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シリア緊急募金 第101報
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シリア・ホムスにある避難民施設で、2時間のレクレーション活動に参加している子どもたち。楽しそうな笑い声がひびきます。
想像しうる限り最も過酷な状況下で生活をおくり、希望を持つことができないこの町の未来を見つめているシリアの子どもたち。紛争で受けた心の傷を子どもたちが一時でも忘れられる時間をつくるため、レクレーション活動を実施しています。
© UNICEF Video |
避難所で行われたレクレーション活動で母親のために書いた手紙を見せる女の子。 |
避難所を訪問したユニセフ事務局長のアンソニー・レークは、紛争により子どもたちが心に深い傷を負っているこの現状に胸を痛め、「あまりにも多くの子どもたちが、決して子どもが目にすべきでない光景を目にし、トラウマを抱えています。子どもたちはこの紛争にこれ以上耐えることはできません」と語りました。
レーク事務局長は、2月にホムス旧市街から避難してきた家族や子どもたちの話にじっと耳を傾けました。4人の娘がいるハッサンさん(35歳)は、旧市街で起きた爆発で妻と息子を失ったと語ります。
ホムス旧市街が包囲され、包囲網の外に出ることができずに暮らしていた間、ハッサンさんの9歳の娘は絵日記を書き留めていました。「もうあの暗くて辛い記憶は、思い出したくありません。ですから、日記は捨ててしまいました」と、少女は悲しそうに語ります。
シリア・アラブ赤新月社(SARC)でボランティアとして働くスタッフは、「シリアの国中の子どもたちは、3年間にわたり、苦しい生活を送っています。そのなかでも、さらにホムスの子どもたちは特に激しい暴力に直面し、過酷な生活を強いられています」と避難所でレーク事務局長に語りました。
「私たちのことを、忘れないでください」と、9歳の少女が訴えます。
© UNICEF/NYHQ2014-0292/Sanadiki |
レーク事務局長はユニセフ中東・北アフリカ地域事務所代表やシリア事務所代表、職員、パートナー団体と共に、ホムスの避難所で行われているレクレーション活動を視察した。 |
ホムス旧市街との境界に位置するこの避難所は、この国の何千もの他の避難所と同じように、かつては学校の校舎でした。周辺地域は、激しい爆撃によって荒れ果て、破壊された建物に囲まれています。
紛争の影響を受けている子どもたちができるだけ普段の生活を取り戻せるように、SARCのボランティアグループが毎朝さまざまな野外アクティビティを実施しています。活動の内容は、フェイス・ペインティング、お絵かき、工作、ボールやパラシュートゲームなど、多岐にわたります。
子どもたちのなかには、現在起こっている悲しく恐ろしい出来事を、理解できないほど幼い子どももいます。しかし、ほとんどの子どもたちの心の中には、今のこの記憶がはっきりと刻まれます。
1年半以上続いたホムス旧市街の包囲は、今年2月に一時的に解かれました。長い間、この地域は爆撃され、食糧と医療の物資が不足していました。ハッサンさん一家はホムス旧市街の過酷な生活環境や、今後待ち受ける将来についての不安を語りました。
レーク事務局長は、ホムス近隣の別の場所に身を寄せる家族も訪問しました。ここでは、20万人の避難民が生活しています。また、かつて学校の校舎だった避難所も訪れました。ここには、最近、ホムス旧市街から避難してきた家族も身を寄せています。
住民はホムス旧市街での暴力や困窮した生活について語りました。職探しや生活をするために必要な正式な書類がないなど、避難してもなお続く困難な状況についても訴えました。
「この紛争によってもたらされる傷は、私たち人間が対応できないほどのスピードで、広がり続けています。ユニセフはパートナー団体と協力し、子どもたちのため、最大限の支援を行っています」(レーク事務局長)
※文中にでてくる名前は仮名です。
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