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ユニセフ「子どもたちのための前進-子どもの保護に関する報告書」を発表
子どもの権利の侵害をなくすための取り組みについては、いくらかの進展があるものの、子どもたちに対する虐待の程度については、まだ十分に分かっていません。世界中の多くの子どもたちにとって、暴力と搾取は依然として厳しい現実として存在しています。 世界中の何百万人という子どもが男女を問わず人身売買の被害にあい、親による保護を受けられず、あるいは学校教育や基礎的な医療を受けるために必要な書類を持っていません。さらに何百万人もの子どもたちは省悪な環境での労働を強制され、また家庭、学校、コミュニティ、あるいは施設や拘留下において、多くの場合、保護者であるはずのおとなたちからの暴力や虐待にさらされています。 この問題はユニセフのアン・ベネマン事務局長が6日、東京にて発表したユニセフの新しい報告書「子どもたちのための前進:子どもの保護に関する報告書」において検証されています。 このような状況に置かれている子どもたちは基本的な人権を侵害されると共に、広範で、時には回復不可能なほどの身体的、心理的な影響を受けています。 ベネマン事務局長は次のように述べています。「幼い子どもたちが低年齢での結婚を強いられ、性産業に従事させられ、あるいは基本的権利を否定されているような社会は発展することはできません。子どもたちに対する権利侵害の程度を知ることは、子どもたちが保護され、彼らの可能性を最大限に伸ばすことのできる環境を作り上げるための最初の一歩です。」 このレポートには性的搾取や人身売買、早婚、体罰、児童労働、出生登録、女性器切除(FGM/C)の有害な慣習、および結婚後の女性への暴力に対する人々の態度など、子どもたちに影響を及ぼす幅広いデータが初めて集められました。 性的搾取や人身売買など、人権侵害の一部は秘密裏かつ違法に行われる場合が多く、正確なデータを収集できません。 データが得られる分野においては、いくつかの明らかな進展が見られました。たとえば早婚が広くみられるバングラデシュ、ギニア、およびネパールでは、依然として18歳未満とはいえ、結婚年齢の中間値は高まってきています。また女性器切除(FGM/C)が一般的に行われている国では、その数が少しずつ低下してきていることも報告されています。 この報告書のための調査を通じて明らかになった事実には、次のようなものが含まれます。
このレポートではまた、子どもたちを取り巻く環境を改善するために必要とされる5つの活動分野を挙げ、子どもの保護を進展させるための戦略を述べています。これはすなわち(1)子どもを守るシステムを改善する、(2)社会の変化を促進する、(3)緊急事態下の子どもの保護を強化する、(4)効果を高めるためのパートナーシップの強化、および(5)信頼できるデータを集め、その活用により子どもたちにとって具体的な成果を生むこと、です。 「この子どもたちに対する有害な行為や虐待に関する報告書の発表は、「子どもの権利条約」採択20周年記念のちょうど6週間前になります。権利侵害や虐待が未だに続いているというこれらの証拠により、すべての国のすべての子どもたちの権利を保障するために更なる努力をかたむけようとの意識が、世界で高まるにちがいありません。」とベネマンは述べています。 ベネマン事務局長 日本に児童ポルノの所持禁止を訴える
記者会見の後半、ベネマン事務局長は、児童ポルノ問題に関する日本の報道機関からの質問に対し、次のように答えました。 「児童ポルノは、深刻な形態の子どもの権利の侵害行為です。私の知るところ、G8国中、児童ポルノの所持を法律で禁止していない国は日本とロシアだけです。これは、インターネットの普及によって、児童ポルノの問題が深刻化している現状から考えると、憂慮すべき状態です。他の国々で所持を禁止しても、日本で所持を禁止していなければ、インターネットを通じて、他の国々から児童ポルノを見ることができてしまうのです。」 「世界を見回した時、児童ポルノの所持を禁止していない国は他にも多数あります。しかし、日本やロシアのような国々が禁止していないことによって、この問題への国際社会の取り組みに、大きな『穴』を空けてしまっているのです。」 「表現の自由の問題があることも承知しています。私自身、表現の自由を最も尊ぶ国の出身です。そうした国々が、既に児童ポルノの問題に真剣に取り組んでいます。表現の自由には責任が伴います。表現の自由には、許される範囲というものもあります。しかし、他者を差別したり、陥れようとしたり、虐待したりするような表現は許されるべきではありません。」 「日本の国会が、党派を超えてこの問題に取り組んでいらっしゃることに感謝します。これは何よりも子どもたちの問題です。そうした問題の解決に、政治的立場の違いがハードルになってはならないのです。日本の国会議員のみなさまにも、ぜひ引き続き、党派を超えた形で、この問題に取り組んでいただきたいと思います。」
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