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公益財団法人日本ユニセフ協会
 



シリア緊急募金 第49報
障がいのある子どもが最も弱い立場に

【2013年5月31日 ヨルダン発】

© UNICEF Jordan/2013
アブドゥラティフスさんの4歳の娘さんは、紛争勃発後、話さなくなった。聴力を回復するための手術が必要だが、1万米ドルの費用がかかる。

全ての子どもと同じように、障がいのある子どもも多くの能力を持っています。しかしながら、障がいのある子どもは、差別や支援不足のために社会から取り残されることが多く、世界の子どもの中でも最も忘れられやすく、最も弱い立場に置かれています。

最新のユニセフの代表出版物「世界子供白書2013:障がいのある子どもたち」が、5月30日、世界同時に発表されました。今回の白書では、多くの場合忘れられている障がいのある子どもの緊急のニーズを訴えています。

シリア危機の最も大きな影響受けているのは子どもたちです。中でもアブドゥラティフさん一家の息子さん(15歳)と娘さん(4歳)のように、障がいのある子どもたちの状況はさらに厳しいものとなっています。

アブドゥラティフさん一家は、シリアでの紛争により隣人が命を落とし、自宅は崩壊。育てていた家畜も失いました。アブドゥラティフさんは、家族を守るためシリアからの避難を余儀なくされました。しかし、特に障がいのある2人の子どもを連れたその旅路と、その後の生活は、決して容易いものではありませんでした。

子どもたちは話さなくなりました

身体障がいと知的障がいがあるアブドゥラティフスさんの15歳の息子さんは、歩くことができません。「息子は重いので、交代で彼をおぶって国境を越えなければなりませんでした」と、アブドゥルラテイフさんはその時のことを思い出してこう話します。

紛争が勃発してから、息子さんは一言も話さなくなってしまいました。多くの難民が避難しているヨルダン北部のザータリ難民キャンプの無数のハエが飛び交うテントの中で息子を世話することはそれ自体が大変なことです。そして、アブドゥラティフスさんの4歳の娘さんは、聴力を回復させるための外科施術を必要としています。

「紛争が始まる以前、シリアで聴力を補う埋込み型補聴器をつけるための手術を受けました」と、アブドゥラティフさんは話します。この手術以降、娘さんは話し始め、おしゃべりに興じていたそうです。しかし、ヨルダンに辿り着いてから2ヵ月と27日後、娘さんは突然話さなくなってしまいました。

ヨルダンの医師は、アブドゥラティフさんに心が痛む報告をしました。娘さんの補聴器の一部が機能しておらず、ヨルダンで新しい部品を購入するためには1万米ドル以上かかるというのです。アブドゥラティフさん一家には、そのような大金を用意する術がありません。わずかな衣類を持って避難してきたのです。

「娘の補聴器が壊れた時のことは、よく覚えています」アブドゥラティフさんはこのように話し、そのときから、娘がまた話せるように、手術が可能な医師やドナーを見つけようと寸暇を惜しんで努力していると語りました。アブドゥラティフさんは、もし娘さんが7歳までに手術を受けられなければ、もう二度と話せなくなってしまうのではないかと心配しています。

障がいのある子どもの危険

5月30日に発表になったユニセフの「世界子供白書2013:障がいのある子どもたち」によると、アブドゥラティフさん一家のような子どもたちは、特に貧困と社会から阻害された生活を送っている傾向にあり、特に弱い立場に立たされていると指摘しています。障害のある子どもは、災害や緊急事態が発生すると、更に大きな危険にさらされてしまいます。シリア危機も、例外ではありません。

紛争は、身体的な負傷だけでなく、トラウマとなるような深い心の傷となるような出来事を目撃したり、そのことによる極度の強迫感にさいなまれたり、また、保健サービスの崩壊、適切な食事や安全な飲料水へのアクセスの不足を引き起こします。このような状況は、時には数年間にわたり、家族と離れ離れになったり、家に戻れなかったり、学校に通うことを困難にします。

シリア危機から2年以上が経過し、国連によると、数千人の子どもを含む死者は約8万人。425万人以上が国内避難民となり、150万人以上が近隣諸国への避難を余儀なくされています。

障がいのある子どもに関するデータの収集は困難ですが、世界で数千万人の子どもが中度あるいは重度の障がいと共に生きていると推定されています。しかしながら、この数値は、実際にはもっと高いと見られます。シリア難民と国内避難民の中で障がいのある子どもの割合は非常に高くなっています。なぜなら多くの子どもたちが暴力にさらされた結果、負傷したり深刻なストレスに苦しんでいるのです。

急速に高まる支援のニーズは、世界各国からお寄せ戴いている資金をはるかに凌ぐペースとなっています。シリアの子どもは、紛争による最も大きな影響を受けており、障がいのある子どもがそれ以上であることは想像に難くありません。障がいのある子どもは、本来あるはずのコミュニティや国の再建そして強化に貢献するにふさわしい立場の代わりに、人道支援から取り残されている危険もあります。

アブドゥラティフさんは、娘にはこのようなことがないようにと、決意しています。
「この子が私の全てです。もう一度、聞こえるようにさせてあげたい」

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