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財団法人日本ユニセフ協会
 



シリア緊急募金 第64報
ひとりで国境を越えた子どもたちは4,000人以上

【2013年9月22日 ヨルダン発】

© UNICEF Jordan/Noorani
ザータリ難民キャンプで暮らす、家族や保護者のいない子どもたち。

ヨルダンのザータリ難民キャンプには、命からがら逃れてきたシリア難民が身を寄せています。中には、保護者やおとなを伴わずに国境を越えた子どもたちが4000人以上いることが確認されています。16歳のハッサン(仮名)もその一人です。

ビラルとの再会

細身のハッサンがザータリ難民キャンプに来てから、まだ24時間しかたっていません。ハッサンは中学生の時、学校を中退してレバノンにやってきました。彼は、生計を立て家族に仕送りをするため、レストランで働いていました。

その人生を、紛争が変えてしまいました。

「奴らは僕の町を攻撃し始めたんだ。だから、僕の家族はシリアを離れ、ヨルダンに向かった」とハッサンは言います。「家族が去って、僕たちは連絡がお互いに取れなくなった。とても心配で、僕は、病気になった。ただただ、ここに来て家族に会いたかったんだ」

ハッサンは、たった一人で、3日かけて、ヨルダンとの国境を越えました。
レバノンを離れる前、ハッサンは21歳の兄に、ヨルダンに向かう途中であることを連絡しました。

「難民支援団体のIRCが昨晩僕に電話をしてきて、弟がここにいると教えてくれたんだ」とハッサンの兄、ビラルは言います。「最後に弟に会ったのは3ヶ月前だった。彼がここに来てとてもうれしい。これから彼の面倒をちゃんとみるよ」

ハッサンは、その後の24時間をユニセフとIRCが運営する一時保護センターで過ごし、ソーシャルワーカーが、ハッサンがお兄さんのビラルとともに安全に居られることを確認した上で、最終的な家族の再会手続きがとられます。

ひとりで国境を越える子どもたち

© UNICEF Jordan/Noorani
ヨルダンのザータリ難民キャンプで暮らす12歳のアーマッド(仮名)とユニセフの職員。難民キャンプの子どもたちは、ソーシャルワーカーの保護のもとで暮らしています。

9月20日国連のジュネーブ本部で行われた記者会見で、ユニセフは、保護者やおとなを伴わずに国境を越えた子どもたちが、2011年以来、4,150人に上ると報告しました。この人数には、子どものみで避難してきたことが確認、また登録された子どもしか含まれておらず、実際にはより多くの子どもたちが、単独で国境を越えているとみられます。

最も多くの子どもが確認されているのは、レバノンで1,698人。こうした子どもたちの中には、農作業を強いられる子どももおり、児童労働が起きています。続いてヨルダンの1,170人で、その多くはザータリ難民キャンプに身を寄せています。イラクでも、新たに避難してきた、保護者などを伴わない子どもは300人で、多くの子どもたちがシリアにいる家族に送金するために、働いている状況です。

こうした子どもたちは、極めて厳しい状況を目撃し、経験しているばかりでなく、最も搾取や虐待を受けやすい状況にあります。

家族のために

子どもたちが単独で国境を越える背景は様々です。紛争で両親や親戚を失い、命からがら逃げてきた子どももいます。自分よりも先に、国外へ避難した家族を追いかけてきた子どももいます。また、子どもの兵士にさせられ、紛争へ巻き込まれることを恐れた親が、子どもだけを国外へ逃していることもあります。

最も多いのは、家でできる仕事もなく、生活が困窮していることから、国外へ送り出され、仕事をし、収入を送金することを期待されているケースです。また、水や仮住まいを求めて避難する子どもたちもいます。ユニセフは、こうした子どもたちを家族のもとへ帰れるよう、子どもたちを保護しています。家族が見つかるまでの間、安全な生活空間、医療ケア、心のケア、教育などの支援を行っています。