シリア緊急募金 第134報
未来のために教育・保護への投資を
「失われた世代にしないために」1年報告書発表
【2014年9月24日 ニューヨーク発】
9月24日、「失われた世代にしないために(原題:No Lost Generation)」イニシアティブは、発足から1年となる節目に報告書(全12ページ:英語)を国連総会にあわせた会合で発表。シリア危機の深刻化により、子どもたち世代全体が危機にさらされ続けていると指摘する一方で、この1年で、シリア危機下にある子どもたち77万人が何らかの教育を受け、66万人が心のケアを受けたことを明らかにしました。
子どもたちへの支援は未来への投資
ユニセフ事務局長のアンソニー・レークは「今日の子どもたちは、未来の医師や教員、法律家、指導者です。シリアの子どもたちを支援することは、シリアの未来への投資です。子どもたちへの投資によって、平和が訪れたときにコミュニティの再建に必要となるスキルや知識を、子どもたちは学ぶことができます。だからこそ、子どもたちの心を癒さなければなりません。すべきことは、たくさんあります」と述べました。
昨年の国連総会を機に、シリアの子どもたちの支援に取り組んできたパートナーは、シリアの子どもたち世代全体を失われた世代としないために、協調した行動が呼びかけました。それから1年となる今年の会合は、ユニセフ本部で実施。この1年で、戦闘が続き、避難する人が増え、生活環境が悪化しているにもかかわらず、政府や避難者を受け入れているコミュニティ、パートナー団体の取り組みによって、より多くの子どもたちが教育や保護支援・サービスを受けられるようになりました。
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© UNICEF/NYHQ2013-1390/Noorani |
父親や姉妹と一緒に車いすで避難しているヨルダンにある学校に通う6歳のサファちゃん。一家は紛争で自宅が破壊され、サファちゃんは暴力に巻き込まれて右足を失った。 |
主な成果と課題
この1年での主な成果は以下の通りです。
- 戦闘が続いているにもかかわらず、公的な統計によると、シリア国内では前年度に比べ就学者数は44万人増加
- シリア難民を受け入れている周辺国では、公教育ならびに非公式教育への就学数は、16万9,500人(2013年)から48万9,000人(2014年)へ増加
- 戦争で荒廃したシリア国内のうち、不安定な情勢が続く地域で、12万8,000人の子どもたちの補習授業やレクレーション活動を行うスクール・クラブへの参加を支援
- 2014年、心のケアを受けた子どもはシリア国内では7万2,000人、周辺国で58万7,000人
- レバノンでは、養育環境を整え、子どもの虐待防止するための支援プログラムを保育者20万人に実施
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© UNICEF/ NYHQ2013-1440/Noorani |
テントの外で食器を洗う13歳の女の子。シリアからヨルダンに避難しているが、避難後は学校に通えていない。 |
報告書は、10代の青少年期の子どもたちが、最も厳しい状況にあり、支援を受けられていないことを指摘。青少年期の子どもたちが、自身が置かれている状況への怒りや失望によって、武装グループに引き寄せられやすくなっていると警鐘を鳴らしています。こうした子どもたちを戦闘に関与させないためには、機会を作ることが重要です。
「失われた世代にしないために」イニシアティブは、2014年のシリアと周辺国での教育と子どもの保護支援のために、8億8,500万米ドル(約964億6,500万円 ※1米ドル=109円で換算)の資金を要請してきました。これまでに34%にあたる3億100万米ドルが提供されましたが、5億8,400万米ドルが不足しています。
追記:
同日ユニセフ本部で行われた会議において、EU、DFID(英国国際開発省)、USAID(米国国際開発庁)やそのほかのパートナー団体から、本イニシアティブへ3億4,700万米ドルの資金が提供されることが発表され、ユニセフは歓迎の意を表しました。
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© UNICEF/NYHQ2013-1389/Noorani |
シリアから避難し、レバノンの非公式テント居住区に身を寄せている子どもたち。家族が暮らすテントの家の中でアルファベットの練習をしている様子。 |
■「失われた世代にしないために(No Lost Generation)」について
「失われた世代にしないために」イニシアティブは、シリア危機による子どもの学習と心の健康への影響を軽減し、シリアと周辺国の子どもたちと若者世代への潜在的で長期に及ぶ影響に取り組むための国際組織、非政府組織、政府によるイニシアティブです。2013年10月に発足し、教育へのアクセスと心のケアの拡大、子どもの保護の強化、社会的結合の支援、平和構築の促進を通じて、シリアの子どもたちが自身、家族、コミュニティの未来をよりよいものとすることを目指しています。
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