HOME > 世界の子どもたち > 緊急支援情報 > シリア緊急募金
財団法人日本ユニセフ協会
 



シリア緊急募金 第100報
内戦4年目へ突入:子どもたちが「失われた世代」に
暴力と不安定さに満ちた子ども時代に終止符を

【2014年3月15日 ベイルート発】

避難民の子どもと会話するレーク事務局長
© UNICEF/NYHQ2014-0304/Haidar
レバノンに避難しているシリア難民の子どもたちと会話をするユニセフ事務局長、アンソニー・レーク

シリア内戦が4年目を迎える本日、5つの主要な人道支援団体(ユニセフ、UNHCR、マーシー・コープ、セーブ・ザ・チルドレン、ワールド・ビジョン・インターナショナル)は、3年間の紛争で何百万人もの子どもと青少年の命や生活が脅かされ、このままでは一世代が永久に失われる可能性があると指摘しました。

5団体は、シリア国内外で紛争下にある子どもたち550万人への影響に関心を高めるために、共同でレバノンを訪問。暴力行為が延々と続き、自宅を追われて避難生活を強いられ、保健システムや教育システムは倒壊し、何百万人もの子どもが心に傷を負っていることを強調しました。

ユニセフ事務局長のアンソニー・レークは「恐怖に満ちた3年の間に、罪のない何百万もの子どもたちは、耐え難い子ども時代を送っています。さらに一年も、子どもたちはこの恐怖を耐えられませんし、そのような状況に子どもたちを置いてはいけないのです。この3年、子どもたちは暴力と残虐な行為で傷ついているのです」と述べました。

5団体は、戦闘の停止、国連安全保障理事会の決議の速やかな実行、人道支援機関が制限を受けずにシリア国内へアクセスできるようにすること、子どもたちの心身の治療や教育と技術習得のための支援を増強すること、難民を受け入れている国のうち、特にレバノン、ヨルダン、イラク、エジプト、トルコの経済面への影響を軽減するための取り組みの強化などを共同で呼びかけました。

難民として生まれた赤ちゃん-3万7,000人

難民となって国外で暮らす子どもたちは120万人。このうち約50万人がレバノンに避難しています。また、難民の子どもたち3万7,000人は、紛争後に生まれています。

アントニオ・グレーデス国連難民高等弁務官は「いまやシリアは、世界で最も多くの難民を生み出しています。故国を逃れたシリアの人々は、保護と治療、教育を必要としており、そのような支援を受けなければいけないのです」と述べました。

シリア国内では、紛争によって重要なインフラが破壊され、子どもたちの健康状況にも影響を与えています。国内の保健施設の60%が破壊され、浄水場も3分の1が壊れています。予防接種率は低下し、ポリオを含む命を脅かしかねない病気が再び確認されています。

セーブ・ザ・チルドレンCEOのジャスティン・フォーサイスは「シリア国内にいる子どもと家族が置かれている状況は想像を絶するものです。医師は、保健サービスが崩壊しているために病気の子どもが治療を受けられないと語っています。拷問された子ども、飢えている子ども、攻撃の標的となった子どもたちもいます。周辺国に避難している人は250万人以上です。レバノンだけでも、登録されている難民はおよそ100万人で、4歳未満の子どもが20万人にも上ります。そして、何十万人もの子どもは、紛争の恐怖と混乱、子どもたちの幼い命を脅かす環境の中で育っているのです。直ちにこの紛争をやめなければなりません」と述べました。

教育を受けられない子ども- 300万人

教育システムも崩壊しており、今後のシリアの長期的な展望にとって脅威となります。未来のシリアを担う子どもたちが教育を受けられないままであれは、シリアの復興は最終的に失敗に終わるでしょう。現在、およそ300万人の子どもたちが定期的に授業を受けておらず、シリア国内の学校のうち5校に1校は損壊しているか、軍事的な目的で占拠され、使用できません。

ワールド・ビジョン中東・東欧地域事務所代表のコニー・レネバーグは「支援現場では、毎日、子どもたちがスタッフに『もううんざりだ』と話しているといいます。情勢が変わることを子どもたちはまったく期待していないと。この厳しい状況を耐え忍んでいるのは子どもたちです。長期間学校に通えなければ、子どもたちは学校に戻らなくなるでしょう。多くのおとなよりも、子どもたちのほうが暴力や不安定、ということを知っています。子どもたちは世界から忘れ去られていると感じ始めています。今こそ、紛争を平和的に終わらなければなりません。紛争下にある子どもたちを守り、ケアすることを一層強く呼びかけるときなのです」と述べました。

子どもたちはシリアの復興を担う世代

紛争で大きな影響を受けているのは10代、とりわけ13歳から18歳の子どもたちで、希望と絶望に捕らわれていると、5団体は指摘します。子どもたちがシリアに戻り、その再建に貢献するには、技術や行動を育成しておく必要があり、そのための支援が必要なのです。

マーシー・コープのグローバル・エンゲージメント・ポリシー副代表であるアンドレア・コペルは「レバノンにせよ、ヨルダンにせよ、シリアにせよ、子どもたちはストレスを感じ続け、心に傷を負い続けています。こうした子どもたちが、失うものは何もないと感じれば、おのずと暴力的にふるまう傾向にある世代になってしまう危険性もあるのです」と述べました。

今年初め、5団体は、シリア紛争下にある子どもたちの教育機会を改善し、心理社会的に保護するために「失われた世代にしないために(原題:No Lost Generation)」キャンペーンを発足させ、10億米ドルの支援を呼びかけています。キャンペーンでは、子どもたちが紛争の経験から回復し、スキルと知識を身につけることが不可欠だと訴えています。紛争後のシリアを長期にわたり担うのは、子どもたちなのです。

「紛争による崩壊を知った上で、時計の針を2年以上前に戻せるのなら、この紛争は2年前に終結していたでしょう。この1年、シリアの人道支援にどれだけの支援が必要となるのか−その金額を考えれば、もう十分です。今こそ、紛争を終わらせるときなのです」と、レーク・ユニセフ事務局長は結びました。

【関連ページ】

pdfシリア危機 3年レポートはこちらから[1.70MB] »