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シリア緊急募金第86報
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ユニセフハウス(東京港区)で現地の最新状況を報告してくださったユニセフ・シリア事務所の園田さん。紛争下におかれているシリアの子どもたちへ現状と、子どもたちの未来のための教育の必要性を訴えました。 |
3年近くにわたって紛争が続くシリア。現在人口のおよそ2人にひとり、935万人が人道支援を必要としています。そのうち430万人は18歳以下の子どもたちです。
紛争はシリアの教育に大きな影を落としています。紛争前、初等教育純就学率99%を誇り、中東で教育大国として名を馳せていたシリア。しかし、紛争でその状況は一変しました。5校に1校は学校としての機能を果たしておらず、多くの子どもたちが教育の機会を失っています。
1月28日(火)、シリア国内のユニセフ現地事務所で教育専門官として活躍する園田智也さんが、シリアの子どもたちや教育の現状に関して最新の様子を報告してくださいました。
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建物やコミュニティ、家族がいとも簡単に破壊され、人の命が簡単になくなってしまうという環境で暮らしているシリアの子どもたち。園田さんは、「教育機会を持てないことで、周りの大人たちを真似し、武器を持って相手を傷つけ破壊することしか知らない子どもたちが増えていくと、文字通り『失われた世代』になってしまう危険性があります」と、教育を受けられないまま育つ子どもたちの将来を危惧し、紛争下に生きる子どもたちの苦境を語ります。
爆撃音を日常的に耳にし、恐ろしい光景を目にしているシリアの子どもたち。「人道援助の現場では、人の命に直結する水、食糧、シェルターといった分野が最優先されがちです。しかし実際には、子どもたちは身体的にも精神的にも紛争の影響を受けています」と、子どもたちが描いた、紛争下の辛い経験や心の傷が色濃く映し出される絵を見せながら、園田さんは語ります。「一番何が必要かというと、紛争前の日常生活をいかに取り戻すか。その日常生活というのは、本当に当たり前のことで、例えば学校に行って安全な場所で先生のもとで勉強するとか、休み時間に一緒に友達と遊ぶという生活環境をいかに取り戻すか」と、紛争下では見過ごされてしまいがちな教育の必要性を訴えます。また、学校は子どもたちの安全を確保するところでもあります。学校に通えない子どもたちが、生活のためにお菓子を売ったりしているところを、反体制派の戦闘員に勧誘されるケースもあるといいます。
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© UNICEF SYRIA |
ユニセフ・バッグを手にするシリアの女の子。バッグの中にはノートなどの学用品が入っています。 |
「子どもたちにとって、子ども時代は1回限りです」
たった一度しかない子ども時代に、紛争で大切な人を失うという苦しみを味わうのではなく、子どもらしい日常を過ごすことができるように生活環境を整えてあげることが重要だと園田さんは訴えます。
「子どもたちが相手の立場に立って物事を考えたり、対話を通じ平和に向かって自分たちで社会を作っていく、そういった力を支えていく教育支援が、とても今求められていると思います。それが、失われた世代にならないための第一歩、平和構築の第一歩と考えています」
長引く紛争下のシリアでは、子どもたちを『失われた世代』にしないために、長期的な教育や心のケアの支援が必要とされています。次世代を担う子どもたちが自分たちの持つ可能性を十分伸ばし、明るい未来を築くことができるよう、ユニセフはこれからも支援を続けていきます。
【シリア国内の教育状況】(2014年1月現在)
○学校5校に1校が学習環境として機能せず
○空爆や迫撃砲により、教員や生徒が学期中に犠牲
○学齢期の子ども(6−15歳)のうち、200万人が学校にきちんと通えず
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