ、苦しい今を耐え忍んでいます。しかしながら、こうした惨状の中で、心を打ち、希望を与えてくれたことは、親や保護者とコミュニティが、危険を顧みずに子どもたちに教育を受けさせようとしている固い決意でした。