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公益財団法人日本ユニセフ協会
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シリア緊急募金 第135報
爆撃が消し去った父親の夢
消えないトラウマを抱える子どもたち

【2014年9月10日 タルトゥース (シリア)発】

農場で働く家族の写真を見せるムハンマドさん。農作業中に爆撃に遭い、妻や兄弟を失った。(シリア)
© UNICEF Syria/Tiku/2014
農場で働く家族の写真を見せるムハンマドさん。農作業中に爆撃に遭い、妻や兄弟を失った。

大きな爆発音があたりに響いたとき、6歳のオマーくんは、アレッポ郊外にある家族が経営する農場の近くで遊んでいました。その地域では激しい戦闘が勃発していましたが、オマーくんの家族は玉ねぎの作付け準備を続けていました。

消えない心の傷

オマーくんは家族が農作業をしている畑に走りました。そこで目にしたのは、あおむけに倒れ、血まみれになった父親のムハンマドさんと母親のレイラさん、そしておじさんとおばさんでした。2歳の弟アリくんは、動かなくなった母親の膝の上で泣いていました。妊娠3カ月だったレイラさんは自らの身体を盾にして息子のアリくんを守り、亡くなっていました。その爆撃から生き残ることができたのは、アリくんとムハンマドさんだけでした。

農家の人たちが重傷を負ったムハンマドさんをアレッポにある病院まで連れて行きましたが、8カ月経った今も、まだ傷は完治していません。ムハンマドさんは4人の子どもたちと共に、シリア東部にある静かな町タルトゥースに生活の場を移しました。全員9歳以下の子どもたちです。オマーくん一家は祖母のアイシャさんや他の避難民の家族と一緒に、避難所で暮らしています。

避難所に身を寄せている約5万7,000人の子どもたちのほとんどが、アレッポからやってきました。紛争の激化により、多くの人たちが避難所や建設中の建物、親せきや友達の家で生活を送っているのです。

一家で身体に不自由なく働くことができるのは、75歳のアイシャさんだけです。アイシャさんは2人の息子を紛争で失い、身体に障がいのある12歳の孫の面倒もみています。「年を取っていますし、疲労も限界まで達しています。でも、休むことはできません。子どもたちのために働き続けなくてはなりません」アイシャさんは、トラウマを抱えているオマーくんを特に注意して見守る必要があると言います。「爆撃を目撃してから何カ月も経ちますが、オマーはまだ恐怖に襲われているようです。時には数日間言葉を発せず、夜通し泣き続けることもあります」

爆撃が消し去った父親の夢

ユニセフは、オマーくん一家が身を寄せるタルトゥースの避難所で、子どもたちの心のケアのためのアクティビティやポリオの予防接種の実施、衛生キットや栄養サプリメントの配布など、緊急支援を展開しています。

爆撃にあう以前、ムハンマドさんには、叶えたい大きな夢がありました。「私の生まれた家庭は苦しく、11歳で学校を退学しました。だからこそ、自分の子どもたちには、教育を最後まで受けられるようにしてやりたい、と願い続けてきました。今も同じ願いを持ち続けていますが、私は身体に傷を負い今までのように働くことはできず、妻も兄弟も亡くしました。私が夢に見ていた、子どもたちが子どもらしく生活できる環境を用意してあげることは、簡単ではありません」

ムハンマドさんは仕事ができるような健康状態ではありません。しかし医療費がかさみ、働かざるを得ない状況に陥っています。2週間前になんとか日雇いのごみ収集の仕事を見つけましたが、1年前の収入と比べてもはるかに低い、1日1ドル以下の収入しかありません。子どもたちによりよい将来を送ってほしいというムハンマドさんの願いを叶えるには、ほど遠い収入です。

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