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公益財団法人日本ユニセフ協会
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シリア緊急募金 第137報
新学年開始
しかし、150万人は学校に通えず

【2014年9月26日 ダマスカス発】

新しい通学かばんと文房具をもらった3年生の女の子。(シリア)
© UNICEF Syrian Arab Republic/2014/Rashidi
新しい通学かばんと文房具をもらった3年生の女の子。

「新しい通学かばんがとても気に入りました」と語るのは、首都ダマスカスのアブドゥラハマーン・カゼン小学校に通う4年生のダニア*ちゃん。ユニセフの「また勉強をしよう(back-to-learning)」キャンペーンの一環で、同校に通うダニアちゃんを含めた1,500人の生徒たちは、新学年の開始にあたり、学用品を受け取りました。

学校を出ると、校門ではダニアちゃんの母親が待っていました。ダニアちゃんは、新しい通学かばんと中身をうれしそうに母親に見せていました。「子どもが一人だったら何とか都合がつくのですが、2、3人ともなると、学校に通うために必要なものを揃えるのはとても大変です」と母親は語りました。

シリア国内では、9月14日から新学年が開始しました。しかし、長期にわたる危機により、150万人が通学できていません。新学年開始にあたり、ユニセフはEUやカナダ政府、日本政府、ユニセフ・アメリカ国内委員会の支援などを受け、全国規模の支援を実施。国内にいる100万人以上の子どもたち用の通学かばんや学用品などが、現在輸送されています。

負担を軽減するために

新学年が始まった当日、4人の子どもの母親ウム・アフマッドさんはダニアちゃんの母親と一緒に娘を学校まで迎えに来ました。「去年、着ていた服以外何も持たずに、ダマスカスにあるヤルムーク・パレスチナ難民キャンプ内にある家を後にしました。娘たちは最終試験を受けられませんでした。末の娘のイスラーは今年の進級試験に合格して8年生になりましたが、上の娘のラミアは中退して、私が縫製の仕事に出ている間、家事をしています」と話しました。

今年、教育省は保護者の負担を軽減するために、就学と出席の新たな手続きを導入しました。ラナ教育大臣は「制服や学用品の負担を軽くしました。また、避難生活を送っている家庭の子どもで、これまでの就学状況を示す文書がなければ、最寄りの学校で試験を受けることを入学手続きの条件としていく予定です」と述べました。

二人の息子の父親のアブ・イヤドさんはアレッポから避難をしてきました。入学書類を受け取りに来た校長室で、「この地に来たばかりです。昨年アレッポから避難してから1年間、シリア南部にあるジャラマナにいました」と語りました。校長先生と相談をした後、息子たちの入学が決まりました。

高まる需要

ダマスカス中心部で、新しい通学かばんをもらい、笑顔を浮かべる女の子たち。ユニセフは100万人以上の子どもたちに学用品を提供した。(シリア)
© UNICEF Syrian Arab Republic/2014/Rashid
ダマスカス中心部で、新しい通学かばんをもらい、笑顔を浮かべる女の子たち。ユニセフは100万人以上の子どもたちに学用品を提供した。

校長のワヘバ・スライビさんは、多くの問題に直面しているといいます。「当校の教室数は17で、これまで児童数は合計700人でした。しかし、今年の児童数は1,500人です。児童数が増えた主な要因は、比較的安全な場所を求めて避難してきた家庭の増加にあります」と現状を述べました。地域で受け入れられなかった児童は、近くの学校に照会しているといいます。

シリア国内の多くの学校では、限られた施設で多くの児童を受け入れるため、授業を2部制で行っています。ユニセフによると、シリア国内の学校のうち、5校に1校は紛争の被害を受けています。スライビ校長は「2部制はふたつのことを意味しています。ひとつは、より安全な地域にある学校への負担が増していること、もうひとつはあらゆる状況に関わらず、教育の需要はとても高いということです」と述べました。

ユニセフは、避難生活を送る子どもたちが多く通っている学校を特に優先的に支援しています。また、人道支援を届けることが困難な地域や、2013年に学用品の支援を受けられていない学校も優先度が高くなっています。

学用品の支援は、住民の大部分が生計手段を失い、経済的に厳しい状況にある中で、就学を後押しします。

ダマスカスの学校で3年生を担任するバトゥル・デロ先生は「保護者は学用品の支援に感謝しています。子どもたちも喜んでおり、勉強の励みになります」と語りました。

ダニアちゃんは「算数と英語が得意です。大きくなったら、算数の先生になりたいな」と、将来の夢を話してくれました。

* 文中の名前は仮名です

■参考情報:「失われた世代にしないために(No Lost Generation)」イニシアティブについて

「失われた世代にしないために」イニシアティブは、シリア危機による子どもの学習と心の健康への影響を軽減し、シリアと周辺国の子どもたちと若者世代への潜在的で長期に及ぶ影響に取り組むための国際組織、非政府組織、政府によるイニシアティブです。2013年10月に発足し、教育へのアクセスと心のケアの拡大、子どもの保護の強化、社会的結合の支援、平和構築の促進を通じて、シリアの子どもたちが自身、家族、コミュニティの未来をよりよいものとすることを目指しています。

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