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財団法人日本ユニセフ協会
 



シリア緊急募金 第109報
オーランド・ブルーム ユニセフ親善大使
ヨルダン訪問、シリア難民の子どもと一緒に学校へ
「子どもたちは数年後、何を想うのだろうか」

【2014年4月16日 イルビド/ザータリ (ヨルダン)発】

ヨルダン北部の町イルビド、古びたアパートの一室で、ユニセフ親善大使のオーランド・ブルームがシリア難民の家族の話に耳を傾けています。この一家は2年前、身の安全を求めてシリアのアレッポからヨルダンに避難してきました。必要最低限の設備しかない簡素な部屋で、不安定な生活を送っています。

ブルーム大使は、4年目に突入したシリアの紛争の影響をうけ、難民として生活する子どもたちやその家族に会うため、ヨルダンを訪問しました。シリアから約250万人が国外に避難しており、ヨルダンは58万人以上の避難民を受け入れています。そして、その半数以上は子どもたちです。

学校に通うことができない13歳エスマイルくん

ユニセフ親善大使のオーランド・ブルームとエスマイルくん一家
© UNICEF/NYHQ2014-0429/Diffidenti
ユニセフ親善大使のオーランド・ブルームとエスマイルくん一家。ヨルダン・イドリブの町に2年前避難してきたときからこの居住施設に身を寄せています。

13歳のエスマイルくんは、2年間学校に通えていないとブルーム大使に打ち明けました。「3年生まではシリアで学校に通っていました。でも、それも無駄になってしまったように感じます」と、エスマイルくんが語ります。8歳の弟ムラートくんは、一度も正式な教育を受けていません。家から一番近い学校は定員がいっぱいで入学することができず、別の遠くの学校に通うための交通費を払う家計の余裕はないと、父親が話します。

数年前にシリアからヨルダンに避難してきた住民たちは、貯蓄も底をつき、家賃を払うのも困難です。そのような生活の中では、学校への交通費を捻出する余裕はありません。

「この家族がおかれている状況に、かなりショックをうけました」と、家族との面会を果たしたブルーム大使が語ります。

ユニセフはヨルダンの教育省と協力し、学校の受け入れ人数を拡大するため、午前の部と午後の部の2部制の授業の導入にむけて支援を行っています。シリア難民の家庭が多く身を寄せる地域にある99の学校が受け入れ態勢の強化を進めており、約8万5,000人のシリアの子どもたちがヨルダン国内の公立学校に登録をしています。

演劇が、人との接し方を学ぶ手助けに

正式な学校に通うことができないエスマイルくんは、ユニセフが支援する、子どもと家族の保護施設に通っています。ブルーム大使はエスマイルくんと一緒にバスに乗り、エスマイルくんも通う「ヨルダン人間開発基金」(JOHUD)とパートナー団体が支援する施設に向かいました。音楽や演劇、美術の授業は、幅広い心のケア・プログラムの一環として、子どもたちが自分自身を表現する機会を提供しています。

「お父さんはどこ?お母さんはどこ?」小さな部屋で、6〜16歳の女の子たちが感情を込めて、紛争の悲しみを歌っていました。

「シリア難民の子どもたちは、子どもが決して目にすべきでないこと、経験すべきでないことを、たくさん経験しています。その辛い経験が子どもの脳や心、そして対人関係に、どのような影響をもたらすのでしょうか。今は見えなくても、この紛争の真の影響は、数年後に表れてくるでしょう」(ブルーム大使)

『地域の救急サービス』をテーマにした子どもたちの劇に、ブルーム大使も参加しました。「俳優は、演じる役の人格になり、その役で様々な人生経験をする仕事です。ですから演劇を通して、子どもたちは人間同士の関わりや、相手との向き合い方を学べると思います」と、ブルーム大使が話します。

イルビドでの訪問日程の最後に、ブルーム大使は男子校を訪れました。ブルーム大使が訪問した時間には、500人以上のシリア難民の子どもたちが、午後の部の授業に参加していました。この学校のように2部制を取り入れることで、より多くのシリアの子どもたちが教育を続けることができます。しかし、エスマイルくんのような今学校に通えていない子どもたちを受け入れるためには、校舎をもっと拡大する必要があり、そのための継続的な資金が必要とされています。

ザータリ難民キャンプで出会った、13歳のナジャさん

アンマンで、女の子が描いた絵を見ながら会話をするブルーム大使
© UNICEF/NYHQ2014-0429/Diffidenti
ヨルダン・アンマンで、女の子が描いた絵を見ながら会話をするブルーム大使。ユニセフが支援する施設で、音楽や演劇、美術などの授業に参加し、心のケアを受けています。

ヨルダン北部の砂漠に太陽が昇る頃、ブルーム大使は10万人のシリア難民が身を寄せるザータリ難民キャンプにあるトレーラーハウスを訪問しました。13歳のナジャさんの家です。15歳の姉は最近結婚して家を出たので、ナジャさんが兄弟姉妹のなかで一番年上です。母親の家事を手助けするため、先月は学校に通うことができませんでした。

「ナジャさんはもう一度学校に行きたいと、強く望んでいます。だから、今から一緒に学校に行こうと思います」とブルーム大使は語り、ナジャさんと一緒に、歩いて10分ほどの場所にある学校へ向かいました。ザータリにある3つの学校では、1万5,000人のシリアの子どもたちが学んでいます。ナジャさんは6年生です。ブルーム大使は学校で子どもたちからアラビア語を学び、子どもにとって教育がどれだけ重要かを再認識しました。

ザータリ難民キャンプで暮らす子どもたちは、学校に通うことで、紛争下の現実からひと時でも離れて、“日常”を感じることができます。そして、子どもたちの心の傷を癒す、心のケアも極めて重要です。ユニセフが支援し、パートナー団体が運営する「青年期の子どもにやさしい空間」では、ブルーム大使がシリアの若者と踊ったり、サッカーをしたりして交流しました。

「今日、子どもたちは楽しそうに歌い、踊っていました。でも、今から1年後、5年後、子どもたちは心に何を想い、どうやって生活をしているのでしょうか」