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シリア緊急募金 第98報
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© 日本ユニセフ協会 |
「激戦地」と呼ばれるシリア・アレッポの様子を語る後藤さん。 |
「激戦地」アレッポでは、現在、政府軍、反政府軍、外国人で編成されるイスラム過激派のグループ(ISIS)の3つの勢力による争いが続いており、1年前よりも明らかに状況が悪化していると後藤さんが語ります。後藤さんが取材した映像には、ヘリコプターから無差別に落とされる「たる爆弾」(たるの中に火薬やガソリン、金属片を詰めた爆弾)によって破壊されたアレッポの町が映し出されます。地面は大きくえぐられ、建物が壊滅的な被害を受けるなか、支援物資は滞っており、負傷者を治療するための医療物資や薬の不足が深刻な問題になっていると後藤さんが語ります。
© INDEPENDENT PRESS |
珍しい外国人ジャーナリストに「僕を撮って!」と迫る子どもたち。結局1人ずつ全員のインタビューを撮ることになった。 |
紛争前は充実した教育システムを誇っていたシリア。しかし、長き紛争によって、校舎の状況や求められている教育支援が地域によって大きく異なっていると後藤さんが語ります。政府軍の支配地域では、校舎などの施設などは残っている一方、教育システムの充実や教師のモチベーション向上、指導能力を高める支援が求められていると言います。しかし、反政府軍の支配地域にある学校は、兵士の宿舎や基地として使用されていたため、砲撃により破壊されたり、燃料となる教室の机やドアの木枠などが全て取られ、骨組みしか残っていない状態にあることを後藤さんが取材で確認されました。 アレッポで後藤さんが取材した男の子は、「砲撃や空爆のせいで学校には通えない。学校のほうはもっと危険だから」と訴えます。
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アレッポの中心街を襲うたる爆弾。ドラム缶に高性能火薬と油を詰めてヘリから落下させる。建物を破壊した上に火災を起こし被害が広がる。 |
そういった状況下でも、モスクなどで子どもたちを集めて授業を行っている様子もカメラに捉えられています。唯一の楽しみは絵を描くことだという、アレッポで暮らしている13歳の女の子が映し出されました。女の子が書いた絵には、街を襲う軍隊が描かれています。家族と暮らす家には、電気もなく、昼間は水道も止まっています。そして、いつ爆弾がおちてくるかわからない恐怖に怯えているといいます。けれども、「将来画家になりたい。自分だけでなく、世界中の人たちの気持ちを表現したい。将来きっと、平和になったら」と将来の夢を語ります。子どもたちが学校に再び通うための支援が求められています。
長期化する紛争、止まない暴力の背景には、多くの関係者と複雑な政情が絡み合っていることを、後藤さんは取材を通して感じられました。また、現地の状況を伝える報道や動画サイトにアップされた動画は、発信元が政府側かあるいは反政府側かで内容に隔たりがあることを、理解しておくべきと語ります。 現地を取材されたなかで後藤さんは、アレッポの人々は人と人とのつながりが強く、配給を受ける際にも自分だけ独占するという姿勢は感じられなかったと語ります。現在、配給をうける際には、必ず住民登録が必要とされるシステムが進められており、きちんと配給されているかをモニタリングできる方法がほぼ確立されているといいます。また、長引く紛争の中で、シリアの人々は自分たちの力で生活を立て直そうとしている姿が見られる、と後藤さんは語ります。
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子どもたちのほとんどが地域のモスクに通う。原理主義ではなく、コーランや道徳、アラビア語、数学などを習う貴重な場だ。 |
3月15日で紛争が始まってから4年目に突入するシリア。終結の動きが模索されているなか長期化する紛争で、人口のおよそ2人にひとり、935万人の人々が人道支援を必要としています。
ユニセフはシリア将来のシリアを担う子どもたちが子どもらしい生活を取り戻し、明るい未来を築くことができるよう、引き続き支援を続けていきます。
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