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財団法人日本ユニセフ協会
 



シリア緊急募金 第111報
ポリオの予防接種、長期化する紛争でより困難に
積極的に支援に関わる、ボランティアの若者たち

【2014年5月7日 ダマスカス発】

ポリオワクチンの投与を受ける子どもと見守る母親
© UNICEF/Syria-2014/Najem
ユニセフとECHOの支援によりシリア・デリゾール州で実施された予防接種キャンペーンで、ポリオワクチンの投与を受ける子どもと見守る母親。

昨年ポリオの感染が確認されたシリア北東部・デリゾール州では、子どもたちをポリオウイルスから守るための継続した支援が行われています。感染拡大を防ぐため、予防接種チームがより一層の力を注いでいます。

モニタリングの報告によると、4月に実施された予防接種キャンペーンではデリゾール州の29万4,000人の5歳未満の子どもたちに予防接種を行うことができました。これは、今月実施されている予防接種キャンペーンの成果を上回るものです。幼い子どもたちを感染力が非常に高いポリオウイルスから守るためには、複数回の予防接種が必要不可欠だと保健専門家が訴えます。

人里離れた地域での予防接種、紛争でより困難に

ユニセフの保健推進員であるスリマン・ナジャム医師は、3年にわたる紛争の影響を受けている地域では特に、人里離れた地域に支援を届けることが極めて困難になっていると語ります。

「シリアを横切って流れるユーフラテス川に架かっていた橋が昨年5月に空爆で破壊され、川を渡るのが非常に難しくなっています。数人のボランティアとともに、川の反対側にある人里離れた地域にたどり着くためには、ボートに乗らなくてはいけません。大河という自然が私たちを阻むのではありません。危機をもたらしているのは、武力衝突や爆撃なのです」と、ナジャム医師が語ります。

世界保健機構(WHO)は、シリアやイラクを含め世界中で野生株ポリオウイルスの感染が広まっていることをうけ、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」にあるとの宣言を発表しました。昨年10月にデリゾール州のアル・マヤーディーンで、過去14年間で初めてポリオの発症が報告されました。WHOがシリアで確認した27件の症例うち、18件がデリゾール州で確認されたものです。

「紛争が続いているため、たどり着くことができない村が多くあります」と、ナジャム医師が語ります。ユーフラテス川の北部にあるKhasham、Dahla、Basiraなどの村では、4月の予防接種キャンペーンの際にも、予防接種を実施できませんでした。

最近の武力衝突により、5月上旬に約6万人がデリゾール州の町から避難をしたと報告されています。ユニセフは、このうち少なくとも半数が子どもたちであると推測しています。

ボランティアの若者たちが活躍

子どもに予防接種を受けた“しるし”をつけるボランティアスタッフ
© UNICEF/Syria-2014/Najem
デリゾール州行われている予防接種キャンペーンで、ワクチンの投与を受けた2歳の子どもの指に予防接種を受けた“しるし”をつけるボランティアスタッフ。

クウェート政府を含むドナーからの支援により、ユニセフとWHOはたどり着くことが困難な場所や包囲されている地域で暮らす子どもたちへの支援に力を入れ、これまで5回にわたる全国予防接種キャンペーンを実施しました。5月上旬から開始されている6回目のキャンペーンでは、シリアの291万人の子どもたちに予防接種を行う予定です。

ユニセフは地方自治体やデリゾール州のNGOが、子どもたちに予防接種を実施するための支援も行っています。

「予防接種キャンペーンで最もアクティブに活動しているのは、若者たちです。私の2人の娘たちもワクチンの投与をボランティアで行っているのですが、父親として娘たちをとても誇りに思います」

この地域でポリオが再発したことで、両親は子どもたちに予防接種を受けさせることを切に願っています。

「人里離れた地域を訪れると、住民がお茶を出して歓迎してくれます」と、ボランティアで予防接種を行っているラナさんが話します。「住民は愛する我が子がポリオに感染してしまうのではないかと、とても不安になっています」